ダークエルフ種に纏わること ⑩
「伯母さん?」
「母さんは光の女神イミテアのことを姉のように扱っているから。だから俺にとって光の女神イミテアは伯母さん。本人も伯母さん呼びでいいって言っていたからそう呼んでいる」
「……イ、イミテア様が伯母さんですか。……それにイミテア様がノースティア神と敵対していないことは想像出来ておりましたが、姉妹のような関係なのですか?」
アルバナは驚きつつも、俺の言う言葉を受け入れている様子だ。
こうしてきちんと話が通じるのは有難い話だ。最初から全て否定されたら、説明をするのが面倒だから。
「らしいよ。俺は母さんと伯母さんが揃って会話している様子はまだ見たことないけれど、お姉ちゃんって呼んでいたし。伯母さんとも話したことはあるけれど、母さんのことを大切にしている様子だったから、信者達が好き勝手したり、敵対することなんて全く望んでいないんだよ」
「そう、なのですね。それほどまでにイミテア様がノースティア神と親しくしているというのならば、信徒たちにも正しく伝えなければなりません」
「俺は母さんが邪神呼ばわりされなくなることは嬉しいけれど、それでアルバナの立場が悪くなるようなら辞めた方がいいかも。母さんはこの世界で伝わっている通りの邪神というわけではないけれど、他人に対してはかなり容赦のない性格だから。……正直言って昔の母さんは今よりも邪神と呼ばれてもおかしくないことはしていたと思うし」
父さんっていう抑制力のない状況の母さんはそれこそ驚くほどに好き勝手していただろう。非人道的な行動だって行っていたと思われる。……まぁ、神様だしな。人族にとって信じられないような行動だって、上位存在である神だからこそやってもそういうものって感じ。
俺は邪神である前に俺の母さんであるという認識の方が強いので、どうしても何かやらかしていても母さんだしなぁって感覚になる。ただしこれは俺が母さんを身内びいきしているからに他ならない。
だからなんというか、目の前のアルバナたちからしてみたら放っておくと何をやらかすか分からない危険な神様という認識なのかもしれない。ただ父さんが傍に居るから、それこそ問題行動は起こさないはず。
……まぁ、父さんって割と何でも受け入れるような存在なのでなんだかんだ問題ないと思ったら、母さんの背中を押してしまうかもしれないけれど。
「なるほど……。噂通りな一面はノースティア神にはあるということですか。私としてはイミテア様が姉妹のように扱っているというノースティア神と敵対するつもりはございません。しかしノースティア神の行動次第では、イミテア様の信者の一部は討伐すべきという思考になるかと思います」
「あー……まぁ、母さん自身は正直人族が幾ら自分のことを倒そうとしても気にはしないとは思う。火の粉がかかるなら、全て排除するだけだろうし。まず、母さんには人族が勝とうとしても無理だから、大人しく怒らせないようにした方がいいとは思うけれど」
「それはそうですね……。神の中でも最上位の力を持つというノースティア神に人族が勝利することなどまずありえません。万が一、神を討伐できるだけの力を持つ人族が居たとしても……ノースティア神のことをイミテア様が大切になさっているなら、討伐は阻止しに来るでしょう」
「それに俺や父さん、姉さん達も間に入るからまず無理だよ」
「……お姉様もいらっしゃるので? それにしてもノースティア神に伴侶が居るというのは知りませんでした」
「母さんが異世界で出会ったのが父さんだよ。母さんがこの世界にしばらくいなかったのもそっちで暮らしていたからだから。父さんのことはこの世界の人達はまず知らないんじゃないかな」
俺が説明する度に、アルバナは驚いた反応を示している。それだけ母さんが誰か一人を伴侶としていることも、子供がいることも含めて驚きなんだろうな。
まず母さんに何かあったら、俺達家族は母さんを助けに向かう。それに伯母さんだってそう。だから万が一人族が母さんを討伐するなんてまず無理である。
そのことを理解させるまで向かわせるのも一つの手かもしれないが、そもそも討伐しなければならないって思考にならない方がいい。
「母さんには好きに生きて欲しいと思っているし、母さんには我慢なんて似合わない。だから母さんが自分の意思で行った行動で、邪神呼ばわりされるのは俺は別にいいと思っているんだ。そもそも母さんのやることを俺が止めることなんて出来ないし。だけれども、母さんの意思に反して勝手に行動した連中のせいで邪神呼ばわりが加速されるのは嫌なんだ。だから、グランシティダの事は止める」
「あなたがダークエルフ達を止めようとしていることは有難いです。それで、どうするつもりで?」
「そうだなぁ。……少し危険かもしれないけれど、囮になってくれないか? もちろん、実際に魂を捧げさせるなんてことはしない。ただ伯母さんの巫女の動きが活発になれば、向こうは動いてくると思うんだよな」
俺はアルバナの言葉にそう答えた。




