ダークエルフ種に纏わること ⑬
「馬鹿だと? 俺に向かってそのようなことを言うとは――!」
「馬鹿だもん。乃愛――お前の言うノースティアはその行動を不快に思うこと間違いなしだよ? そもそも助けなんて求めるわけないもん」
「は? 何を言う!! お前は誰かの神獣のようだが、ノースティア様のことを呼び捨てにするとは無礼な!! 俺はお前のような神獣を知らん!! 産まれたばかりの神獣がノースティア様のことを語るとは……!! 他の神からどのようなことを語られているか知らないが、ノースティア様はお前達のような名も馳せていないものとは関わらないのだ」
なんかドヤ顔で語られたけど、引く。いや、うん、母さんは確かに他人に関する関心はほとんどない。それはグランシティダ達にも同様だっただろう。
……あれかな、自分の見たいものだけを見たいと思っているからこそ、そういう思考になっているのだろうか。
自分とも話してくれないのだから、有名な神としか話さないみたいに思っているとか。
いや、うーん、それはそれで母さんのことを馬鹿にしている感はあるよなとは思ってしまう。母さんがそういう名が知れているかどうかで付き合う神を決めているとか、そんなわけないのに。母さんの見ている世界って、きっと俺とは全く違う。
神様なんだからそれは当然で、普通の人族と同じ感覚で生きているなんてことはあり得ない。
自分のことを特別視しており、傲慢な部分も当然あるだろう。でもそれは神様だからそういうものだ。まだ十数年しか生きていない俺とは違う生き方をしてきた母さんの思考を全て理解することは俺には出来ない。
子供である俺でさえ理解出来ないのに、母さんの信者であるだけのグランシティダが理解したつもりなのってなんというか……勘違い甚だしい。
「ノースティア様のためにも俺はあの魂を捧げなければならない。その邪魔は、誰にもさせない!!」
うーん、何か決め台詞っぽくいっているけれど、実情を知っている身としては本当に何を言っているんだかって感じがしてならない。
俺は母さんを信仰していること自体には、俺は別に構わない。何とも言えない気持ちになることもあるけれど、まぁ、いいかなって。でもこういうはた迷惑な信者がいるから、母さんの評判もまた悪くなるんだよな。
母さんって、こういう信者に働きかけることは幾らでも出来る。だけれども母さんは信者に対しても関心ないからな。……父さんだって母さんが邪神呼ばわりされるのが進行するの嫌だろうし、父さん似一言言ってもらうのが一番良いのかもしれない。
「それはお前の勘違いだよ。闇の女神ノースティアはそんなものを望んでいない」
母さんが欲しがっている魂なんて、父さんのものだけだ。他のものなんて、母さんは望まない。そもそも父さんの身体も魂も全部自分のもので、誰にも渡さないなんて思っている母さんが他の物に目移りするわけもない。
――昔の、父さんに出会う前の母さんは確かに一つのものに執着はしなかったかもしれない。それでも今の母さんは父さん以外の異性に何か捧げられても喜ばない。
「一旦、神に投げかけてみればどうだ? そしたら、そんなものは要らないと言われるだろう」
きっと母さんは父さんと一緒に過ごすことを邪魔されたって滅茶苦茶怒るだろう。母さんは俺や姉さん達が二人の仲を邪魔しても不機嫌そうになっていたし。
二人っきりで旅行に出かけることも多々あったし。俺達の目がないところはもっとイチャイチャしているんだろうなって想像が出来る。
「はっ」
俺の提案に、グランシティダは馬鹿にしたように笑った。なんかその笑い方、むかつくな。うん、俺、母さんにわけわからない感情を抱いている目の前のエルフのこと、気に食わないなって感情はあるのだ。
「神にそうやすやすと声をかけられるわけがないだろう。これだから馬鹿は嫌いなんだ! ノースティア様はこの俺にさえ中々話しかけてくれないのだ。俺が問いかけたところで答えてくれるはずがない!」
「へぇ、特別扱いされているって思っているのに無視されているんだ? 全然闇の女神ノースティアからしたらどうでも良いって思われているんだな」
うん、母さんってそういうところ、割り切りすぎだよなぁ。自分の信者だろうと、簡単に無視するというか。
俺が話しかけた場合だって、父さんとのイチャイチャ優先してしばらく答えないとか普通にあるからな、あの人。
それだけ無視され続けているのになぜ、自分は母さんの特別だって思えるのか謎すぎる。
母さん、父さんからの呼びかけだったら何が何でも答えるしな。どんな状況でも。それは愛ゆえにだろう。
「お前っ!!」
あ、切れた。
俺に向かって魔法を向けてくるグランシティダに、うーん、短慮的って思った。
さてさて、出来れば俺は母さんの息子だって言わずに事をおさめたいけどどうしようかな。




