北大陸への船探し ②
俺が神じゃなくて、人の感覚だからそう思うんだろう。
俺が人の内にその辺のことどうにかしたいなぁ。人の感覚だからこそのことってあるだろうし。
父さん的にはどうなんだろう?
父さんの感覚は、人とか神とか関係ないのかな。なんかそんな感じする。父さんは人間であるとか、神であるとか、その辺全く関係なしに薄井博人って存在だ。
俺もそのままでいられた方が嬉しいな。
ただその辺は分からない。
星を見上げながら考え事をしていたらクラが寄ってくる。
「咲人、どうしたの?」
俺がぼーっとしながら、空を見上げているから何か気になったらしい。
「ちょっと色々考えてしまって。俺がこれから神様へと切り替わっていったら、どう変わっていくんだろうって」
「ん? 何も変わらないよ?」
クラは軽い調子でそう言った。何も悩みなどなさそうである。クラはただの猫から、神獣になる時に何か不安など感じなかったのだろうか?
そんなことを思って、クラへと話しかける。
「クラは母さんにこの世界に誘われた時に不安とかなかった?」
ただの猫として、クラは長生きをしていたはずだ。あの母さんと父さんに飼い猫として長年飼われているところから、普通の猫とは少し違うんだろうけれど。
大体、母さんって動物から嫌われるというか逃げられるタイプだし。前に父さんが「クラのように逃げない猫って珍しい」と言っていたしなぁ。
「不安? なんで?」
「だってほら、これから先、長く生きていくことになるわけじゃん。それに全く違う世界に来ることに対して、心配とかなかったのかなって」
「乃愛に誘われたし、家族がいるならいいかなって。僕がこれで好き勝手動いていたら、乃愛は間違いなく僕のこと消しただろうけれど」
「うん。それはそう。母さんって、基本的に誰にでも容赦ないからなぁ。でも父さんが母さんの望まない行動をした場合はどうなるんだろう?」
「博人は乃愛の嫌がることはしないんじゃないかなぁ。それで意見の食い違いから喧嘩したとしてもそれはそれで乃愛は喜ぶよ」
「あー、確かに」
基本的に俺の両親は喧嘩というものをあまりしない。母さんが父さん第一だから、父さんの意思を優先しようとするからというのもあるけれど、あんまりぶつかり合ったりしていないからなぁ。
いや、まぁ、父さんが母さんを止めたりはしているけれど。
でも母さんは確かに本気で喧嘩になったとしても、何も気にしたりしないんだろうな。寧ろ喜びそう。
……母さんって他人に対しては厳しいし、どちらかというとSな方だと思う。ただし父さんに関しては何をされてもいいって思っているし。
「咲人が変わったとしても、乃愛と博人は何も変わらないよ。それに華乃と志乃も。ただ咲人が何かしたら、僕たちは家族として止めるだけだし」
「ははっ、でもそれもそうだなぁ。俺が長命種になったことで精神が耐えられなくなっても母さんはどうにかしてくれそう」
「うん。それこそあれだったら一旦精神壊して、一から生きさせるとかもしそう」
「うわー、想像出来る。流石にそれは嫌かな」
母さん的には平和な解決をしているつもりだろうけれど、そんなことになったら嫌すぎる。俺は自分の記憶を失ったりとか、一度リセットとかそういうことはされたくない。
でも俺の精神に異常をきたしたりしたら、母さんはそういった行動をするだろうな。というか、半神って立場の俺が精神的な異常で何かやらかしたりしたら大惨事だし。
うん、母親として何かしらの対応をしなければならないことは理解出来る。
だからそう、俺がやらなければならないことって、母さんたちが動くような愚かな真似をしないこと。そして精神的に疲れたりしたときは休むことか?
「なぁ、クラ。俺が疲れていたら休ませてくれ」
「いいよ? でも咲人は博人に似ているし、何だかんだ受け入れて生きていきそう」
「んー、でも俺、父さん程器はでかくないからなぁ」
というか父さんって、母さんが異世界から来た神様だってした上で奥さんにするし、母さんに誘われてそのまま異世界に来ちゃうし。……改めて考えるとそれが出来るだけでも父さんだなって感じ。
普通もっと戸惑ったりとか、拒絶したりとか、受け入れられなかったりしそうなのに。
俺は流石に父さんほど、なんでもかんでも受け入れられるわけじゃないし。
「大丈夫だよ。何かあっても僕たちは咲人にとって良い様になるように動くから。……乃愛だけは博人に迷惑かからないようにって動くだろうけれど」
「なら、いいか。クラが変な方向に暴走しそうになったりしたら、俺がどうにかするよ」
「うん。そうして。僕も思い込んで間違った行動をしてしまったりしたら困るもん」
そう言ったクラの頭を撫でる。
魔族たちに出会ったらまた何か変わるのかとか、色々考えてしまっているけれどクラも居るし問題はない気がしてきた。




