ダークエルフ種に纏わること ⑦
光の女神イミテア。
それは母さんが姉さんと慕う神様の名である。この世界では一般的に信仰されている女神だ。
その巫女なんて立場となると、多分人族の間でも特別な存在な気はする。
というか、巫女ってなに?
呼び方が違うだけで伯母さんに気に入られている人って感じ? 俺はそんなことを考えながら、あいつらがあんなことを言っていたのでもしかしたらこの街に伯母さんの巫女が居るのかもと思ったけれど、ざっと聞き込みした限り全く分からなかった。
もしかしてあれかな、お忍びでこっちにきているとかそんな感じか? うん、そう言う感じな気はする。
そうなるとどうやって巫女を見つけたらいいんだろうか? そもそも巫女って、人族から見た巫女なのか、それとも神からしてもお気に入りなんだろうか。
伯母さんに聞いたらてっとりばやいのかもしれないけれどこんなことで伯母さんに話しかけるのもなぁ。ただでさえこの前、エルフのことで色々お世話になったわけだし。
そんなことを考えてなるべくこちらで探ってみることにした。街の中をぶらぶらと歩く。その間に、グランシティダやダークエルフ達に近づかれないようには警戒しておく。街中に彼らが現れる可能性は少ないようには見えるけれど、警戒は必要なのだ。
だってああいう連中ってこの前のエルフとかと一緒で周りの被害とか全く気にせずに突っ込んできそう。それで人が亡くなったりしてもおそらく何の興味関心も持たないんだろうなぁ。
……俺は幾ら自分が神へと近づいていくとしても人族をどうでもいいみたいに思う感覚にはなりたくないなぁ。あくまで俺は自分が人間のつもりだし。でもどうなんだろうな、半神として長生きするようになったらまた違う感覚に陥ってしまったりするんだろうか。
母さんなんかは確かに人族が死んだって気にしなさそうだけど……。まぁ、父さんが嫌がるからあんまり人に被害を与えたりはしないだろう。
伯母さんの巫女ってなると、やっぱり神力とか纏っていたりするんだろうか。探ろうとしたらすぐに分かればいいんだけど。
……というかダークエルフ達って、その巫女のことを探れるだけの何らかの力を持っているのか? それはそれで面倒だよなぁ。
勝手に神様に纏わる人物を探れるのならば、俺のことも探れそうで末恐ろしいな。それともただたんに情報収集能力が優れているとか?
街中にはダークエルフの姿は見られないけれど、どこかに変装した存在でもいるのか? それとも協力者がいるのか。
ふらふらと歩いていると、違和感のある魔力の人物が見られた。
もしかしたらあれが変装したダークエルフとか? 向こうは俺の顔を知っているわけではないだろうけれど、ちゃんと確認しておかないと。
流石に追いかけられた時も顔は見られなかったけれどな、念のため。
ひっそりと違和感のある人物についていって、情報を集める。グランシティダは別として他のダークエルフにはばれないはず。
そう思いながらついていったらやっぱりあれはダークエルフだった。人気のない場所で、魔法を解いていた。
場所によってはダークエルフの存在は忌避されているんだろうな。特にこの街に伯母さんの巫女と呼ばれる存在が居るのならば、周りはダークエルフの存在に警戒しているかも。
母さんを復活させようという謎の運動により、母さん崇拝の連中が好き勝手しているしなぁ。
……この街以外でも、伯母さんの信者達が大変な目にあっていたりするのだろうか。それはそれで嫌だなぁ。
伯母さんはそれらの動きをちゃんと確認しているんだろうか? それとも下々の行動なんてどうでもいいと思っているか……。うん、それはそれで神らしいけれど。
ダークエルフのことを観察し続けていてもばれそうで怖いので、一旦引いた。
それよりも伯母さんの巫女について探らなければならないと、俺はまた街中をぶらぶらと歩いている。
その最中に伯母さんの信者達の姿は多々見られた。というか、伯母さんの信者って本当に数が多いんだよなぁ。母さんの信者って世界的に見ても数が少ないしさ。
いや、しかし伯母さんの信者達の中には過激な思考のものと、平和的な思考の者と様々だ。
伯母さんの巫女って呼ばれている存在が過激思考じゃなければいいんだけど。
「最近、邪神の信者達が暴れているようです。これは邪神復活の予兆でしょうか」
「なんと恐ろしい……!! 邪神を倒せるような英雄が居ればいいんですが」
広場に差し掛かった時、そんな会話が聞こえてきた。
……伯母さんの信者の中には母さんを倒すべきものって思っている人だっているんだよな。なんというか、母さんって手を出されなければ何もしてこないのに。
勝手に倒すべきとか思われているのは、子供の身からすると凄く嫌な気持ちにはなる。一般的な考え方だと、そうなんだろうけれど。
「いえ、神である存在は倒すことは出来ないでしょう。私たちが出来ることはイミテア様へ、邪神の怒りを鎮めるための祈りを捧げるだけです」
その場に凛とした声が響いた。




