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薄井君は召喚されたので異世界を漫遊する~家族の秘密を知った件~  作者: 池中織奈


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西大陸の北部へと向かう ⑦

 さて、フォンセーラやノスタ、それにクラに話を通してそのまま街を去ろうと思った。ただ今手をつけていることもあるにはあるので、すぐさまというのは難しいけれども。

 まぁ、早急にこの街から去るための準備は進めているけれど。



 それにしても伯母さんの信者達って、力を持っている人の方が多いんだよな。お金をかけて信仰しているからこそ、捕まったとしてもその後はすぐに釈放されたりするのかもしれない。……それはそれで人間社会の闇というかなんというか。


 他人事で考えているあたり、俺も大分神様よりに思考が転換しているのかもしれない。……本当に下界で過ごすのに支障があるようなら神界とか人のいない場所で過ごせばいいかって感じだしな、俺。

 ただ普通の人達だと、周りの人たちのこととかも凄く重要なんだよな。


「君は……」


 俺は街から去る準備をしながらせっせと行動していたわけだけど、まさかの俺と目があった騎士と遭遇した。

 すぐさま逃げようとしたら腕を掴まれてしまう。……俺に何か用なのか?

 というか捕えた貴族に関しては、もう対応済みなんだろうか? 早急に対応しないと、あの貴族騒ぎそうだけど。



 俺はそんなことを考えながら、諦めて返事をする。



「腕、離してくれるか? 逃げないから」


 俺がそう言ったら腕を離してくれた。それにしてもこうして腕を掴まれるのってちょっと嫌な気分になった。

 というか、初対面の相手に接触されるのって嫌だよな。俺はスキンシップが激しい方じゃないから余計にちょっとなぁとなる。



 思えば母さんは父さんには凄くべたべたしている。でも子供達には全く触ったりはしないのである。そう言うタイプだ。

 俺はどうなんだろう? 好きな子が出来て、仮に夫婦になったとしたらお嫁さんにはべたべたしてしまうんだろうか。分からない……。



 俺の言葉に頷いた騎士は、そのまま俺を連れて飲食店へと向かう。そこで話をしたいと思っているらしい。ちなみに個室もあるお店だった。

 込み入った話じゃなければ個室になんて行く必要はないと思うのだけど、面倒な話でもされるのだろうか?


 正直言ってこういう初対面の相手と個室で話すのって少しだけ怖いよな。向こうが何が考えているのか全く分からないしな。これで何か俺にとって望まないことを起こされるようならすぐに逃げよう。




「時間を取らせてすまない。俺が奢るから好きなものを頼んでもらって構わない」



 そう言われて、こういうのって素直に受け取って色々頼んでいいのか? と疑問に思う。相手が悪い人間だったら、そのことを理由に脅されたりとかするのかも。

 そういうことを考えると一先ず、軽く注文するだけにした。




「それで何の用?」

「この前、俺のことを助けてくれただろう。それが分かったから、お礼を言いたかった。それにあんな風に周りに悟られずに魔法を使えることは素晴らしいことだ。きっと崇高な神の信者なのだろう」



 ……うーん、ちょっと面倒なタイプだったりするのか?

 信仰心がなければ素晴らしい魔法が使えないとかそう思っているとか?

 この世界は神様への信仰が活発であり、それに伴う面倒事がやまほどあるのである。



 伯母さんの信者の中には、母さんを排除しようとする過激派もあるから俺が母さんの信者……まぁ、俺は神の子供なので信者とはちょっと違うけれど、そのことを言うのはリスクがあるので当然言わない。




「見苦しかったからつい手を出してしまっただけで、それ以外の理由はないからお礼は要らない。それと魔法の腕と信仰心は関係ないと思う。特に目立ちたくはないから、俺のやったことは広めないでほしい」



 とりあえず簡潔にそれだけを伝えておく。

 こういう風にちゃんと意見をはっきり言うことって大事なんだよな。先に口止めしておかないとどれだけ周りに言いふらされるか分からないし。悪意もなしに広まることなんて幾らでもありそうだし。




「そうはいっても助けられたことは確かだからお礼を言うのは当然だ。……しかし君にも信仰している神は居るだろう? その神のおかげで健やかに過ごせているのであればもっと感謝を示した方がいい」

「まぁ、感謝はしてますけれど。だからといって俺の生活がうまくいっているのは全て神のおかげとは思っていないので」



 俺は母さんの息子だから、そもそも母さんがいなければここには居ない。

 俺は両親にのびのびと育てられて、そうして今、此処にいる。俺が悠々と過ごせているのはそう言う育て方をされたおかげなのはそう。とはいえ、健やかに過ごせているのを神のおかげとするのってあんまり理解は出来ない。


 いや、でもあれか? 地球に居た頃は俺も神様というのはもっと特別で、遠い存在だからってそう言う考えは少しはあったかも。神社とかにいった時にお祈りをしたりも結構していたし。神に祈るの意味が、昔と今では俺の中で大分違うのかもしれない。



 今は神様が身近っていうか、俺も半分神のようなものだからそう言う感覚全然ないんだよなぁ。



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