ちょっとしたお金稼ぎをする ⑨
宿へと戻ってフォンセーラやノスタに伯母さんの娘を名乗っていたエルフの話をしたら、二人とも憤慨していた。
母さんの息子である俺に迷惑をかけたエルフのことが嫌だったようだ。というか、母さんの信者として比較的真っ当に生きている二人は、神本体の迷惑を考えずに好き勝手している人が不快なのかもしれない。
それはそうだろう。
俺だって少ししか関わりのない伯母さんの名をかたって好き勝手しているエルフに大分嫌な思いをした。信仰心とかは俺にはないけれど、伯母さんの名で色々起こしている連中ってあんまり好きではない。
「それにしても私はそのエルフに気づくことが出来なかったわ。やはり神の力は偉大なのね……。サクトと一緒に旅を続けるのならば、そういうものに気づけるようになりたいものだけど」
フォンセーラはそんなことを口にした。
フォンセーラは気づけないことを当たり前だとは思っていないようだ。神の息子と、それ以外。それならば、気づけないと諦めてしまうのも当然と言えば当然だ。だけど、フォンセーラはそうではなくて気づけなかった自分にいら立ちを感じているようだった。
それは何だかんだ、俺と同じ土俵では考えてくれているのだろうとは思う。
そのことは正直有難い。なんというか、フォンセーラは俺のことを神の息子として認識しているし、それなりに特別視はしているとは思う。ただし俺はフォンセーラの崇拝する神本人ではないのでそのあたりの感覚は別なんだろう。
下手に持ちあげられすぎてもやりにくいからなぁ……。でもあれだな、フォンセーラも俺と同じように道具を使われても気づけるぐらいの実力者になってもらえた方が俺も助かる。一人……いや、クラもいるから一人と一匹か。それだけで対応が出来ない場合もきっとあるだろうから。周りがこうやって努力しようとしてくれることは有難い。
「神の与えた道具にただの人間である僕たちが気づくことなど難しいんじゃないか?」
「ノスタ、そうはいっても気づけなかったら私達はただのサクトの足手まといでしかないじゃない。ただでさえ、私達は同行する必要もないのにサクトについていかせてもらっているのよ?」
「そ、それは確かに……」
まぁ、うん。なんだかんだ俺はクラと二人でも旅には出かけられるだろう。俺はフォンセーラやノスタと一緒に旅をすることを楽しんでいる。いなくても旅は続けられるけれど、居た方が助かっている面はある。
別にノスタの、神の関わりのある道具などに自分たちが気づくことなんて出来ないのは当然という考え方は理解は出来る。
俺が母さんと父さんの息子じゃなくて、神のあれこれに気づけない状況だったらどうしていただろうか? フォンセーラやノスタと同じように神の関係者に出会ったら、そういうことに気づけるようになろうとするだろうか。
……なんか結局その神の関係者に対してどういう感情を抱いているかによりそうだなぁ。
フォンセーラやノスタって、俺が母さんの息子だからこそ一緒に同行しているだけであって、俺自身に対して特別な感情があるかどうかっていうと別だろうしな。
友人かと言えばそうではなく、あくまで俺達は旅の同行者という感じ。人によっては神の関係者について旅をしているという事実だけで満足するだろうし、旅が終わった後は「良い思い出があった」と振り返るだけだろう。
……俺が人間という枠組みから外れて、安全に神側に振り切れたらどうなるんだろうか? 今の俺は同行者であるフォンセーラやノスタのことを気に掛けているし、何かあったら助けようと思うぐらいの情はある。
母さんとか伯母さんとかは神として長く生きているのもあって、寿命の短い人間のこととかあんまり気にしてなさそう。特に母さんはそう。
でもなんか人のことを気にしないようになるのは、ちょっと嫌かもしない。何れ俺が神寄りに変わるとはしても、俺が母さんの息子でも……それでも周りを大切にはして生きて行きたいかもというのが本音。長生きするにしても、人がなくなった時とかに、気にしないってのも違う気がするし。
「よし、僕も神の道具に気づけるようになるべく頑張ろう。もし気づけるようになったら、ノースティア様に声をかけてもらえるかもしれないし……!」
「いえ、ノースティア様は私達が力をつけたところで、気になさらないわ。そもそも声をかけてもらえるかもしれないと期待するのが間違っているのよ。そんな邪な考え方を抱いたまま信仰しても良いことはないわ。寧ろノースティア様はそう言ってすり寄ってくる相手は嫌がるでしょう」
「……そ、それもそうか。なら、そう言う気持ちは隠して行動しなければ」
「隠してというより、抱く方がどうかと思うわ。サクトだって、自分の母親に近づきたくて仕方がないって信者は嫌でしょ」
ノスタとフォンセーラがそんな会話を交わしている。……まぁ、そもそも俺達が共に旅をしているのは、俺が母さんの息子だからでしかないのでノスタの気持ちも分からなくはない。
ただそればかり口にされたら流石にうんざりするだろうけれど。




