ダークエルフ種に纏わること ②
母さんは既に邪神呼ばわりされていて、闇の女神として伯母さんとは対極の位置にいる。信者以外の人族は基本的に母さんに対して恐れを抱いているからなぁ。崇拝とかそう言うのじゃなくて、明確な畏れというかなんというか……母さんってそういう女神だ。
実際に気に食わない人に関しては、容赦ないから残っている逸話も本当のことだろうなとは想像出来るから恐れていても無理はない。
母さんって優しくはない。ただ考え方が一貫していて、怒らせてはならない女神であるというだけの話。
母さんって万人に好かれるような女神では決してない。そういう性格をしていて、俺はそのことをよく知っている。産まれた時からずっと知っている母親だから。
……まぁ、この世界での母さんについては俺よりもこの世界で生きている人々の方がずっと知っているんだろうけれど。
というか地球に居た頃から母さんは独特の雰囲気を持ち合わせていて、どんな相手にもいつも通りに接していた。
思えば母さんが美しい見た目をしていたり、にじみ出る特別さがあるのか少し地味に装っていても声をかけられることはめちゃくちゃあった。
「話が通じればいいけれど、そうじゃない可能性の方が高いでしょうね。まずもってして、サクトが息子であることを信じなさそうだわ」
「あー、うん、まぁ、下手に母さんと身近であると本人が自覚していればいるほど信じなさそうではある。俺じゃなくて姉さん達が居たら別か」
「いえ、仮に例の自身がノースティア様の特別な存在であると自覚している存在であればあるほど、誰が子供を名乗ったとしても信じない気はするわ。だってそれだけ自惚れているのだから」
フォンセーラが淡々とした様子でそう言った。
自惚れか。……確かにグランシティダは、母さんにとって自分が特別な存在であると自負しているらしい。だからこそ、母さんがこの世界に戻ってくるのならば、きちんと連絡をもらえるのではないかとか、結婚したり子供が産まれた時は教えてもらえるのではないかって勘違いしている恐れは確かにある。
妄信的で、信じ切っているからこそ、そういうこともありえそう。
俺や姉さん達が居たとしてもそうなのか。うん、命知らず。姉さん達って、そう言う態度されたら絶対に不快になるしな。というかあの二人も母さんに似ている部分はあるから、すぐに粛清でもしそう。
俺には滅茶苦茶優しい姉さん達だけど、誰にでも優しいわけではないからなぁ。
「あれか? 神と関わっているからこそ、ただのダークエルフなのに自分が神に近い存在だとか思っている感じかな。なんかそもそも母さんに特別に思われているって勘違いしている時点でかなり傲慢だからなぁ……」
ダークエルフはどれだけ長生きしていようともあくまでダークエルフである。もしかしたら世の中には神に至りそうなぐらいに力を持つダークエルフが居るのかもしれないけれど、そのダークエルフって長い間生きていて神になってないわけだよなぁ。
……というか、人族から神って、簡単になるものなのか? 多分、そういう神になった人っているんだろうけれど。この世界の神話について俺は詳しくないからちゃんとは知らない。
俺は神の子供だから、種族的に半神って枠組みにそのうちなりそうだけど、普通は人間って神に至れないだろうし。
「神の意思は、下界の人族が考えるべきことではない。僕たちのしなければならないことって、従うだけ。ノースティア様の信者を名乗っておきながら、寧ろ迷惑をかけるのは僕も止めたいかな」
「まぁ、そう。というかうーん、どこかのタイミングで俺はグランシティダってダークエルフには関わることにはなるとは思うから、会うなら早めの方がまだ手遅れにならなくていいか……?」
俺は旅をする中で神様関連の出来事に散々あってきた。……多分、旅をしていたらそのうちグランシティダには遭遇しそうだなっては思う。
俺は母さんの息子であることはなるべく大っぴらに言うつもりはないけれど、バレる時はバレるしなぁ。
俺が母さんの息子だって知ったら、多分今以上に神様とか、神の信者とか、色んな人たちが俺に関わってきそう。考えただけでうんざりするからやっぱり基本的には普通の人間として旅は続けたいものだ。
遅かれ早かれ会うのだというのならば、早めにあっていた方がまだ傷は浅そう。母さんを復活させるとか、そんなことをほざいているらしいし。そういえば特別な魂云々って話を聞いたからな……。なに、生贄でもしようとしているの?
……それこそ人を殺して、それを捧げるとか物騒なこともしてそう。勝手にやるのは……俺の目の前じゃないなら好きにしたら? とは思う。目の前でやられたら止めるけれど。
でも母さんを理由にしてやられるのが嫌なんだよな。
「よしっ、とりあえず俺、目撃情報あるところ行ってくる」
そして俺は早速、クラを連れてダークエルフ達を見に行くことにした。まずは情報収集からだ。




