AGARDITE
松月庵からいい匂いがしてきた。これは期待できる。
中に入ると小梅達はすでに着席し、目をキラキラさせていた。
今日は燻製鴨肉との相性の確認なので、メニューは鴨南蛮と鴨せいろのみ。
僕は鴨南蛮にした。リリーさんが運んでくれる。いただきます。
これは・・・。みんな言葉を発せず食べている。
やばうまい!このそば粉で他のメニューもランクアップするだろう。
「おいしいわね。」
「精霊のそば粉パワーだよ。」
「ケーキ屋も蕎麦屋もとんでもない事になりそうだな・・。」
「諭吉、すごいなこれは。」
「ああ、俺もびっくりしている。」
「パティスリーミランダと同時オープンでいいか?」
「問題ない。」
「リリーさん、それで準備を進めて。」
「わかりました。」
なんとかケーキ屋と蕎麦屋のめどはついた。UWBもバート叔父さんに丸投げ。
あとは結界石か、お店の事はみんなに任せてガークさんの所へ行こう。
「レイさん、リリーさん。僕ちょっと出かけるから、あとお願い。」
小梅を連れてガークさんの所へ。
「ガークさん、ガークさん。」
「おう、カエデ。蕎麦屋はまだか?」
「今週末オープンだから来てね。」
「わかった、必ず行く。今日はどうした?メンテか?」
「メンテはまだ大丈夫だよ。聞きたい事があってさ。でも、まずお茶にしよう。
ケーキの詰め合わせを持ってきたから。」
「おお・・誰か茶ーいれろ!」
「ケーキ屋も蕎麦屋と同時オープンだから。」
「それは、カミさんが喜ぶな。それにしても、旨い!」
「材料が少し変わったんだ。聞きたいんだけどアゲードって石、知ってる?」
「アケード?あの屑石の事か?鉱石を精製する時にでてくるやつだろ?」
「そうなの?あるの?」
「捨てる石だからな。おい、誰かアゲートの入ったバケツを持って来い。」
なんと、アゲードが屑石とは・・・。お弟子さんがバケツを持って来てくれた。
中をみると確かにアゲードだ。ラッキーだな、これでダルタニアまで行かなくて
もよくなった。
「ガークさん、これで間違いないよ。これ全部、売ってくんない?」
「捨てるもんだし、持ってていいぞ。」
「ありがとう。これからもでるの?」
「毎日、でるぞ。」
「じゃあ、それ捨てないでキープしてもらっていい?僕が引き取るから。」
「わかった。」
「あとこれ、奥さんのケーキ。」
「ありがとよ。」
大量のアゲードを手に入れ、ホクホク顔で屋敷に戻る。コウヤもいるかな。
早速、結界石を作ってみよう。うまくいけば、帝都へ行った時にみんなに渡せる。
まず、石を選ぶ。どれを使っても最終的に同じ色になるならサイズで選ぼう。
いや、まてよ。錬金術の精製を使えば同じサイズに圧縮したりできるのでは?
大きいアゲードで試してみよう。魔力を流すと徐々に小さくなっていく。
できたじゃん、けっこう魔力を使うな・・・。
後は陣を書いてっと、白い子犬のホログラム、これはベル姉のだ。
あっ、青い石になった。あと、5,6個はいけるかな?
