HARU
帝都に着いて冒険者ギルドへ行く。ベル姉達はさすがに有名人らしくすぐにギルド
マスターが出てきてくれる。
「おう、嬢ちゃん達。何した?」
「ファイヤードラゴンを討伐したから、報告に来たわ。」
「なっ、なんだってー!マウラの奴か?」
「そうよ。」
「おい、誰か!帝宮に知らせろ!討伐隊が準備してるはずだ。嬢ちゃん達、
間違いないね?」
「ええ、首は落としたけどそのまま持って来たわよ。」
「なんだってー!」
こういう時に話をするのはアリ姉なんだな・・なんか意外。脳筋とはいえバート
叔父さんの娘だもんな。
「ど、どこにあるんだ?」
「アイテムボックスに入ってるわ。ここじゃ、出せないけど。」
「あたりまえだ!こっちに来い!」
裏にある広い場所に連れていかれる。
「ここならどうだ?」
「ぎりぎりよ。カエデちゃん、お願い。」
アイテムボックスから引きずり出す。でかい!こんなに大きかったんだ・・。
この場所でたしかにぎりぎりですよ、よく倒せたな、ベル姉達・・。
「・・本物だ。本物の特殊個体だ!おい誰か、ロイドかツバキを呼んで来い!」
特殊個体?ただ大きいだけじゃないのかな?めんどくさそー、ドロンだ。
「ベル姉、あとは任せていいよね。僕ちょっと九十九さんに用があるから
屋敷に寄ってガーネットに戻るよ。」
「詳しい話は今度ね。ありがとね、カエデちゃん。」
と言って抱き締められた。ウホッ!日に日に・・。
光彩(改)発動!イド君に戻る。
「カモナ、帝都の屋敷へ。」
「かしこまりました。」
「みんな、30分ほど時間もらうね。くつろいでて。」
光彩(改)を発動して屋敷の中へ、解除。
「九十九さんいる?」
「あらカエデちゃんじゃありませんか、どこの暗殺者かと思いましたよ。
ツバキならギルドに飛んでいきました。ベル達がドラゴンを討伐したとかで。」
「そのドラゴンの事で、九十九さんに話があるんだ。ファイヤードラゴンだった
けど、魅了されてたよ。」
「なんですって!玉藻がいたのですか?」
「いや、すでにいなかった。魅了されているドラゴンが火山のエネルギーを
吸収してたよ。」
「そのエネルギーを治療に使うつもりですね。」
「治療が終わったらガーネットの森に隠れている三尾の所へ来る?」
「そうです。今の状態なら私でもなんとかなりますけど、六尾になると
まずいですね。」
「おそらく、今回のドラゴンみたいな事を方々でしてると思うんだ。本来なら
それを阻止したいけど、現状無理だから回復をするっていうのを前提に
動いた方がいいよね。」
「ガーネットの森を、荒らされたくはありませんね。」
「それは僕も嫌だよ。世界樹もあるし、綺麗な所がたくさんあるしね。」
「どうするつもりですか?」
「探さなくても向こうから訪ねてくれるなら、待つよ。その三尾の名前は?」
「春といいます。」
「その春さんを探して、目の届く範囲にいてもらうよ。」
「囮にするのですか?」
「いや、その前に決着をつけるよ。滅していいかな?」
「私には、はいとは言えないですね。元はひとつですし。」 これは月詠案件だ。
「まっ、すぐには来ないでしょ。それまでに対策は考えるよ。」
「わかりました。私も情報収集します。」
「お願い。じゃあ、ガーネットに戻るから母さんによろしく伝えて。」
イド君に戻る。「お待たせー、帰ろう。」
「カモナ、朝に着くように調整して。」
「かしこまりました。」 ケーキとコーヒーで休憩。
「諭吉、玉藻って知ってっか?」
「ああ、神居の人間ならみんな知ってんだろ。」
「その玉藻が、ガーネットの森にいる三尾の春さんってのを狙ってる。」
「まじか!次は大妖怪が相手なんだな・・・。」
「まあ、すぐに来るってわけじゃないけどな。今、怪我を治してるそうだ。
今回のドラゴンの件もそれ絡みかも。」
「まったく・・お前といると退屈しないで済む。ツムギ様がおっしゃっていたのは
こういう事か・・・。」 たぶん、違う。
「弱体化してるとは言え、三大妖怪の一角だ。対策を練っておかないとな。」
「さらなるパワーアップか?」
「そうなるな・・。他にもいろいろ考えてみるけど。」
「わかった。修行するわ。」
まずは魅了をどうにかしないとな、幸いガーネットの森にはいろいろ揃ってる。
「小梅、森で三尾の狐を見なかった?」
「見た。っていうか友達。」
「えっ!そうなの?」
「食堂にも食べに来てる。」
「知らなかった・・・。」
「変化の天才。」
「戻ったら、会えないかな?」
「聞いてみる。」
「よろしく。」 探す手間が省けた。
さて、夕食まで時間があるな。
諭吉はカモナ師匠にコーヒーの淹れ方を学ぶそうだ。何目指してんだ?
