ちょっとしたお金稼ぎをする ⑤
「なななななななななっ!! なぜええええええ!?」
いちいち反応が煩すぎる。まさか、自分の一番の魔法がクラに対処されると思っていなかったらしい。
どうやら自称伯母さんの娘らしいけれども、そう言い張るだけの実力はあるのだろう。道具便りかもしれないが。
「僕にきくわけないじゃん。ところで神様の娘だって自称止めた方がいいよ? 僕はね、お前の言う通り神獣であるから、相手が神の血を引いているかどうかぐらい分かるよ。見た限り、ただのエルフじゃん」
クラはとても面倒そうな声でそう言った。
なんかクラの様子を見ていると、このエルフは伯母さんと全く関わりなど実はないのでは? とそう思った。だってクラって家族を大切にしているのだ。
幾らエルフが気に食わなかったとしても本当に俺の従姉妹だったならば、もっとちゃんとした対応をするはずだから。
というかクラの言葉に更にエルフはヒートアップしている。どれだけ癇癪を起こせば気が済むんだろうか? 伯母さんの娘だって思い込んでいた理由も不明だし。
「クラ、ちょっと話聞きたいから大人しくさせられる? 殺したり、精神に異常を持たせては駄目だよ」
俺がそう言ったら、クラは少し面倒そうにしながらも了承してくれた。
クラは身体から魔力を放出する。うん、巨大な黒猫が魔力を放出している姿はかなりの迫力がある。かっこいいな。普段は小さな黒猫の姿で過ごしてもらっているけれど、たまにはこうやって巨大な姿で運動をさせるのもありだろうか。クラがストレスをたまらないようにした方がいい。なんて、俺は呑気に考えていた。
そうしている俺の目の前で、クラはエルフを魔力で拘束した。クラは中々容赦がなくて、喚こうとしたらすぐさま拘束を強めた。そして有無も言わさぬ様子でエルフへの対処を淡々と行っていた。こういう容赦のない所、母さんに似ているよなぁ。
「ほら、咲人。これで話が聞けるよ」
「ありがとう。クラ。ごめんな、面倒なことさせて」
「全然いいよ! それにしてもなんで神の娘だなんて自称していたんだろうね? そんなことをしても分かる人には分かるのに。まだ自称するだけならいいけれど、このエルフ、咲人に手を出したんだもん。絶対他の人にも迷惑かけているよ」
クラは不機嫌そうにぷんすかしている。伯母さんに対してクラの感情は、母さんの姉という認識しかないだろう。ただそれでもそんな伯母さんに迷惑掛かっているのも嫌なのだとは思う。
結果的に俺への大迷惑になっているし。
「それで、なんでお……光の女神の娘だなんて言っているんだ? クラ曰く違うらしいけれど」
「でもお父様が私はイミテア様の娘だと!! ただの劣等――」
「ねぇ、咲人に舐めた口を利くのはやめてよ。もっと痛い目みたいの?」
俺に対して喚いたエルフは、クラから黙らせていた。俺にそう言う態度をしたら、クラが怒るのもすぐに分かるだろうに。なんか、俺、エルフってもっと知的なイメージだった。あと静かで、森の中で生きているような……。まぁ、それはあくまで地球で読んだファンタジー小説とかから分かる偏見でしかないわけだけど。
「うぐっ………わ、私はイミテア様の娘だと言われて育ったの。それにお父様がイミテア様から受け取ったという道具も持っているわ。お父様はイミテア様と肌を重ねたことがあったの。だから、私は……イミテア様の娘なの!!」
正直聞いたところで、ふぅん? という感想しかわかない。だってエルフの語った言葉は、何一つ、彼女が伯母さんの娘であるという証拠にはならないのだから。
だってあくまでエルフの父親の証言と、残っている道具しかないのだ。それでどうして伯母さんの娘だなんて言い張れるのだろうか……。
でもエルフの父親と伯母さんがそういう仲だったかと言えば、それはあり得るとは思う。だって伯母さんって、聞いている限り色んな人と関係を持ってそうだし。
おそらく特定の夫は居ない。……神様だから寿命もないにも等しいしなぁ。
それなのにそれだけ多くの人と関係があれば、こういう問題が生じるのもあり得るだろう。
でもまぁ、伯母さんがまだ女神で良かったかも。男神だったら、何処で種をまいてきたかも分からないし、余計にややこしい。いや、でも神界に居る神様だと女遊びが酷い存在もきっといそうだよなぁ……。うわっ、関わりたくないってそう言う気持ちしかわかない。
「それって、光の女神の娘だって証拠にならないと思う。それに光の女神があなたに会いに来たことは?」
「……ないわ。だからなんだっていうのよ!! お母様は忙しいのだから、仕方がないじゃない!!」
うーん、やっぱりなんか違う気がする。だって伯母さんって、自分の子供の事は流石に認識している気がするんだよな。
「ちょっと待ってて」
俺はそう言うと、伯母さんに話しかけることにした。
(伯母さん、ちょっといい? 今、目の前に伯母さんの娘を名乗るエルフが居るんだけど)
声をかけたらすぐに返事がする。
『私の娘? いえ、それは私の娘ではないですね』
その答えは、想定通りのものだった。