アリ姉はファルコン、華姉はトラ。メモしておいて良かったよ。
クロ兄はドラゴン、タケル兄はトラ、アス姉はファルコン。ふぅ、限界。
6個はいける。続きは明日にしよう。
小梅は森の部屋のハンモックで寝てるはず、迎えに行こう。行くと、イチとニイも
いっしょに寝てて可愛い。
「食堂いくよ。」
「うん。」
こっこうな魔力を使ったので、干物定食があれば・・・おっ、あった。良かった。
小梅達は安定の和定食だ。諭吉達は松月庵にいるのかな?どっかで会うだろ。
干物定食は、もちろん旨かった。少し回復したな、父さんと母さんの分を作れば
後はこっちでゆっくり作れる。よっしゃ!あと2個作っちゃおう。
「小梅、僕はもう少しアトリエに籠るよ。」
「わかった。」
小梅達は桜花流の稽古。えらいぞ、みんな。
「カモナ、近々帝都に行くけどイド君の調子どう?」
「問題ありません。いつでも大丈夫でございます。」
「了解、明日行こうかな・・。悪いけど、キヨさんと山吹さんの予定を
確認してきてくれる?」
「かしこまりました。」
僕は再びアトリエに籠り、父さんのグリフォンと母さんのキツネを作る。
ふぅ、疲れた。リビングでカモナにコーヒーを淹れてもらう。
「カモナ。キヨさんと山吹さん、なんだって?」
「はい、いつでも大丈夫だそうです。」
「そうか、明日行って1泊してもいいかな・・。ちょっとバート叔父さんの
所へ行って来る。あと、諭吉の居場所わかる?」
「諭吉様は、松月庵におられます。」
「ありがとう。行って来るね。」 執務室アゲン。
「失礼します。カエデです。」
「なんだ?」
「急ですが明日、帝都に行ってきます。向こうは大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だ。連絡しておく。」 次は諭吉だ。
「諭吉。明日、帝都へ行くけどどうする?」
「開店準備は、ほとんど終わってるから大丈夫だが、日程は?」
「明日、日帰り。最悪、イド君で1泊。」
「了解。それなら大丈夫だろ。」
翌朝、もろもろこなし庭へ。今回レイさんとリリーさんは開店準備の為、
欠席、イチとニイは同行。全員そろったので出発。
「2時間程で到着します。」
「了解。みんな、到着までお茶でもしよう。」
「カエデ、シュリ様達に会えるのか?」
「会えるよ、タケル兄と華姉にも会えるんじゃないか。」
「おお・・・。緊張する。」
「なんで?」
「そりゃあ、いずれ宗主になるお方だし、華様かわいいし・・。」
「・・・・タイプなの?」
「べっ、べつにそういうんじゃねえ!」
「ふ~ん・・・。」 ニヤリ。
「キヨさん、夏月FCはどうなの?」
「忙しいです。当初の予定を軽く上回ってますね、ガーネットとタチバナ
から増員してもらって、先日まで神楽で研修してました。」
「そうなんだ、DSも?」
「全く同じ状況ですね。」
「こうなんていうか、女性の美に対する執念を感じるね。」
「女性だけではないですよ。」
「えっ!男性もいるの?」
「けっこういます。」
「そっかぁ、男性にも美は大事なんだねえ・・・。」
などと夏月FCと紅葉DSの近況を聞いたり、最近のコウヤと夏月、紅葉の
話を聞いたりしている内に神楽に着いた。諭吉は固まっていて、小梅達に
突かれたりしてた。庭に着陸、例によってメイド隊に囲まれるもシュリ叔父さん
がすぐに出てきてくれて事無きをえる。う~ん、来るたびにこれだとメイド隊の
皆さんに申し訳ないな。神楽同様、イカルガの屋敷を使うか・・。
実は帝都にもイカルガの屋敷はある。ただ、IAで管理しているのではなく
くせのあるブラウニーが管理している。後で行ってみるか・・。
とりあえず屋敷のリビングに、いったん行く。
「カエデ。もう少ししたら、みな学園から帰ってくると思う。バロン様達は帰り
にピックしていく手筈だ。」
「了解。ボタン先生、FCとDSの準備は?」
「終わってるわ。先生待ちだったのよ。家の方に案内するわね、担当者が準備を
整えてるから。」
「「わかりました。」」
「シュリ叔父さん、ボタン先生。紹介したいんだけど。」
「ん?誰をだ?」
「松月家の諭吉。」
