西大陸の北部へと向かう ⑥
あの貴族の息子は法に触れる行動を行っていたようだ。
詳しいところは知らないけれど働き先の食堂の人達が喜んでいた。どうやら知り合いの一人が連れていかれて帰ってこなかったらしい。
……あとあの貴族の息子とその親、伯母さんの信者らしい。
お金をかなりかけているんだとか。こういう信仰において使うお金って、誰にいっているんだろうか? 伯母さんには確実にいっていないし、というか信仰って金かからなくね? なんで金をかけた方が偉いみたいな風潮あるんだろうか。
だからこそ、凄く喚いていた。
伯母さんの信者として、深い信仰心を持つ彼らは伯母さんから救われるはずだと思っていたようだ。
なんともまぁ、「俺にこんなことをしてもいいのか!」なんて叫んでいる様子を見て呆れた。だって馬鹿じゃん。
信仰したからって伯母さんが助けてくれるって思い込んでいるらしい。信仰っていうのは、神に対する一方的なものでしかないと思う。崇め奉るのは、信者側が勝手にやっていることであって正直神様側からしたら関係のないことではある。
特に伯母さんや母さんぐらいの強い力を持つ神様だと、信者が少し減ろうが増えようが多分気にしない。母さんは一人も信者が居なくなってもいつも通りだろうな。うん、母さんってそう言う人だ。
信者を捕縛した騎士に関しては、そんな物言いに怯えることはなかった。ただそれ以外の者達は、神罰が下るのではと考えている人もいたらしい。正直そんな簡単に神罰って落ちないだろう。というかそれを気にしていたらそれこそ伯母さんの信者達が好き勝手することになって大変な世の中にはなる。
あー、でも俺に何かあったら少なくとも伯母さんは神罰的なものは下しそう。
俺はそんなことを考えながら、喚く貴族の子息とその親を呆れた様子で見る。
特に金持ちの連中たちの中では、金をかけることが一番だとそう思っているんだろう。そう言う信仰の仕方、あんまり好きじゃない。
あ、捕縛した騎士に他の騎士が攻撃を繰り出そうとしだした。正直言って引いた。
だって騎士としての職務を全うしろよってそうとしか言いようがない。信仰心ってきっとこの世界の人達にとっては大事なものなんだろうけれども、だからといって仕事に悪影響を与える信仰心ってやばくないか?
そんなもの捨ててしまえってそう思っちゃうな。
伯母さんからしてみてもそこまでして信仰してほしいわけじゃないだろうし。
信仰心って結局神側の匙加減だろうしなぁ。それで許されるかどうかって神様側が決めることでしかないのに、下界ではそれこそ神の事情なんて知らずに好き勝手していることは分かるけれどさ。
俺はそんなことを考えながら、ああいうお金だけかけている存在が伯母さんの信者代表って顔をしているのも正直言って面白くもないしちょっとおせっかいをかけることにした。
周りにばれないように俺は魔法を使って真っ当に騎士の仕事をしようとしていた奴以外を気絶させた。ふぅ、良い仕事をした。ああいう連中って神である母さんの身内としては気に食わないんだよなぁ。
俺はそんなことを考えながらその場を後にしようとしたら、目があった。気づかれないように行動をしたつもりだけれども一部には気づかれてしまったみたいだ。
ちょっとややこしいことになるかも……とうんざりはする。とはいえ、俺が手を出してしまったからなぁ……。
ただその騎士以外は、流石に気づいていなかったのでそれにはほっとした。一先ずとんずらをかます。だって話しかけられたらもっと厄介だしな。
それにしても俺が嫌な信者ばかりを見てしまっているのかもだけど、伯母さんはもっと下界に目を向けた方がいいのでは? って思ったりする。まぁ、神様からしてみれば人族のやることなんてどうでもよさそうだけど。
しかしあいつらが目を覚ましたらまた騒ぎになったりするんだろうか。その前にどうにか対処していて欲しい。それに関してはあの騎士の行動次第かな。上手くやれなければまた同じような問題が起こるんだろうな。
母さんの信者でも問題行動起こす人は少なからずいるし、本当に一筋縄ではいかないのだろう。
ちなみに問題の貴族たちが捕縛されて街の人々はほっとした様子だった。ただしお金をかけている貴族を捕縛していいのかと恐れている人達も多いみたいだ。
……うーん、この世界って神様のことが身近な存在ではあるのだろうけれども、それでも神のことを正しく理解している信者ってあまりいなさそう。
「なんか、面倒なことになりそうだからこのまま街から去るか」
「折角あの貴族たちが捕縛されたのに、この街の人達、雰囲気悪いものね」
「うん。なんていうか、お金をかけている伯母さんの信者を捕縛したら神罰が下るとか考えているらしいよ」
口にしてみても、そんなわけないじゃんとしか言いようがない。
伯母さんってそこまで暇じゃないしなぁ。




