北大陸への船探し ④
北大陸への向かうための船は確保した。
俺達はそこまで荷物は多くない。正直食事なども最悪現地調達すればいいしな。
なんてそんなことを考えていた。
ただ母さんの信者達からしてみるとそんな俺達は海を舐めているらしい。海は危険に満ちているので、ちゃんと準備をしなければならないと怒られてしまった。いや、まぁ、それはその言葉の方が正しい。
一応言われるがままに準備はした。
こうやって準備をするのも楽しいので特に問題はない。収納系の魔法具の中にぶっこめばいいしな。
俺達の乗せてもらう予定の船の大きさは結構大きい。やはり大陸を渡るとなると小さい船では難しいのだろう。
転覆とかの恐れもありそうだしな。
それに北大陸は他の大陸よりも遠いらしいのだ。そう、物理的に。そもそも簡単に行き来出来るぐらいの距離だったらもっと活発に船の行き来がされているはずだ。それがされていない段階で、危険だというのは想像出来る。
船の乗車料金は一般的なものよりも高めの金額を告げられていたようだ。それに関しては向こうが俺達が戦う力を一切持たないと誤認したからというのもあるとクラが言っていた。
北大陸への道のりは、魔物に襲われたりすることが多々あるからというのも理由らしい。
乗せてもらう船に乗る者達も総じて戦う力があるかどうかというと、見た目だけではそうは見えなかったりする。
ただし人間とは異なる種族であるので、俺よりもずっと人生経験は長いだろう。それに二十年も信仰のために旅をしていたのでそれだけの強さは持ち合わせているのだろう。強くなければ、こちらの大陸に渡ることさえもまず無理だしな。
戦える力を示したら料金は低めに設定してくれたかもしれないけれど、別にどちらでも良かった。北大陸に渡るだけの費用は準備していたし、少し割高でもまぁ、いいかって感じ。法外な金額ってわけじゃないしな。
そもそも母さんのことを正しく信仰している存在だっていうのならば、俺にとっても少なからず大切にすべき対象ではある。俺は母さんのことが大切だから、同じように母さんのことを大切にしている存在のことを悪くは思えないし。尤も母さんの望まない形で何かする存在は許せないけれど。
北大陸へ向かう荷物の準備を手伝ってくれているのは、一見すると人間にしか見えないけれど人間ではないらしい少女――ラウレッダは俺のことをちぐはぐだと言った。
「ノースティア様のことを心から信仰しているように見えるのに、ノースティア様の逸話をこんなに知らないなんてっ!!」
などと言って怒られた。
いや、まぁ、仕方ない。俺はこの世界にきてから神としての母さんのことを少しずつ学んでいるし、有名な逸話とかは頭に入れている。でもそれだけだ。
俺の母さんへの感情は、信仰とは違う。正しくは家族愛。
母さんへの愛情は、家族だからそれはもう持っている。大切にだってしている。それは母さんに対して神として信仰している信者達とは異なる点だろう。だって家族だし。
フォンセーラとノスタにも「もっとサクトにノースティア様のことをお伝えしないとなりませんよ」などと言っていた。
フォンセーラ達が俺にそれらの情報を正しく伝えていないと思っていたらしい。母さんの偉大さをもっと伝えるべきだと。フォンセーラ達はなんとも言い難い様子だった。
フォンセーラ達は俺が母さんの息子だって知っているからな。
北大陸についたら母さん所縁の地に案内してくれるという話もあったのでなんだかんだ仲良くはなれているのだろう。
少なくとも最初よりは警戒心はなくなっているらしい。まぁ、ラウレッダ以外の者達に関しては俺達にもっと警戒心は持ってそう。
幾ら母さんの信者としては同志だとはいえ、出会ったばかりの不自然な三人組だなんて警戒するのも当然だ。
俺達って結構旅人としても変な感じらしい。そこまで焦燥感もないし、何を目的に旅をしているかも分からないのだと。今回も北大陸に渡ることに対して、緊張感がなさすぎるそうだ。
うん、でもそこまで緊張することではないんだよな。最悪の場合どうにでもするっていう気持ちがあるからかも。
俺達でどうにか出来るだろうし、仮にどうにもできなくても母さんや伯母さんが手を差し伸べてくれることは間違いないからな。
旅の準備をしている最中も俺があまりにものほほんとしすぎているせいかラウレッダには注意をされる。
「海を舐めたら駄目!! どれだけの人が命を奪われたと思うの?」
などと、何度も言われてしまった。
そうは言われてもな。自然は脅威だろうけれど、魔法でどうにもできるって思うと気が凄く楽。地球に居た頃だともっと俺は不安とか感じていたかもだけど、この世界で自分が力を身に着けていることが実感出来ているから余計に不安はない。
――そういうわけで準備をした後、俺達は船へと乗り込んだ。




