表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/20

Episode6:血塗れ聖女とリーベル・タース

「……いや、貴方こそ誰ですか」


茨は内心、「何だコイツ」と思いながらそう聞くと男は、ニッ、と笑い「俺の名前はリーベル!リーベル・タース。好きなものは自由!」と名乗り茨が居るベットの端に座る。そして、「お前の名前は?」と問い掛けた。


「……私、ですか…?」


「そう、お前の名前」


「……私の名前、は…白崎茨、です」


茨がそう名乗るとリーベルは目を丸くして、ガシッ、と茨の肩を掴む。そして何処か興奮したような表情で叫んだ。


「……って事は、もしかしてお前が噂の血塗れ聖女か?!」


「……………はぁ?!」


(聖女って事は、私のこと…だよね。血塗れ聖女って何?!…もしかしなくても、変な噂が流れてない…?)


「と、言うか!!血塗れ聖女って何ですか…誰ですか、そんな変な噂を流してるの!」


「そりゃあ、お前腹から血をドバドバ流して召喚されたからな!…それにしてもお前、案外普通の女なんだな!弱そう!」


(……やかましい…)


茨はまたもや「何だコイツ」と思いながらも「普通ですみません…」と謝る。リーベルはキョトンとした顔で「何で謝るんだ?」と問い掛ける。茨は「何故でしょうね…」と答えながら、この良く分かんねぇ男が早くどっかに行かねぇかなと思いながら、死んだ魚のような目をして明後日の方向を見つめだした。


リーベルは「まぁ良いや!」と笑うと、ベットから降りて何処かへ行く─────かと思いきや、茨に向かって「一緒に外に出てみないか?」と、手を差し伸べて太陽みたいに笑い掛けた。


「……は?ぇ、な、何でですか…?」


「だって、お前暇だろ?」


(確かに、暇だけれども…!!)


「で、でも…勝手に何処かへ行くのは良くないと言うか…!!!勝手に消えたら、サールスさんとラキエスさんにご迷惑が…!」


「俺と一緒だから大丈夫だ!怪我も絶対にさせない。俺が保証する!!……それに、少し会ってみてほしい奴が居るんだ」


(会ってみて、ほしい人…?)


今まで底抜けに明るく笑っていたリーベルの顔が少し曇り、悲しそうな笑顔に変わる。その表情に茨の心がざわついた。騙されているかもしれない。酷い目に遭うかもしれない。怖い思いをするかもしれない。


(…でも、もし…何か、あったんだとしたら?)


この人の手を跳ね除けるのは、とても簡単。何かあったとしても、知らないふりをしていれば良い。怖かったからって言って、知らないふりを。そうするのは、とても簡単。


(────断ってしまえばいい。そうしたって、誰も、何も言わない。…何かあったとしても、誰も私を怒らない)


その時、ふっと幼い頃の記憶が蘇る。それは、ずっと昔の記憶。泣き虫だった私が、存在するかも分からない神様に願い続けていたこと。


──────だれか、たすけて…


「っ、ぁ…」


誰かに助けを求め続けて、いつか救われることを待ち続けていた。でも、どれだけ願っても助けなんて、来なかった。今、助けを求めるこの人を見捨ててしまえば、私は─────!!!


「……無理なら良いんだ。困らせたかった訳じゃないからな!………無理を言って、悪かった」


一向に返事を返さない茨に、無理だと思ったのか眉を下げ、困ったように笑うリーベル。その笑顔に茨の心臓はまた、締め付けられるように痛んだ。背を向けて立ち去ろうとするリーベルに茨は「待って!!」と叫び、ベットから降りるとリーベルの服の袖をぎゅっと掴んだ。


「私も、い、一緒に…行く、から…!」


「わ、私も……外に、行ってみたい…!」


震える声でそう叫んだ茨を見て、リーベルは「……そうか!」と嬉しそうに笑うと緊張で震える茨の手を掴んで優しく引く。いきなりのことで対応出来ず、体制を崩した茨を見てリーベルは叫んだ。


「絶対に、手を離すなよ!!!」




『誰にも囚われない。俺だけのために、夢を見よう!!!────Somnium Liberum!』




その瞬間、部屋に強く風が吹き「わっ」と驚いて茨は、思わず目を瞑る。少しして、強い風が優しい風に変わった頃、リーベルが「目を開けてみろ」と囁いた。言われたとおりに茨が閉じていた目を開くと、そこで見たのはとても綺麗な街の景色だった。


「わぁ…!!」


茨は思わず歓喜の声を零す。茨の目の前に広がっているのは、明るく輝く太陽と少し遠くに見える海。外国のような街並みの街。微かに聞こえる、楽しそうに笑う人の声。


『………綺麗……』


「そりゃあ良かった」


目を輝せて、少し微笑んだ茨を見てリーベルはまた、嬉しそうに笑った。茨は暫くして自分が空に浮いていることに気が付き、リーベルに問い掛ける。


「あの、私なんで浮いて……と言うか、何故落ちないんですか?!まるで、魔法みたい…」


「?…サールス先生から、話を聞いていないのか?今のは魔法だぞ」


「……えぇ…全然聞いてませんけど……魔法って何?!そんなファンタジーな事出来るんですか?!」


「お前にとっちゃ、この世界自体がファンタジーみたいなものだろ」


「いや、そうですけど…!!」


「まぁ、後で説明してやるよ」と言い、魔法でゆっくりと空を飛んで移動する。次々と投下される情報について行けなくなった茨は「もういいや…」と呟き、思考を放棄した。


暫く空に浮いて二人で街を眺めたあと、リーベルは学園にある建物のうちの一つに入って、魔法を解いた。玄関の扉の前まで来ると、リーベルは茨の方へと振り向いて声を発した。


「────実は、『聖女』であるお前に、頼みがあるんだ。…俺の友達を、助けてほしい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