光の女神の巫女との会話 ④
俺は誰かを好きになった記憶は特にない。本当に幼いころに幼稚園の先生とかに憧れたりはしたし、そういったのが初恋と言えるのかもしれないけれどそれ以上の何かはないのである。
正直そういうの興味なく生きてきたしなぁ。
母さんや父さんを見ているとそういう相手が良いなってあって、俺って多分理想が高い。そういうのもあって簡単に誰かを好きになるとか、彼女が欲しいから告白するとかそういうことは一切しなかったんだよなぁ。
なんだろう、母さんと父さんを見ていると結婚って凄く特別なものに思えているんだろうな。だから俺は余程特別な相手じゃないと結婚しようとはしない。特にこの世界にやってきて、俺は自分が神様の息子だということを知ってしまった。余計に誰かと仲良くなる際には気を付けていかなければならないなと思っている。
だって俺が選んだ相手次第で、母さんたちに迷惑をかけてしまう可能性もあるのだから。
「一緒に居て楽な子ですか」
「うん。恋人関係なんて人それぞれだとは思うけれど、俺は共に過ごしていてほっとする方が嬉しいかな」
好きだからこそ緊張するとか、そういうこともあるのだろうな。上下関係がはっきりしているような夫婦だってあるだろうし。そう言う関係は人それぞれで、どれが正しいとかはきっとないだろう。ただ俺はやっぱり一緒に居て落ち着く関係が良いなというのが正直な感想。
それにしても恋心って突然芽生えてしまうものなのかな? どうなんだろう? 一緒に居たいとそんな風に思うもの? そんなことを考えてしまう俺であった。
「そうですか。いつかそのような方とお会いできることを祈っております。女性を紹介しなくても良いとおっしゃっておりましたが、他に何か望みはありませんか?」
「……アルバナは俺に何かを望んでほしいの?」
「そうですね。今回の件の対応もしていただきましたし、何か報酬はもらっていただきたいと思っております」
「じゃあお金は欲しいかな。俺はこれからも旅を続けるから。あとは……そうだな。母さんのことを正しく信者達に伝えてもらって、母さんを排除しようとしている連中をとどめてくれているだけでも大分有難いし」
うん、そもそも今回の件って俺が母さんの名を使って勝手に暴走しているダークエルフの連中が気に食わなかったからって口出ししたっていうそれだけだしな。俺が勝手に関わっただけである。
ただそれだとアルバナは納得はしないようである。
それなら何かもらった方が良い。ただ俺の口にした言葉でもまだ足りないらしい。
「他には?」
そう問いかけられて、凄く悩む。
俺にとってグランシティダ達への対応ってそこまで特別なことではない。それでもアルバナからしたら、それだけの報酬を与えなければならない特別なことなんだろう。あのグランシティダって、ダークエルフの中でも特別な存在なのだから。……というかこの世界でもかなり有名人らしいしな。母さんのことを妄信するあまりに好き勝手しているせいで暴走しているわけだし。
「あー、じゃあ俺が困った時に助けてもらう権利でももらおうかな。俺はまだこの世界を旅するつもりだから。もしかしたらそのうち、人族と関わっていく中で困ることはあるかもしれない。その時に手助けしてほしい」
俺はとりあえずそれだけいった。
俺は神様関係のことだったら正直力づくでどうにでも対応することが出来る。母さんや父さん、伯母さんに力をかりれば最悪どうにでもなるから。ただ人族関係のことだとどうにもならないことってきっとあるのだ。
俺は今のところ、国家などと事を構えたりはしていない。出来る限りはそういった集団と敵対することはないようにしようとは思っている。ただ俺は……どうしても譲れない部分が出てきたら、そう言う相手にも真正面からぶつかりあうとは思う。
例えば母さんのことを排除する集団があったら俺は対応するだろう。母さんが気にしないことだって俺は嫌だから。
そうなった時の対処することって俺の力だけだと難しい。出来る限りは自分が神の息子だと知られないように動く予定だし、そのためならアルバナの力を借りた方がおそらくスムーズに事をおさめられる。
「分かりました。ではそうしましょう。ところでもうこのまま街を去ると聞きましたが本当ですか?」
「うん。さっさと別の街に行こうかなって」
俺とアルバナが会話をしていることは一部でしか知られていない。俺達が交流をしていることを知る者は少ない。ただこうも話し込んでいると噂にはなったりしてしまう。
――俺を神の関係者だと知らない者達は、俺が何者かと勘ぐっていたりもするのだ。これ以上この街に留まっていたら面倒なことになる気しかしない。
俺は悠々自適にこの世界を旅して、のんびり過ごしたいだけなのだ。母さんの息子であることは知られずにしばらくは過ごしたい。
だからこのままこの街に留まろうとは思っていなかった。
アルバナは俺の言葉に残念そうな顔をした。だけど俺の決意が揺るがないことが分かっているのか、笑った。
「分かりました。では今後、またどこかでお会いできることを楽しみにしております」
アルバナはまた会えることを確信した様子でそう言った。俺はその言葉に曖昧に頷いて、その場を去るのだった。




