SHIPS
「イカルガ様の全ては『箱庭』にある。そうじゃな、カエデちゅわん。」
「爺ちゃん!『箱庭』を知ってるの?」
「ああ、わしの師匠は響という天狐じゃ。」
「えっ、響さんの弟子・・・あっ!あれ、爺ちゃんだったの?」
「父上、初めて聞く話ですが、『箱庭』とは?」
「カエデちゅわん、話してよいかの?」 僕は頷いた。
「バートよ、わしは時空魔法を得意としておるが元々は使えなかったんじゃ。
腕力だけじゃったな。母さんと出会う前じゃったんだが、ある戦で死にかけて
な。その時、師匠が助けてくれたんじゃ。『箱庭』でないと治せないと
言ってな、大怪我をしてるわしを連れていってくれたのじゃ。『箱庭』は
イカルガ様のエクストラスキルで、異空間に帝都クラスの街がある。
そこで、イカルガ様の従者の皆様が暮らしておったんじゃ。」
「そんな事が可能なのか・・・。」
「可能もなにも、わしは怪我が治るまで実際、住んでおったしのう。その時に
怪我を治すついでに師匠が時空魔法を教えてくれたという訳じゃ。」
「爺ちゃんはあの時の若者だったんだね。妖怪だと思ってたよ。
たしか、響さんの使いっぱをしてたような・・。」
「カエデちゅわん、それは言わない約束じゃよ。」
「話がでかすぎて、ついてけねーな。ようは今カエデはその『箱庭』が
使えないって事か?」
「そうだよシュリ叔父さん。魔力が全然足りないんだ。」
「考えはあるのか?」
「う~ん、幸いにして天災級は九尾で今は三尾だから、国ごと魅了して戦争を
仕掛けるまではできないと思う。実際、前の世界は世界大戦の一歩手前だった
からね、今は怪我を治すのに集中してるからしばらくは襲ってこないから、
その間に魅了への対策と、僕自身のレベルアップだね。」
「なんか、ゆるいわね。そんな感じでいいの?」
「焦ってもしょうがないし、イカルガに比べればゼロだけど、今の僕でも三尾
には遅れをとらないよ。問題は魅了だね。」
「そうなのね。手伝う事は?」
「今のところは大丈夫。あっ、春さんは僕らといっしょに暮らすから許可を。」
「わかった。」
「カエデよ、お袋は鈴音さんという人の弟子と聞いてるが、親父も誰かの弟子
だったりするのか?」
「ああ、それは朱雀さんという不死鳥が師匠だのう。清春とツムギと出会った
のもその頃じゃ。カエデちゅわんは九尾が天災級といっとったが、『箱庭』
にいる人達は1人1人が天災級じゃ、それが帝都の人口並みにおる。」
「・・・・・。」
「まあ、今は姉さん達のドラゴン討伐の祝いが先だよ。映像みる?」
「「見るわ!」」
「了解、カモナ。」
「かしこまりました。」
ご飯を食べそこなったから、そのままカモナでみんなで夕食。カモナが2人、
1人はセバスさんと呼ぼう。それと、諭吉・・・。また始めたのか・・。
「カエデ・・諭吉は何をしてるんだ?」
「カモナに弟子入りしたみたい。カモナが立派な執事に育てあげるって
はりきってるよ。」
「誰の執事になるんだ?」
「さあ?バート叔父さん、そういえばアリ姉がギルマスと交渉してて驚いた。」
「んっ?どうしてだ?」
「ああ、カエデちゅわん。ベル達のパーティの対外的な交渉役はアリスじゃ。」
「そうなんだ、アリ姉は脳筋系だからそういうのやらないと思ってた。」
「本人は面倒な様だが、あれはあれで頭の回転が速いからな。」
「カエデちゃん、あの学年の首席はアリスなのよ。」
「えっ、まじ?てっきりベル姉か華姉かと思ってた。」
「まあ、どんぐりの背比べではあるけどアリス、ベル、華の順ね。」
「へ~、血は争えないって事かな、ボタン先生。」
「そんな感じねえ。」
いや正直、今日いち驚いたよ。春さんの変化より驚いた。
食事も終わり、ドラゴンとのバトルの上映会だ。なぜかBGMまでついていた。
グッジョブ!カモナ。
上映会は大いに盛り上がり、ちゃんとベル姉達の実力で討伐した事を確認できた
ようだ。大人達は祝いをどうする?と話し合いを始め、僕は皆に拡張型の家を
プレゼントする事にした。タスクが追加されたが、こういうタスクは歓迎だ。
小梅が春さんを連れてきたので、みんなに紹介した。
