第6話 荷降ろしとハプニング
【荷降ろしとハプニング】
積込みを終え何時もとは違う重量をかんじながら日本海側へ抜けて走り、小さなとある港へ着いた俺たち。
しかし、現着して港の事務所に顔を出すと、昔馴染みの担当者から申し訳なさそうな顔で声をかけられた。
「あ…達ちゃん!ごめん! ちょっと他の車が荷降ろし終わらんくって何時間か待っとってくれんか」
【マジか……まあ、それじゃ仕方ねぇな。何時もとこ停めとるから連絡してな】
「すまんなぁ…達ちゃんこれ後で持ってってや詫びや詫び」
【ありがとうな】
箱を持った俺がトラックに戻ると、助手席で待ち構えていたエマが不安そうに首をかしげた。
『どうなさったのですの? あまり芳しくないお顔ですけれど……』
【ちょっと数時間待ち時間になった】
『数時間……! そんなに長い時間、このトラックでじっと待っていなければなりませんの?』
「いや、せっかく目の前が海なんだ。俺は道具箱にいつもマイ竿とルアー積んであるし、近くの釣具屋でエマ用の道具を買って釣りでもしようぜ」
『つ、釣り……!? 私の分のお道具を買ってくださいますの!? 行ってみたいですわ!』
トラックを何時もの場所へ停めて潮風を感じながら歩いて10分ほどで港の近くにある小さな釣具屋に到着した。
店内に入ると、壁一面にずらりと並ぶ色とりどりの仕掛けや釣竿に、エマは目を輝かせた。
『まあ……! これが全部、お魚を釣るための道具ですの!? まるで武器屋さんのようですわ!』
「ハハ、まあ似たようなもんだな。……よし、エマ。お前専用の釣竿とサビキ仕掛けを買ってやるよ」
『まあ……! 私専用の道具ですの!?』
「おう。初心者でも簡単に扱えるコンパクトな竿と、ピンクのケースに入ったサビキ仕掛けにしよう。俺はトラックから俺の竿とルアーを出して使うからさ」
エマは自分用に選んでもらった可愛らしいピンク色のサビキ用ロッドを両手でギュッと抱きしめ、跳ね上がるように喜んだ。
『私専用の竿……! ふふ、大切に使わせていただきますわ!』
チューブに入った使いやすいエサ(アミエビ)と飲み物を買い、二人はルンルン気分でトラックの停める岸壁へと戻った。
俺はトラックの道具箱から自分のルアーロッドをケース事取り出して準備しつつ、エマのサビキ仕掛けをセッティングして手渡した。
「ほら、エマ。このカゴにエサを絞り出して詰めて、足元に落とすだけだ。やってみな」
『はいっ!』
エマはおずおずと仕掛けを海へぽちゃりと落とした。
『本当にこれでお魚が……わっ!?』
仕掛けを降ろして数秒もしないうちに、竿先が**グググッ!**と激しく上下に揺れ動いた。
『きゃああっ!? な、何か引っ張られていますわ!』
「落ち着け! 竿を立てて、リールをゆっくり巻くんだ!」
「ぬぬぬ……っ!」とツナギ姿で必死にリールを巻くエマ。やがて海面から、キラキラと銀色に輝く小アジが3匹、鈴なりになって跳ね上がった。
『まあ……っ!! 釣れましたわ! 私の竿で釣れましたわ!!』
「おーっ、ナイス! 一発で3匹掛けとは筋がいいぞ!」
一方の俺も、常備しているルアーを投げて底を探り、良サイズのカサゴを釣り上げた。
「よし、俺も釣れたぞ。そろそろ飯にしよう」
俺たちはトラックのキャビンから持ってきた小型ガスコンロにフライパン、油と片栗粉を使って、岸壁の安全なスペースで調理を開始した。釣れたてのアジとカサゴを手早く捌き、片栗粉をまぶして熱した油へ投入する。
**ピチピチピチッ!**と香ばしい音とともにキツネ色に揚がっていく小魚たち。
『まあ……! 素晴らしい匂いですわ……!』
塩をパラッとかけた揚げ立ての唐揚げを紙コップに入れて渡すと、エマはフーフーと息を吹きかけ、サクッと一口かじった。
『……っ!! サクサクで……中身はフワフワですわ! 自分で選んだ竿で釣ったお魚が、こんなに美味しいなんて……!』
「自分で釣ってその場で食べるのが一番贅沢なんだよな」
少しの後電話が鳴り荷降ろしが無事に完了した。
すっかり青色に染まった空の下、エマは自分用の釣竿を愛おしそうに拭き上げてから、トラックのシート後ろへ大事そうに仕舞った。
俺が荷降ろししている間も釣りをしていたらしいサバにアジにサッパまで釣っていたとりあえず箱へ氷を入れて荷台へ閉まっておいた。
「さて、エマ次はもう少し南へ下ったとこにある道の駅で寝て今度は別の港で魚を積んでまた上るからな」
エンジンを始動させると、重厚なV8サウンドが港に響き渡り、夕闇が迫る前に国道へとトラックを走らせた。
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