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薄井君は召喚されたので異世界を漫遊する~家族の秘密を知った件~  作者: 池中織奈


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ダークエルフ種に纏わること ⑤



 母さんって父さんが少しでも生物に対して、関心を持つだけだけでも嫌がるタイプである。寧ろクラに対しても「博人のことを取らないでよ」なんてよく言っていたし。それこそどんな生物でも父さんが可愛がったりしたらそれはもう嫌がる。

 ――だから、母さんは父さんに浮気を疑われるような真似はまずしないだろう。



 ダークエルフであるグランシティダに関心の一つも持とうとしないのはそれが理由だろう。母さんは父さんからの信頼を失うことを一番嫌がっている。なんか、父さんから嫌悪感でも持たれてしまったら、母さんはショックを受けて世界でも滅ぼしてしまいそうなイメージ。




「ノースティア様、なんとおいたわしい!! 私はかのお方にお会いしたことはありませんが、グランシティダ様にまで助けを求められるなんて余程の窮地なのでしょう」

「私どもはグランシティダ様がノースティア様への再会が出来るようにこの命を賭けてでも全力を吐かせていただきます!!」



 ……重くない? 命なんて賭けられても母さんは「ふぅん」ぐらいしか言わないぞ? 誰かが自分のために命を落としても、それはそれで問題ないとそう思ってそう。神っていう立場だからこそ、誰かから何かを貢がれることは当然と思っていそうな気はする。うん、母さんだしな。



 というかあれなのかな、ここの人達からしてみればグランシティダの助けをしたら母さんのためになるとかそういう思考を持ち合わせたりするんだろうか? そんなわけないし、そもそも母さんのことを信仰することは自由だけれども、それで母さんに何か求めているっていうのもおかしな話な気にもなる。




「ノースティア様をお救い出来た暁には、お前達の名をノースティア様に伝えることとしよう!!」

「ありがとうございます……!! 私なんぞがノースティア様に名前を憶えていただけるなんて、本当に喜ばしいことです」

「ノースティア様が私達の名前を覚えてくださるだけで、命を失ったとしても後悔はありません!!」




 いやいやいや、母さんは塵芥としか思っていない人族の名前なんて覚えないだろう。あとはただはた迷惑なことでしかない。

 というか、あれだよなぁ。神様ってかなり長生きするはずだし、その長い神としての生の中で、グランシティダのことも、他のダークエルフのことも、母さんにとっては覚えているに値しないって判断されそう。

 そう言う人だもんなぁ、母さんって。






「ノースティア様を救うためには、特別な魂を捧げる必要がある。人間の中には、あの忌々しい光の女神イミテアの巫女と呼ばれる存在が居る。その魂を捧げたら、きっとノースティア様は喜んでくださるだろう」



 喜ばねぇよ。

 思わず口に出して突っ込みそうになった。



 うーん、やっぱりこのダークエルフって自分では母さんの特別だって思っているだけで全然そんなことはないんだろうなぁ。母さんが伯母さんと仲良しだってことも知らないっぽいし。

 というか、母さんさ、多分、色んなことを語らずに好き勝手やっていたんだろうな。母さんが伯母さんと仲良しなことって明確な事実ではあるんだけど、周りにわざわざ広めることでもないって思ってそう。




 母さんだしなぁ……。

 忌々しいなんてそんなの母さんの前で言ったら「何言っているの?」って言われて終わりだ。

 母さんって伯母さんのことは姉として尊重はしているけれども、それだけなんだよなぁ。伯母さんが神様で、自分の助けがなくてもどうにでもなるって信じているからこその放置しそう。

 あとはいちいち、母さんと伯母さんの関係性を人族に語る意味もないって思ってそうだしな。



 なんだろうなぁ。

 伯母さんの巫女なんて呼ばれている存在だと、伯母さんにとって特別な存在ではあるんだろうか。

 でも伯母さんって母さんのことは大切にしているから、母さん関連で人族の一人がどうにかなったとしてもなんか許しそうな気がする。母さんと伯母さんの間で価値観の違いとかで大喧嘩することとかあったら、大変だろうな。

 何だかんだ伯母さんは母さんのことを可愛がっているというか、大切に思っているからこそ今の状況だろうし。本当に神同士で争いあいとかあるなら、もっとこの世界って殺伐としてそう。



 そういう神々の事情などを把握もせずに好き勝手口にしているんだから、なんだかなぁって感じ。




「咲人、どうする?」

「とりあえず伯母さんの巫女を生贄に捧げるのだけは止めたいかな。母さんの邪神呼ばわりに歯車がかかってしまうし」

「まぁ、そうだね。咲人は乃愛のことが大好きだよね。別に乃愛は周りから邪神って言われても気にならなさそうなのに」

「母さん自身は気にしなくても俺は嫌だ。というか、そんなもの母さんは受け取りたくないだろうしな」


 うん、こいつらのやろうとしていることって押し売りでしかない。



 そんなことを考えていたら――、



「そこに居るのは誰だ?」



 声をかけられてしまった。




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