九十九さんの子供版だったので、すぐにみんなは納得した。
「カエデ、明日ドルトの所へ行こうと思ってるのだが予定はどうだ?」
「大丈夫だよ。浮遊サーキッドもできてるし。」
「じゃあ明日、朝食後に出発するから頼む。」
「了解。」
みんなはそれぞれの屋敷へ戻った。
僕達は風呂へ。今日から春さんもいっしょだ。初めは恥ずがしがっていたが、
プールなのを見て納得したのか小梅達と楽しそうにはしゃいでいた。
春さんは変化しか取り柄がないと言っていたが、だめ元で銃と刀とナイフは
作っておこうか・・・。護身用という事にして。一応神器になるし・・。
風呂上りにみんなでアイスを食べ、寝る。
春さんの部屋は用意したが、結局、小梅達に連れられ僕の部屋で寝る事に。
子狐が1匹増えたところで、全然、問題ない。
朝、起きると春さんは僕の足の間に挟まって寝てた。
ルーティンをこなし、さすがに春さんはついてこれなかったが、がんばるそうだ。
朝食を食べ、ミーティング。みんなにも春さんを紹介する。
「春です。よろしくお願いします。」 慣れてるのか、特に質問もなし。
「今日、僕は叔父さん達とドルトさんの所へ行くよ。ミランダさんは今日から?」
「はい、週末へ向け不足してるものを作ります。今日から新人が2人来ます。」
「了解。今日は無理だけど週末までには手伝いに入るよ。」
「俺達はちょっと港町へ、食材を見にいってくるわ。」
「了解。馬車がでるからいっしょに行こう。」
「小梅達は?」
「干物。」
「春さんは?」
「小梅ちゃん達を手伝います。」
「了解。じゃ、そんな感じで、解散。」
僕と諭吉と美月は、そのまま表門の所へ。すでに馬車が停まっていた。
乗り込むと爺ちゃんが空間拡張をしてて、広くなっていた。というか馬車の
広さではない、リビングだ。
「カエデちゅわん!」
「爺ちゃん、広くしたんだね。」
「そうじゃ、港まで2時間くらいかかるからのう。」
「クロス達の卒業式があってな、それに出席する為に帝都へ行く。その時に
試運転を兼ねて船で行こうと思っている。」
「了解。じゃ、僕は父さんの船で行くか、運べばいいんだね。」
「そうしてもらえると、助かる。」
「爺ちゃんは?」
「わしも行きたいのは山々なのじゃが、ヘンリエッタの手伝いがあるんじゃ。」
「ああ、孤児院の移転?」
「そうじゃ。」
「クロ兄達、いよいよ卒業なんだね。」
「そうだな。少しガーネットでゆっくりしてから、神楽へ行くそうだ。」
「むこうに家はあるし、船が完成したら神楽との行き来も楽になるね。」
「そうだな。」 シュリ叔父さんが嬉しそうだ。
そんな会話をしているうちに、ドックに着いた。諭吉達は市場へ。
「お久しぶりです、ドルトさん。」
「お久しぶりです、カエデ様。」
バート叔父さんとシュリ叔父さんは、ドルトさんと浮遊サーキッドの扱いに
ついて話し合うそうだ。それじゃあ、ちゃっちゃっとやっちゃいましょう。
イド君より少し大きい船が4隻並んでいる。微妙にデザインが違うのはそれぞれの
個性だろう。あれ?3隻じゃないの?えっ、爺ちゃんの。了解。
まずは父さんの船から、中は爺ちゃんが父さんのリクエスト通りに拡張していく。
その間に僕は甲板、機関室、船尾の3か所に浮遊サーキッドを転写していく。
これで人工魔石をセットすれば浮くはず。
同じ作業を順にこなしていく。爺ちゃん、すげえな・・よく魔力がもつな。
僕は3隻の転写と、爺ちゃんの船用のサーキッドでへろへろだよ。
それでもなんとか終了し、父さんの船と爺ちゃんの船をアイテムボックスに
入れる。ドルトさんと叔父さん達が戻ってきた。
「話は終わった。浮遊サーキッドはとりあえず機密扱いとする事にした。
現状、それを作れるのはカエデだけだしな。」
「本当に驚きました、カエデ様。ただ説明されて納得もできました。現状、
空を飛ぶ条件がきびしすぎるので、普及させるのは難しいです。」
「確かに、浮遊サーキッドだけじゃ無理だし、人工魔石とステルス素材が
必要だしね。一応、サーキッドの予備は渡しておくから研究してみて下さい。」
「よろしいのですか!燃えて来ました!」