小梅達は森の部屋で昼寝をするそうだ。僕はアトリエで浮遊サーキッドを
作ってしまおう。大き目のが9枚だから、そこそこ時間が掛かる。
準備をしてると、小梅から念話が入る。
「会うって。」
「へっ?誰が?」
「春さん。」
「えっー!ここにいるの?」
「森の部屋。」
「カモナ、知ってた?」
「いえ、全く。どういう事でしょう?承認がないと入れないはずなんですが。」
森の部屋に行く。
「小梅、春さんはどこ?」
「そこ。」
「えっ!どこ?」
「だから、そこ。」 指差した方を見てるんだけど・・。まさか!
「もしかしてハンモック?」
「正解ですよ。」 わかるかあ!なんでハンモックなんだよ!
「カモナ、これは・・。」
「申し訳ありません。まさか物に変化してるとは・・。」
「だよねー。」
考えてみれば、さっき小梅は変化と言った、人化とは言ってない。丁度いいけど。
「はじめまして、春さん。カエデ・ガーネットと申します。」
「これはご丁寧に、春と申します。」 シュール・・ハンモックと話してる。
「あの春さん、変化を解いてくれるとありがたいんですけど・・。」
「ああ、これは失礼。」 ボボンと小梅達くらいの女の子になった。
「立ち話もなんですから、お茶でもいかがです?」
「ありがとうございます。」 リビングへ移動してティータイム。
「さて、何から話しましょう?」
「そうですね、では玉藻の事から。今、怪我の治療中で治り次第、春さんを
取り込みにくるのでは、との事です。」
「そうですか・・逃げなければならないですね。」
「それなんですけど、春さん僕らといっしょに暮らしませんか?ハンモックに
変化しなくても部屋を用意しますし。」
「ありがたいですけど、ご迷惑かけます。私、変化しかできないので何のお役
にも立てません。」
「ははは、気にしないで下さい。僕の周りにいる連中はみな気のいい奴ばかりです
それに、傍に居てくれたほうが守り易いです。玉藻に怪我を負わせたのは僕です
し、ケリをつけてもいいかな、なんて思ってます。」
「えっ!あのいかれた陰陽師ですか?」
「はは・・いかれてませんけど、その陰陽師です。」
「あなたも、この世界に・・・。」
「はい。一度この世界で一生を終え、転生しました。」
「人の寿命は短いですもんね。」
「はい。まあ、でも今は楽しくやってます。」
「ここの森は気持ちがいいです。そしてこの異空間の森も・・。」
「そうでしょう、僕の自慢ですよ。春さん、逃げるのは止めにしましょう。
隠れて生きるのも止めにしましょう。魅了をなんとかすれば、今の僕でも
玉藻には遅れをとりませんよ。」
「・・・私は、もう逃げ隠れしなくてもいいんでしょうか・・・。」
「はい。」
春さんは泣き出した。小梅達が背中をさすっている。どれだけ玉藻に怯え、
隠れてきたかは、正直、僕にはわからない。だけど・・・。
「小梅、イチ、ニイ。春さんも今日から家族だ、守れるね?」
「当然。」
「まかせて~。」
「まかせろ。」
「諭吉、美月。聞いてたね。」
「おう。」
「はい。」
「巻き込んで申し訳ないけど、力を貸して。」
「ああ、まかせろ。」
「はい。」
話がまとまった所で丁度ガーネットに着いた。いろいろ準備というか根回しが
いる。これからガーネットで起こるかもしれない事だ。
「僕はバート叔父さんの所へ行って来る。みんなは夕食を食べて。小梅、春さん
を頼む。諭吉もよろしく。」
広くなった執務室に行くと、ベル姉達のドラゴン討伐に色めきだっていた・・・
どうしよう、水をさすようで申し訳ないなあ・・明日にしよう。そうしよう。
まわれ右をして出て行こうとする。例によってマリア先生が立ち塞がる。
クロックアップして脇を抜けた。と思ったら捕まった。さすがマリア半神。
「なんで逃げるの?」
「いや・・そのう・・。」抱き抱えられ皆の前へ。
「ドラゴン討伐、おめでとうございます。」
「ありが・・んっ?なんで知ってんだ?たった今知らせがきたとこだぞ。」
「カエデ、あなた、かんでるわね。」 クッ、鋭いな婆ちゃん。
「いや・・あの・・。そんなおめでたい中で話す勇気がありませんので明日に
でも、また伺いたく思う次第です。それでは、ごきげんよう。」
カーテシーを決めて、光彩(改)発動!ドアはだめだ、マリア先生に捕まる。
よし、窓から脱出だ!ノー!婆ちゃんに捕まった。なんでわかるんだ!
