ダークエルフ種に纏わること ⑨
「ごきげんよう。あなたは、神と関わりがありますよね?」
――翌日、昨日目が合った少女と遭遇した。どうやら俺のことを探していたようだ。そして確信した様子でそう言った。
俺の傍に居るクラが警戒するように少女を見ている。
……クラ、大丈夫だから。そういう意味を込めて頭を撫でて落ち着かせる。
宿にやってきたので、店主に行って個室をかりた。だって明らかに込み入った話をされそうだったから。
それにしてもあれかな、俺がこの少女に伯母さんの巫女かもと感じたように――この子もまた俺のことを神の関係者だって分かったんだろうな。
ちなみに少女は、二人の男性を連れてきていた。おそらく護衛なんだろうな。その二人は無表情だ。俺とクラに対して思う所はあるのかもしれないが、顔には出さない様子は出来た人なのだと思った。
「そうだと言ったら?」
「やはりですか。イミテア様と話している時のような感覚を、少しだけ受けました。神の関係者がどうしてこんなところに? やはりダークエルフ達のことを案じて神が遣わしたのでしょうか」
……そんな問いかけをされて一瞬どう答えたらいいか悩んだ。
俺は神の血を引くけれど、此処に来たのは全くの偶然である。特にこれといって目的があるわけでもない。
「いや? たまたまこの街に来たら、ダークエルフ達が何かをしでかそうとしているのを目撃しただけだ。そっちはお……光の女神であるイミテアの巫女であってる?」
「たまたまですか……。神に纏わる存在とダークエルフ、それにイミテア様の巫女である私――アルバナが揃うのが偶然だとは思いませんが」
「あー、うん、まぁ、それはそう。俺は神の関係者ではあるから、割とそういうのに遭遇しやすいからそのせいかなとは思っている」
それにしてもやっぱりこの子が伯母さんの巫女かぁ。
伯母さんって面食いだからか、選ぶ巫女も綺麗な子である。伯母さんの逸話って大体が、美形か美人が出てくるし。男関係の話が多いけれど。
俺って、本当に神関係のいざこざに遭遇しやすいんだよなぁ。
母さんの血を引いているからこその宿命というか、なんというか……。
「……そうなのですね。それはこれまでも大変だったでしょう。あなたはイミテア様の信者ではなさそうですが、どなたの関係者ですか?」
「えっと……どうしようかな」
「私はあなたに素性を伝えたのに、あなたは教えてくれないんですか?」
「まぁ、いいか。俺も光の女神イミテアの巫女とは話したかったし。俺は咲人。闇の女神であるノースティアの息子だよ」
「え?」
信じられないようなものを見る目で見られた。巫女の少女だけではなく、後ろの男性二人も思わずといったように声が出ている。
まぁ、母さんの息子って突然言われても驚愕するのは当然と言えばそう。
「ノースティア神の……? そのような存在が居るなど聞いたことがありませんでした」
「俺は最近まで違う世界に居たから。母さんの故郷であるこの世界にやってきて、折角だから色んなものを見て回ろうと旅をしているんだけど、さっき言ったように神様関係のことにはかなり遭遇しやすいんだ」
「……この街の周辺に居るダークエルフ達も関係がないと?」
そう問いかけられて、苦笑してしまう。あまりにも偶然が重なっているから、俺がダークエルフ達と関わりがあるかもと思うのも仕方がないことだ。
「ないよ。正確に言えばあのダークエルフ達は母さんとも関係ない。さっきちらっと様子を見に行ったけれど、母さんが望んでもないのに好き勝手しようとしていたから寧ろ気に食わないし」
そう口にした時に思わずいら立ちが外に漏れたのか、アルバナたちは身体をびくりっと震わせた。
「……私たちは少なくともダークエルフ達はノースティア神と関わりがある可能性を考えてはいました。もちろん、神と信徒は切り離すべきとは思っていますが、最近グランシティダというノースティア神の寵愛を受けているというダークエルフが行動していると聞いているので」
「グランシティダも母さんと関係ないよ。というか寵愛なんて口にしたら、母さんが怒るからやめてほしいかな。グランシティダは自分が母さんの特別だって思い込んでいるみたいだけど、全くそんなことはないから。あくまであっちが勝手に言ってるだけ」
何だか気持ち悪いよなぁ。自分は母さんから寵愛を受けている、特別だ! って周りに言いふらしている独りよがりな男ってことだろう? 幾ら見た目が良くても勘違い野郎ってなんだかなって気分。
「なるほど……。そうなのですね。って、もしかしてこのあたりにグランシティダがいるのですか……?」
「うん。いたよ。……アルバナからしたら迷惑な話だろうけれど、あのダークエルフ達、勝手に母さんが封印されているから救わなきゃって思っているらしくて。それでアルバナの魂を捧げるとかほざいていたよ」
「え。それは、なんと恐ろしい……」
「あ、でも安心して。少なくとも俺は母さんの評判が下がるような行動を起こさせるつもりはないから、グランシティダ達のことは止める気ではあるから。光の女神イミテア――伯母さんだって、ダークエルフ達が自分の巫女に手を出すのは望まないことだろうし」
俺は青ざめたアルバナたちにはっきりとそう言った。




