西大陸の北部へと向かう ②
俺は神の血を引いているから、長命になってしまったら……そのままこの世界で出会った人たちのことも全員置いていくんだなぁ……。なんて実感してしまった。
長く生きている母さんは、多くの人達が命を失っていくのを見てきたんだろう。姉さん達は最初から神としての認識があるから何も気にしないだろう。父さんは……何だかんだ母さんを受け入れられるような存在なので、母さんが笑っているならそれでいいと受けいれそうだな。
そもそもこの世界に来なければ、俺は人間として生きる道選択したかもしれないけれど。元々地球で暮らしていても二十歳になったら俺に事情を説明するはずだったって母さんが言っていたことを思い出す。
もし召喚されることなどなく、当たり前に生きていて当然異世界のこととか語られたら――どうなっていたんだろうか? もしかしたらすぐに信じられないとかあったかもなぁ。
俺は神の血を引くから、明確に他の人族たちとは違う存在ではある。ただ特に孤独な気持ちとかにならないのは、家族やクラが居るからかな。俺の身体が神側に傾かずにもし人間として短命で死ぬなんてことになったら、少なくとも姉さん達は凄く悲しむだろうな。
……俺の身体が、明確に人間としての枠組みから外れるのっていつなんだろう? そうなったら、俺の感覚も変わっていくんだろうか? うん、わからない。その時が来たら考えよう。
「俺はフォンセーラやノスタとの旅が終わったとしても、円満に別れたのならばその後も付き合いはしそうな気はするけどなぁ」
少なくとも二人は俺の数少ない旅の同行者なのだ。フォンセーラの感覚的には、俺が旅を終えたら俺との関わりも完全に途切れるみたいな感覚なんだろうな。
「そうなのか? サクトってこれまでの旅で出会った人たちと別れる時もさっぱりしていたから、そのまま全て置いていきそうなイメージだった」
「いや、流石に長期間一緒に居た相手のことはちゃんと気に掛けるよ」
ノスタの言葉にも心外だな……という気にはなる。
いや、確かにこの世界にきてから、俺ってあんまり深い人付き合いはしていなかったかもしれない。それに特に誰かと特別仲良くなったりもしていないし、連絡を取る約束をしたのなんてアルバナぐらいか? それも必要だからであってそうじゃなければ伯母さんの巫女とわざわざ連絡を取れる状態にはしなかっただろうし。
母さんが俺がこの世界で生きやすいようにしてくれているのもあって、それでこういう感覚なのもあるかもしれないが。
ただフォンセーラとノスタとどれだけの間、旅を続けるか分からないけれど、彼らが俺にとって特別になっていたらしょっちゅう会いにいくとかはするかもしれない。
神界に行って、そこで生活をしていくとなったら別れが来るんだろうか。いや、でもなんか神界が落ち着かなかったら普通に人族の街とかに居つく可能性もあるか。
この先のこと、全く考えずに俺は悠々自適に旅をしている状態だからな。それに特に期限なんて決めていないし。
……まだ先のことだろうけれど、普通に一緒に旅をしている二人が寿命を迎えたりしたら寂しくはなると思う。
「知り合った人が寿命を迎えていくのを見たら、俺は普通に落ち込むと思う」
俺がそう言ったら、フォンセーラは不思議そうな顔をする。
「サクトはノースティア様の息子なのだから、気に入った人族が居て一緒に居たいと求めたら――きっとそれは叶えられるわ。神がお気に入りの寿命を延ばしたりすることなんてよくある話だもの」
簡単に言われたけれど、重いなぁ……って思ってしまう。いや、確かにそう言う話はよくあるけれども! そもそも神と人の恋愛とかで、人族の方が早く亡くなるのとか悲恋だしなぁ。というか母さんも父さんに新しい身体を与えたって言っていたし、そういうことなんだろうな。
でも見境なく神様が人の寿命を延ばし続けたら大問題だし、そんなことをしたらおそらく罰せられそう。
なんか伯母さん、人族と関わっているからそういうことをよくしてそうなイメージ。人族との恋愛話とかあるけれど寿命での別れとかも当然あるしな、うん、余程お気に入りじゃないと神にしたりなんてしないんだろう。
「いや、そんな簡単に出来るものじゃないとは思うけれど」
「ノースティア様は神の中でも異色の存在とされているもの。だから多分、望めばどうにでもなるとは思うわ」
簡単にそう言われて、何だかやっぱり俺が思っているよりも母さんってこの世界にとって特別なんだろうなと改めて思ったりもする。
しかしそうぽんぽん誰かを高次元に連れて行くなんてことは出来ないので、誰かと一緒に居たいと思ったらまず母さんとかに相談することになるのかなぁ。
……というか、俺、神としての力を自由自在に使えるようになったら誰かの寿命を延ばしたりもできるのか?
それはそれで怖いなぁ。だって人の人生を大きく変えられるってことだし。




