西大陸の北部へと向かう ③
会話を交わしながら突き進んでいたら、一つの村に到着する。街と街の間に存在している小さな村である。旅人たちがよく寄り道をする場所のようで、宿なども充実していた。小さな村だとそもそも宿自体ない事も多いからな。
丸々一軒家使わせてもらえるタイプの宿泊施設だ。
俺達が軽装なので、ちょっとした遠出かなにかしているように思われていた。まぁ、確かに長期間の旅だと普通はもっと荷物多いだろうからな。
北大陸に向かいたいって話をしたら驚愕された。北大陸からこちらに来る人はたまにいるのだけれども、北大陸に行こうとする人ってなかなかいないらしい。
うん、それも仕方がない話だとは思う。
だって危険で未知数って言われている場所なんだ。この世界だと地球ほど安全ではない。船で大陸を渡るとなるとそれだけでかなり危険だ。海って強大な力を持つ魔物も多数いるって話だしなぁ。
俺も海を渡っても問題ないだけの力がなければ、北大陸に行こうなんてまず思わなかっただろう。
船旅って人によっては命がけであるらしい。俺は最悪、海に投げ出されてもどうにかなるだろうなって分かっているので気軽である。こういう意識の差ってやっぱりあるんだよな。
「北大陸はやはり恐れられているようね」
「知らないからこそ恐れているみたいなそんな感じなんだろうなぁ。魔族って中々他の大陸にはいないっぽいし」
俺もこの世界にやってきてぶらぶらしているけれど、魔族に遭遇ってしていないし。寧ろ神様との遭遇の方が多い。……そんなの俺だけなんだろうなぁ。
俺、神様に会いすぎじゃない? って自分で思う。
俺が母さんの息子だからこそなんだろうけれど。
魔族に会った時に神様の方がよく会うって言ったら、なんて言われるんだろうか。なんて想像してしまった。
グランシティダのようなダークエルフも長生きだし、父さんに出会う前の母さんのことを知っている人達も多いんだろうか。でも寿命が長い分、子供は出来にくいとかなのかな。
……そう考えると神様もそういうものだよな、本来。ぽんぽん神の子供が生まれてもあれだし。母さんが短期間で姉さん達と俺を産んだのって神様達にとっても青天の霹靂だったりするんだろうか。
「ただ北大陸の存在は知られているから完全に断絶しているわけでもないし、どこからか船ぐらいは出てそうだけどなぁ。僕も北大陸に渡った人の伝記は見たこともあるし」
「伝記が残っているってことは、帰ってきたってこと?」
「そうだな。北大陸にいって、忘れた頃に帰ってきたとかだったかな、確か。亡くなるまでの間、北大陸の記録をしていたらしい。だからかなり詳細には書かれていたけれども……書きかけで亡くなったらしくて、全部の情報は書かれていなかったな」
ノスタにそう言われて、そんな人もいるんだなと思った。
そうまでして北大陸の情報を後世に残そうとしたのならばよっぽどの思い入れがあったんだろうな。基本的にこの世界だと行ったっきりで帰ってこないことも多いっぽい。旅は危険だし、その道中で命を落とすことも珍しくない。
「大陸を渡る船旅などにのる際は命の保証が出来ないという誓約書を書くことも必要だったりするらしいし」
「あー、なるほど。それもそうか。フォンセーラとノスタは安心してくれていいよ。もし船にのって予測できない事態が起きても俺とクラで出来る限り助けるから」
旅の同行者の二人が危険な目に遭うのはなるべく避けたい。というか、俺は命を落とす様を放っておくなんて出来ないし。
それにしても一般的な感覚だと北大陸に行くっておかしいことなんだろうなって、改めて思った。
フォンセーラとノスタと話した後に、借りている一軒家の外に出たら子供達に囲まれてしまった。北大陸に興味を持っている子供っているらしい。
というより冒険をすることに憧れがあるらしい。村で一生を終える子供も多いだろうから、外の広い世界に憧れでもあるのかもしれない。
俺も一か所に留まるしか出来なかったら、外に憧れたりしたかもしれない。どれだけ危険でも新しいものを見たいとか、食べたことないものを食べたいとか、そういう願望があるんだろうな。
あまりにも冒険の楽しさを口にして、彼らが考えなしに旅立つことになっても責任は取れないので危険性をなるべく語った。
だって俺が冒険は楽しいとか、世界はそこまで危険じゃないとか、そういうことを口にしてしまって、彼らが冒険に出て命を落としたりしたら困る。
正直言って子供達からしたら楽しい話ではなかったのではないかと思った。
でもまぁ、それでも初めて聞く話に興奮した様子を見せていた。危険な話だろうと、村では経験することの出来ないことを俺が肩っているから楽しんではいるらしい。
……本当に何の責任も取れないから、俺の話を理由で旅だったりしなければいいなと思った。




