ちょっとしたお金稼ぎをする ⑥
(あー、やっぱり? でもこのエルフの父親は、伯母さんの娘だって言い聞かせていたっぽいですが。あと伯母さんと身体の関係があったって)
『誰でしょう? いちいち覚えてないわ。ちょっと思い出します』
いちいち覚えてないとか言っているんだけど、この伯母さん……。俺が想像している以上に性に奔放すぎる。なんかこんな話を聞くのはなかなか気まずすぎる。
『ああっ! 確かに一度寝たことはありますよ。あまりにも情熱的に頼まれたのでつい……』
(ええっと、その辺の生々しい話はやめてくれる? というか神様って、一度で子供出来たりするものなの?)
『そもそも基本的には余程お気に入りの相手じゃなければ子供が出来ないようにしてから身体を重ねますよ。そんなに子供ができやすかったら半神で溢れかえって大変ですから。流石に自分の子供には責任を持つべきなので、ぽんぽん子供は作らないようにとは神界では言われていますわ』
(そうなんだ……。ちなみにだけどこのエルフが持っているらしい道具って伯母さんが渡したやつ?)
本当に生々しい話を俺にしないでほしい。伯母さんの言う通り、神様が子供をひたすら産んでいたら半神が溢れかえって大変だろう。
特に伯母さんって、情が深い方で身内には甘そうだし。そもそも流石に子供のことは全員把握していると思うんだよな。
だから、伯母さんが娘ではないと言った段階で目の前のエルフはそんな存在ではないのである。
『道具? ちょっと待ってください』
伯母さん、長生きして色んな人と関わりすぎているせいですぐに思い出せないのだろう。俺も異世界にきてそこまで長期間経っていないのに、伯母さんが人とかなり関わって生きているのは分かるし。
『そうですね。あの道具は餞別として渡したものです。どうしても私と過ごした時間が夢ではないという証が欲しいなどと言われてしまいまして……それならばあげようかと渡したものね。あの頃、神の一人がエルフに迷惑をかけてしまったのもあり、その補完の意味もありましたね』
(そうなんだ……。伯母さんって、その辺しっかりしているよね。なんだかんだ他の神様がやらかしたことに対しても責任負っているし)
『それは当然です。私はこの世界で最も信仰を集めている神なのですよ。他の神が何か起こしたことで、私の評判まで下がるのは望ましくないわ。それに神に泣きつかれることもよくあるもの』
伯母さんは俺が思っているよりもずっと、周りから頼られている立派な神様であるらしい。俺に対しての態度ってかなり身内に向けたものだろうしな。
きっと他の神様に対してはもっと威厳のある態度なのだろう。それに神界だとかなり色んな神に慕われているようだ。
……母さんが邪神だとか、闇の神だとか言われても神の世界で受け入れられているのは、伯母さんの働きもありそう。どちらにしてもどんな神が束になって母さんに何かしようとしても、実力では負けるだろう。母さんはそれだけ神界の中でも特別な存在らしいから。とはいえ、伯母さんが母さんのことを妹として可愛がっていなければ、もっと神界で浮いた存在になっていたのではないかとは思う。
母さんは伯母さんのことを何だかんだ気に掛けてはいるのも、伯母さんにそういった借りがあるからなのだろうあ。
(出来ればあの道具全部没収してくれないですか? このエルフ、自分が伯母さんの娘だって思い込んで、伯母さんからもらった道具を使ってかなり好き勝手していたみたいだから。俺もなんか襲われたし)
『はい? なんでです?』
(伯母さんからもらった道具で、周りから認識しないようになっているはずなのに俺が気づいたから。人間のことを劣等種と見下しているみたいで、俺のことを気に食わないって襲ってきた)
俺がそう言うと、伯母さんの声がやんだ。驚いているのだろう。まさかそのように神からもらった道具を悪用されるとも思っていなかったのかもしれない。
伯母さんって、人族のことがかなり好きだ。彼等に寄り添ったあり方を見せ続け、その結果、誰よりも信仰心を集めている。気に入った人族とは、身体を重ねたりもするし、自分を信仰する者達のことを大切にはしている。
――それでもそんな伯母さんの中でも優劣というものは存在する。伯母さんはすべてに対して平等というわけではない。
『……それは駄目ですね。私の甥に対してそんなことをするなど許せません。どうやら選民意識があるようで、人間よりもエルフの方が優れていると思い込んでいる? どちらにしてもサクトはただの人間に見えても、あの乃愛の息子ですからね。少なくともただのエルフよりもずっと特別な存在ですし、寧ろ神を信仰しているのならば襲い掛かるなんて持っての他です』
伯母さんは俺とエルフの間で何があったのかをちゃんと読み取ったらしい。何だか声が怒っているようには見える。
自分がエルフに渡した道具のせいで、甥である俺が傷つくのは嫌だと思っていたのだろうな。
『道具は没収です。甥を傷つけるようなものに持っていてほしくないので』
――冷たい言葉が響くと同時に、目の前のエルフがみるみると目を見開く。おそらく今、この瞬間、道具が取り上げられたのであろう。




