ちょっとしたお金稼ぎをする ④
クラは元々、ただの黒猫である。母さんと父さんに拾われて、俺の家の家族になった。産まれた時からずっと傍に居た猫。
この世界にやってくるにあたって、母さんの神獣なんてものになった存在。
クラは気まぐれだったり、あまり周りに関心がなかったりもする。それでもクラはとても家族思いだ。
俺達家族のことを大切にしているからこそ、エルフに対してお怒り気味である。
「な、なによ、あなたは!!」
大きな声をあげられている。クラは冷めた目でエルフを見ていた。あんなに冷たい表情のクラを見ることはなかなかない。流石にクラの存在に警戒しているようだ。
それでいてクラは巨大化している。大きな黒猫。明らかに普通ではない存在を前にエルフは思う所もあるのだろう。
「まさか、神獣? なぜ、劣等種なんかを庇うの?? 神獣は神のためにあるべきでしょうが!!」
驚愕した表情を浮かべたエルフは、嫌悪したようにクラを見る。うーん、本当にびっくりするぐらい自分本位な考え方をしているようだ。俺のことをただの人間だと思い込んでいるからかもしれないけれど、別に神獣だろうが神だけのために行動しなくてもいいだろうに。
というか、母さんはクラが誰かを助けようとしたり、贔屓したりしても特に気にしないし。
「何言っているの? というか、お前、なんなの? 神のことを語っているけれど、エルフこそただのエルフじゃん」
クラがそう口にすると、エルフはカッとした表情になる。クラはエルフに対して、好感度が著しく下がっているようだ。だからかなり荒い口調で話しかけていた。エルフは大変プライドが高そうなので、そんな口調でクラに話しかけられることが我慢あらないようだ。
というかクラにただのエルフ呼ばわりされているけれど、どうなんだろう? 実際は神の血を引いていないってことか? それとも祖先が神の血を引いているだけで凄く血は薄くなっているとかなのだろうか。分からない。
「ただのエルフですって!? 神獣とはいえ、言っていいことと悪いことがあるのが分からないの? この私は光の女神であるイミテア様の娘なのよ!?」
大きな声でそう言われる。うーん、伯母さんの娘か。本当にそうならば、従姉妹ってことになって滅茶苦茶嫌だなとそう思ってしまう。神の世界だと親戚付き合いとかはしなくてもいいかもしれないけれど、もしかしたら長い付き合いになるかもしれないんだろう?
本当に伯母さんの娘だったとしても、此処まで偉そうにされると良い気分はしない。
俺が母さんの息子であると知っても、同じような態度をする可能性も十分にあった。
「はぁ? 何を言っているの? そんなわけないじゃん。虚言癖ばかりあるのって痛いよ?」
……あ、でもなんかクラが虚言とか言っているから、やっぱり伯母さんの娘ではないのかもしれない。クラって母さんの神獣って立場だからこそ、伯母さんの血を引いているかどうかって分かるだろうし。
クラの言葉を聞いたエルフは魔法を行使し、無数の光の弾で攻撃を始める。なんというか、神全体に対する敬意なのがあるのならば、誰の神獣であるか分からなかったとしてももう少し対応をよく聞くものじゃないだろうか。
というかこのエルフ、自分にとって意にそぐわないことをことを言う存在の言葉を全く聞く気がないとかそんな感じか? 毎回癇癪を起されたら、その言葉を受け入れるしかないだろう。
伯母さんの名を使ってそんな風に好き勝手するのはやめてほしい。もちろん、伯母さんが認知していて、許可しているものなら別に俺は気にならないけれども。
伯母さんは本当に親しい身内相手には、俺のこともちゃんと言っていると思うんだよな。俺や姉さん達のことを気に掛けてくださっているわけだし。
クラはその光の弾を全て凍らせていた。おおっ、鳴き声を上げてその瞬間、全て凍らせるとかかっこいいな。
俺はそんなことを考えながらすっかり傍観者気分であった。
クラ一人でも明らかにどうにか出来そうだったから、手を出してはいないのである。
クラに魔法を凍らせられ、流石にエルフの表情は硬くなる。まさか、自分の魔法が通じないとは思っていなかったらしい。
エルフって誰もがこんな風に魔法が上手なんだろうか。神の血を継いでいるかは定かではないけれど、かなり魔法は得意そうだ。あ、でももしかしたらこれも何かしらの道具を使っている結果なのかもしれない。
「たまたま対処出来たからって、調子に乗らないで!! 誰の神獣なのかは知らないけれど、お母様の娘である私があなたなんかに負けるわけないのよぉおお!!」
急に叫ばないでほしい。クラから、伯母さんの娘ではないって発言されているのに認める気は皆無のようである。
俺は煩いなと思いながら、その様子を見守っている。
エルフが魔力を込める。先ほどよりも強大な魔法を使おうとしているようだ。その様子を俺とクラが黙って見ていたのは、彼女の一番の魔法を対処し、心を折った方が煩くなくなるだろうと思ったからである。多分、クラも同じ気持ちな気がする。
そして放たれた光の刃。巨大なそれを、クラは真正面から相殺した。




