ダークエルフ種に纏わること ⑫
「それはお前には関係ないよ。アルバナを狙っている理由なども把握はしているけど、やめてくれない?」
俺がそう言うと、思いっきり睨まれた。
俺って多分、普通の人族にしか見えないものだとは思う。仮に神の関係者だと把握したとしても、俺が母さんの息子だとはグランシティダ達は全く以って思わないだろう。
このダークエルフからしてみると、自分は母さんの特別なのだから子供のことを紹介してもらえるはずなのだと信じ切っているようだ。うん、そんなわけないのに。
なんでこの人、母さんとの付き合い長いはずなのにこうなんだ? 母さんってこんな思い込みの激しい人間と少しは交流持っていたのか……。寧ろよくその際に母さんに切れられなかったなとは思う。
いや、寧ろ切れられてはいるのか? 母さんって常識改変みたいな能力あるし、グランシティダは母さんから記憶を消されているだけなのかもな。
うーん、全部母さんの手のひらの上か。……でもグランシティダは母さんのやったことなら記憶を消されてようが喜びそうだけど。
「お前は……忌々しき光の女神の関係者か?」
「うーん、そうとも言えるし、そうでもないともいえるかな?」
グランシティダが聞きたいのって、母さん側か伯母さん側かってどちらかだと思うので曖昧に答えておく。
俺にとって光の女神は伯母さんで、闇の女神は母さんだからどちらかというとグランシティダと同様に母さん側の人間ではあるし。
そもそも母さんが本気で伯母さんと喧嘩する場合は、俺は母さん側につくだろうしな。もちろん、理由次第だけど。
母さんが理不尽な理由で伯母さんと敵対するなら父さんが止めるから、問題はないけれど。
俺の曖昧な言い方はグランシティダを苛立たせるようだ。
ちなみにだけどアルバナに頼んで周りは関係者で固めてもらっている。あとクラが目立たないようにはしてくれているので、俺は隠れもせずにグランシティダと会話を交わしているのだ。
「俺の邪魔をするな!! ノースティア様をお救いしなければならないのだ!!」
ああ、もう本当に愚かだな? 母さんがそんな状況に陥るわけがないって信じていないことにもイラつく。信者ならば母さんがどういう神なのか知っとけよ。
母さんはそもそも誰かに助けられることなんて望まないだろう。そんな状況に陥ってもそれを楽しみそう。
母さんだしな。
母さんは父さんが勝手に自分のことを決めつけても怒らず寧ろ受け入れると思う。父さんが言うならそうするべきって思考だし。でもそれ以外が勝手に決めつけてどうのこうの言うなら確実に怒りそう。
「ふーん。なんでお前は闇の女神ノースティアが救いを求めているって思っているわけ? そんなわけないじゃん」
「変なこと言いすぎ」
俺とクラが同時に口を開く。だって明らかに意味不明なことを言いすぎだし。
クラが喋ったことで、グランシティダは完全に俺が神の関係者だとは確信しているようだ。だって喋る猫とか、明らかに普通じゃないしな。
うん、というかグランシティダからしてみるとそれだけの力はあるって認めているのかも。
「何を言う!! 俺はノースティア様から助けてほしいと言われたのだ!!」
「夢でだっけ? それ正夢じゃないから。そもそもかあ……ノースティア神はそんなことは望んでないよ。寧ろそんなことをしたら、逆に評判が悪くなる未来しかないからやめなよ。別にさ、ノースティア神はおば……イミテア神と争いあおうなんて欠片も思っていないし。寧ろその巫女に手を出したら嫌がられるぞ?」
なんか普通に母さんとか、伯母さんとか口にしたくなってしまう……。
流石にこいつに知られたら凄くめんどくさそうだから、わざわざ伝える気もない。
それにしてもなんで夢で見たからといって、こんな風に思い込むんだろうか? なんというかさ、中途半端に力を持つ存在がこうして暴走しがちなのって本当にはた迷惑だよな。まだそういう力がない存在ならば別に問題ないのにさ。
この世界だと一個人がとてつもない力を持つせいで、暴走しがちな人が居ると大変なんだろうなとも改めて思った。
「お前のようなものがノースティア様の事を語るな!! 光の女神の汚らわしい信徒めが!! 俺の方がノースティア神のことを理解出来ているのだ!!」
うーん、なんか面倒だな、こいつ。
俺が母さんの関係者かどうかとか考えてもいないんだろうな。
俺の母親のことを知ったら、卒倒でもするんだろうか? 本人は母さんから特別扱いされているつもりらしいから、俺が母さんの息子だとか全く思わなさそう。
「ふぅん? 俺の方が多分理解しているよ。というか、夢はあくまで夢だって分からないわけ? そんなものはノースティア神は望んでいないって発覚したらどうする気? その時、取り返しのつかないことをしていた場合は?」
「そんなことはあり得ない!! ノースティア様は私の行いを喜んでくれているはずだ」
あれだなぁ。母さんがあまりにも父さん以外に興味がなさ過ぎて放っておいた弊害か?
放っておかれていることは興味がないからでしかないけれども、許されているって思われてそう。
さて、どうしようかと考える俺である。
「ねぇ、馬鹿なの?」
その中で口を開いたのは、呆れた様子のクラだった。