「話せ・・・。」 爺ちゃんはニコニコしている。
「はぁ~、しょうがないか・・。まず、ベル姉達がドラゴンを討伐したのは
間違いないよ。僕がマウラ火山まで運んだから。ファイヤードラゴンの討伐は
エルとサラに頼まれた、人喰いをしてもう手遅れだったから。
で、丁度良かったからベル姉達にドラゴンスレーヤーになってもらおうと。」
「やっぱり絡んでたのね、というより黒幕ね。」
「火山に着いていざ対峙してみるとドラゴンは魅了をかけられ、火山の
エネルギーを吸収していた。」
「魅了だと!」
「サイズもカラーズクラスで、ギルドは特殊個体って呼んでたよ。」
「特殊個体だと!」
「ドラゴンの討伐自体に僕らは手をだしてないよ。映像を録ってあるから
後でみせるね。3人の戦いは見事だったよ。」
「そうか・・。問題は魅了だな。」
「うん、玉藻かも知れない。」
「玉藻!あの玉藻か?」
「そうだよ。それでベル姉達をギルドまで送って、九十九さんと話して
帰ってきた。」
「玉藻というのは、三大妖怪の玉藻か?」
「うん、今は怪我を治してる最中で治すためにファイヤードラゴンを利用
したかもと、九十九さんが言ってた。」
「火山のエネルギーを治療に・・・。」
「玉藻は怪我が治ったら、ガーネットにやってくる。」
「なんでだ?」
「玉藻は異世界から月詠様が連れてきたんだ。その時、この世界になるべく影響が
出ない様に、3人の妖狐に分離した。1人は玉藻、1人は九十九さん。そして
もう1人が春さん。春さんは大昔からガーネットの森に隠れ住んでいたんだよ。
僕もついさっき知ったけどね。」
「玉藻の狙いは、その春さんという妖狐なのか?」
「九十九さんが言うには、春さん自体はたいした力はないらしいんだけど、
融合するとかなり力が上がるようだね。」
「それで、やってくるのか・・・。」
「ごめんね、それだけじゃないんだ。狙いはパワーアップだけど、そうしなきゃ
いけない理由がガーネットにあるんだ。」
「春さん以外にも理由があると?」
「自分に怪我を負わせた者への復讐。」
「まさか・・。」
「玉藻に怪我を負わせたのはイカルガだよ。イカルガは玉藻の居た世界と同じ所
から召喚されたんだ。まだその世界に居る時にカエデ・イカルガと玉藻は
戦ったんだ。その世界は魔法を使える人はほとんどいなくて、科学が発達した
世界だったんだ。イカルガはそんな中で陰陽術という特殊な技術を使う
家柄だったんだ。九尾はもう自然災害だったよ、本当の意味で命と引き換えに
怪我を負わせたからね。」
「カエデちゃんが、たまに使うやつね。」
「そうだよ。正直、イカルガの因縁までは面倒みきれないって思ってたんだけど
ガーネットに迷惑かけたくないし、春さんもほっとけない。という事で
ケリをつける事にしました。」
「カエデちゃん。イカルガ様が100としたら、今のカエデちゃんは
どれくらいな感じ?」
「ゼロだよ、ボタン先生。」 息を飲む音が聞こえた。




