ダークエルフ種に纏わること ⑮
一旦口をふさいでいるので、グランシティダはもごもごしていた。俺はその様子を見てどうしようかなという気分である。
「なぁ、この程度で神様の特別なんて名乗らない方がいいよ。恥ずかしいから。その神様にも迷惑がかかるし。というか、現状、グランシティダの行動は闇の女神ノースティアに散々迷惑をかけているわけだけど」
俺がそう口にしたら、物凄い眼光で睨まれた。まだ不満があるらしい。プライドが高いからこそ、余計になんか俺にどうのこうの言われるのが嫌なのかもしれない。
ダークエルフ族の中では特別で、神様に近い存在だって自負していて。
母さんにとって自身が唯一無二だとか思ってそう。そんなことないのに。
……俺よりも母さんのことを理解しているって本人は思っているんだろうな。
母さんへの信仰心が強いからこそ、余計に俺とクラの言葉は腹が立つののかもしれない。
「信仰心を悪いとは言わないけれど、神のことを考えるなら闇の女神ノースティアを救助しなければなんていって特別な魂を捧げることはやめろ。そんなものをかあ……闇の女神ノースティアは望んでない。そもそもあの人は自由だ。お前の意見なんて聞かない]
というか母さんは父さんの言葉以外聞かないし。
……本当父さんが母さんに会って良かったよな。そうじゃなかったら、どれだけ母さんが好き勝手に生きて、大きな被害が出ていたか。
まぁ、そうなったらそもそも俺は産まれていないわけだけど。
まだもごもごしている。
俺に反論をしたくて仕方がないのだろう。
「今、お前に出来るのって、頷くことだけだ。いいか? 闇の女神ノースティアの望まぬ行動はするな。助けを求めなどあの人はしない。それに特別な魂なんて求めていない。お前達信者に出来ることなんて、ただ信仰することだけだ」
なんというかさ、信仰って押し付けることでは決してないんだよな。あくまでこう、自分たちがただその神を信仰することだけが出来ることだ。
この世界は神という存在が身近で、実際に存在してきて、それこそ話しかけてきたりする。神様が望まない行動をしたらそれだけで報復を受ける。母さんは他人に興味がないから放っておいただけで、こんな行動が許されているわけじゃない。
……母さんがどうでもいいからって黙認しているからこそ、グランシティダは許されたなんて勘違いをしていたんだろうな。そんなわけないのに。
グランシティダは頷かなかった。
俺のことを睨みつけている。
なんでこう、聞き訳が悪いんだろうか。俺に勝てないだろうことが理解出来るだろうに。
思いっきり俺はグランシティダの手を踏みつける。
「うぐっ……」
苦しそうなくぐもった声が、グランシティダの口から洩れる。まだ俺のことを睨んでいる。
「言っただろう? 頷くしか出来ないって。いいから頷け」
俺はそう言って、更に踏みつける足の力を込める。何度も何度も痛めつける。だけれども、グランシティダは頷かない。
なんというか、びっくりするぐらい頑固だ。
面倒だな。いっそのこと、頷くまでどっかに閉じ込めておくか? いつまでもグランシティダに構っていても疲れるし。
「クラ、グランシティダのこと、閉じ込めておける?」
「いいよー」
「根を上げるまで閉じ込めておけばいいかなって。そしたら余計なことはしないし、長く生きたダークエルフならば死なないだろうし」
というか、痛めつけるのも面倒になってきたというのが本音だ。
うん、わざわざグランシティダのためにこれ以上、俺の時間を割くのも無駄だしなぁ。
グランシティダのことを捕らえて置いたら、ダークエルフ達も好き勝手出来ないだろう。
そう結論出来たので、相変わらず睨みつけているグランシティダのことをクラに任せた。
他のダークエルフ達は大体気を失っているので、一旦彼らにはグランシティダを捕らえていることを告げて大人しくしてもらおう。
そう思ったので、その後、さっさと他のダークエルフ達と交渉した。思ったよりもすんなり向こうは頷いた。
俺やクラに怯えているらしかった。彼等からしてみるとグランシティダってそれこそ神様に近い存在なのだ。母さんに最も近いダークエルフだと、周りからは思われているらしい。……母さんが俺でもどうにか出来るぐらい弱いわけないのに。
あの程度の強さで母さんに並び立てると思っているあたり、馬鹿げている。
彼らはグランシティダのことを慕っているので、返してほしいらしい。ただグランシティダ自身はずっと反抗しているので、解放されるのはずっと先だろう。
「闇の女神ノースティアは危機的状況にない。だから、助けようと何かする必要はない。闇の女神ノースティアはもしダークエルフに関わりたくなったら自分から会いに来るだろう。それを待っていればいい」
ダークエルフ達にはそうも言っておいた。
うん、本当に余計なことはしないでほしい。
ダークエルフ達は俺と母さんの関係を知りたそうにしていたけれど、もちろん、伝えることはなかった。




