ダークエルフ種に纏わること ⑥
腐っても長生きをしているダークエルフであるということなのだろう。
俺やクラの存在に気づいてしまったらしい。
俺はその声を聞いた瞬間、クラに目配せをする。アイコンタクトで、この場から逃げることを提案。クラは頷き、俺達はそのまま駆け出した。
今のこの段階で、グランシティダと会話を交わす気もなかった。あくまで情報収集のつもりだったんだけどなぁ。
というかさ、俺やクラの存在に気づけるだけの力があるっていうのならばもっと他のことに使えばいいのにって思ったりもする。
そういうところも、神様に近い存在だって周りから言われる所以なんだろうけれど。
「待てっ!!」
声が聞こえてくるけれど待つわけがない。正直今はまだグランシティダと話すつもりもないのである。
伯母さんの巫女のことを捧げようとしていることは分かったけれど、他の情報はまだ手に入っていないしな。どうせこのダークエルフ達のことだから、母さんを復活させるみたいな思考で好き勝手やるんだろう。
身体に魔力を込めて、一気に加速する。後ろに向かってクラが魔法を放ち、ついてこれないようにもしていた。
殺さないようにしているのは、俺が望んでいないからだろう。
「しつこいね。あのグランシティダってダークエルフ以外はまいたみたいだけど」
「そうだな。どうやってまこう?」
正直グランシティダ以外のダークエルフは俺のことに気づいていなかった。そんなダークエルフ達が俺達のことを追いかけられるかと言えば否である。
仮にも俺は母さんの息子で、クラは神獣だしなぁ。
それにしてもグランシティダは随分必至な形相だ。美形が台無しである。あとは苛立っているみたい。俺やクラに追いつけないことでプライドでも刺激されているんだろうか?
自分は母さんの特別だって自信満々に言い切るような存在だもんな。俺とクラに置いていかれそうになっているのが気に食わないんだろうな。
俺のことなんか、簡単に始末出来るとでも思ってそう。うん、俺とクラの身に何かあったらまずグランシティダの人生の終わりそう。母さんブチ切れ案件だ。父さんが絶対に悲しむしなぁ。
「僕が大きくなって乗せる?」
「いや、それは却下でかなり目立つし、逆に逃げづらくなりそう」
しかしこの世界にきてから体力づくりをきちんとしていて良かったかもしれない。そういう地道な努力をしていなかったら俺はすぐに捕まってしまっていただろうな。そうなったらどうなったものか分かったものじゃない。
それに異世界にきてすぐにグランシティダに関わらることにならなくて良かったとも思う。
今だからこそ遭遇して問題なく逃げられているけれど、来てすぐだったら捕まってそう。
「それにしてもしつこいね」
「うん。凄くしつこい」
いい加減諦めたらいいのにずっと俺のことを追いかけてばかりで、本当にうんざりする。
後ろに向かって魔法を放つ。殺傷能力のないものにはしている。グランシティダを殺したいわけでは全くないから。
とはいえ、流石ダークエルフの中でも長生きしているからかなんというか、普通のダークエルフよりもやっぱり力が強いらしい。俺が足止めになって欲しいと放った魔法でもなんなく対処していたりもしていた。
……なんというかあれだよな、力がある思い込みの激しい存在って困るよなぁ。
俺はそんなことを思いながら、遠い目である。
「あれは簡単には死ななさそうだから、ちょっと強めの魔法使ってもいい?」
「んー、まぁ、いいか。結局死んだら死んだだし。そもそも自分の力に自信ありそうだから、なんとか死なないように対応ぐらいは出来るだろう」
なんだかずっと追いかけられ続けるのも疲れてしまう。俺は男に追い回されて喜ぶ趣味はない。そういうわけで、クラに魔法を使ってもらった。
後ろのほうに大きなつららが出現する。そして鋭くとがったそれが、グランシティダを狙っていく。凄い命中力だ。グランシティダを明確に狙っている。
――これ、あれだよな。
相手がグランシティダじゃなくて普通のダークエルフだったら間違いなく命を落としていただろう。神獣であるクラの魔法なので、それも当然だ。
クラが本当に殺すつもりで行動していたら、グランシティダだって死んでもおかしくない。まだクラは俺の殺したくないという希望を聞いて手加減をしてくれている。きっとグランシティダからしたら、手加減をされているなんて思ってなさそう。というかプライドが高いなら、逆切れでもしそうなイメージはある。
流石にクラの魔法を受けてグランシティダは足を止めた。俺とクラはその隙にその場から去った。そして姿を隠す。
しばらくグランシティダは俺達のことを探していたみたいだけど、なんとかまけたようだ。
俺はほっとして、一息をついた。
次はグランシティダ達の狙っているという伯母さんの巫女について調べてみることにした。