「帝都への出発は、明日の朝にしよう。」
「了解。じゃあ全部屋敷に運ぶね。」 全隻、アイテムボックスに入れる。
「どんだけ!!」 ドルトさんが驚いている。
屋敷に戻ったら、テスト飛行だな。
帰りにみんながいきつけのシーフードレストランでランチ。諭吉達も合流。
「いい牡蠣があった。牡蠣蕎麦を作れる。」
「いいね、じゃあ週末の限定品かな。」
「そうだな、神楽は牡蠣はあしがはやくて無理だったからな。」
「7歳どうしの会話じゃないのう・・・。」
ロブスターうめー!プリップリ!さすがいきつけ、全部旨かった。
屋敷に戻り、早速、飛行テスト。マリア先生とボタン先生も呼んで明日の
フライトの予行練習だ。操縦そのものはIAが居るから大丈夫だろう。
その前にドック作りをしないと。
「ボタン先生、魔力余ってます?」
「大丈夫よ。」
「じゃあいっしょにドックを作ってもらえます?」
「了解。」
ボタン先生と船が5隻くらい停められるドックを作る。水はアクアに頼む。
「ごめんアクア、水おねがい。」
「いいわよ。霊水だけど。」
「げっ!まあいいか。」
「できたよー、飛行テスト開始オーケー。」
僕と爺ちゃんはイド君に乗って、万が一に備える。まてよ、ステルスが発動すると
こちらから見えなくなるのでは?
「カモナ、その辺どうなの?」
「大丈夫です。モニターには映りますので。」 まじ?考えるの止めよう。
カモナのリビングに移り、モニターを追う。インカムは渡しているから会話は
できる。2隻が空に舞い上がった。おお・・・飛んだ・・。
「飛んだのう・・・。」
「飛んだね・・・。」
「すごいのう・・・。」
「すごいね・・・。」
2隻は少しの間、屋敷の上を飛び回り庭に着水。優秀なIAのようだ。
バート叔父さんはルドルフと名付け、シュリ叔父さんは黒翔と名付けた、ププ・・
「いだだだ・・なにずるんでずがあ!」
「いや・・なんとなく?」
「カエデ、これはすごいぞ!魔石のチャージはいるが、自由自在に飛び回れる。
中の広さも父上のお陰で充分だ。」
「じゃあ、明日いけるね。」
「そうだな、予定通り明日、出発しよう。」
「ボタン先生、明日、帝都の屋敷の庭にもドックを作らないと。」
「わかったわ。」
解散して僕はBPOに干物を取りに行く。
「みんな、お疲れー。」
小梅達はハンモックで寝てた。春さんがいない・・。
「春さんは?」
「あそこ。」 えっ!ハンモック・・。好きなのかな・・・。
「干物、取りに来たよ。」
「うん。」
アイテムボックスに大量の干物を入れ・・ほんとに大量。
「納品にいこう。」
「うん。」 散歩がてらゆっくり戻る。
「春さん、どうだった?」
「楽しかったです。それで、あの、私もナイフが欲しいです。」
「了解。一応ナイフと銃と刀を用意するよ。」
「使えるでしょうか?」
「まあ。護身用だから、ゆっくり学べばいいよ。」
「わかりました。」
「ダニエルさん、干物の納品だよ。」
「助かります~、みんなにせっつかれていて。」
「あれ?なんかあったっけ?」
「はい、孤児院の建設が急ピッチで進んでます。」
「そうなんだね。それでパワーチャージか・・さすが婆ちゃん。仕事が早い。」
春さんの口座も作らないと。
僕達はそのまま夕食へ。今夜は春さんの歓迎会も兼ねてすき焼きだ。
子供達だけですき焼きというのも妙な感じだ。しかし、精霊達がさわがしく
飛び回るここでは、さして違和感もない。
「諭吉、明日帝都に行くけど、どうする?」
「仕込みの日の朝までに帰ってくるか?」
「そのつもり。僕もケーキ作りのヘルプに入るし。」
「なら行く。お姉様達にお会いしなければならん。」
「・・・。」 美月を見る、やれやれのポーズをしている。
「春さんはどうする?」
「私が付いて行っても、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だよ。九十九さんに会って話しておきたいし。」
「九十九に・・・。」
「九十九さんまで実は春さんを狙ってるって事はないよね?」
「はい。それはないです。」
「じゃあ、いっしょに行こう。」
「わかりました。」