「は、はじめまして。ゆ、諭吉と申してそうろう・・。」
「・・・・。」
「ぶっ、わっはっはっは!そうか、お前があの諭吉か!」
「知ってんの?」
「ああ、松月に天才がいるってお袋から聞いてたからな。」
「確かに諭吉は天才だよ、笑いの・・・。」
「なにをー!貴様!」
「まあまあ諭吉ちゃん。おばあ様の依頼でガーネットに松月庵だすんでしょう?」
「そ、そうでそうろう。」
「ぶっ!」
「なにをー!」
「まだ、なにも言ってない!」
「なんだ、このおもしろコンビは。」
「「コンビじゃない!」」
小梅達は、美月をスノさん達に紹介しに行ってる。
「松月庵とパティスリーミランダは、今週末オープンするよ。森の食材を
使っててやばいんだ。」
「ああ、バートが頭を抱えてたぞ。俺もボタンも楽しみにしてたんだ。」
「ツバキお姉様が、帝都にも欲しいって騒いでたわよ。」
「ああ・・でも今は無理かな。職人がいないよ。諭吉が学園に通う時、
なんとかなるかもだけど・・。」
「松月に頼んで、もう1人派遣してもらうか?」
「諭吉、他にも作れる人いるの?」
「従妹にいるぞ。」
「その人に頼めるかな?」
「どうだろ?確か学園に通ってるはずだが・・・。」
「そうなんだ。クロ兄かベル姉に聞けばわかるかな?」
「ただいまー。」
おっ、噂をすればベル姉が、帰って来た。
「カエデちゅわ~ん!」 いきなり抱き着かれた。
ウホッ、さらにこれは・・・。いかん、違う。
「お帰り、ベル姉。」
「シュリ兄達を迎えにきたの?」
「そうだよ。帰ってきた早々で悪いけど聞きたい事があって。」
「なにかしら?」
「学園に松月っている?」
「同じクラスに居るわよ。アサガオ・ショウゲツ、たまにダンジョンを
手伝ってもらうし。」
「おお、なんという偶然。今度、会いたいんだけど。」
「いいわよ。会えるとき教えて、言っておくから。」
「こっちは、そのアサガオさんの従妹の諭吉。」
「ゆ、ゆゆ吉です。」
「ゆゆ吉君?アサガオから聞いた事があるわ。でも、ゆゆ吉君だったかしら?」
「ゆゆ吉ではなくて、諭吉だよ。ベル姉。」
「あら、そうなの。ごめんなさい。」
「ゆゆ吉でいいです!」
「んじゃ、ゆゆ吉で。」
「おまえは駄目だ!」
「なんでだよ!」
「やっぱ、おもしろコンビだな。」
「まあ、そうなの?ゆゆ吉君、カエデちゃんと仲良くしてあげてね。」
「も、もちろんです。ベルお姉たま。」
「ベルお姉たまだとー!表でろ!夕霧の錆にしてくれる!」
「上等だ!ベルお姉たまと出会った今宵のノワールはひと味ちがうぜえ!」
ゴイン!イタタタ・・・。2人とも頭を押さえて蹲る。
「痛いじゃないか!華姉!」
「おお、これは華お姉たまではござらんか。」
「あら、諭吉じゃない。なんでいるの?朝顔に会いに来たの?」
「まさか!あんな暴力女、1ミリも会う気はござらん!」
「誰が暴力女だあー!」
手裏剣が飛んできて、諭吉にぐさぐさ刺さった。と思ったら丸太。
「空蝉」か・・・それにしても見事な腕だ。全部、人中線だぞ。
「なにをする!朝顔!危ないぞ!」
「落ち着きなさい、朝顔。」
「わかったわ、華。」
小声で、「おまえの従妹やべーな。」
「やべーんだ・・・。」
「なに、こそこそ話してるの?」
「「な、なんでもござりません!」」 変な言葉が移った。
話を変えよう、僕は「空蝉」できないから死ぬ。
「ベル姉、華姉。これ結界石、ネックレスにでもして使って。魔力を流したら
呪いを跳ね返すから。」
「へぇ、ありがとう。」
2人が魔力を流した瞬間、白い子犬と子トラが飛び出し、どっかに飛んでった。
「ちょ、ちょっと!何でいきなり、呪われてんの!」
「えっ?そうなの?」
「おい、華!アリスも呼ぶんだ。」
「わかったわ、父さん。」
慌ててアリ姉も呼んで、結界石を渡す。するとやはりファルコンが飛び出し
どっかに飛んでった。
「シュリ叔父さん!3人とも呪われてる!」
「おい!華、ベル、アリス。覚えはないのか?」
「う~ん、ダンジョンかしら?ついこの間、カタコンペに行ったわ。」
「朝顔も居たわよ。」
「なっ!それはまずい!ちょっと待ってて!」
僕はあわててカモナのアトリエに行き、朝顔さん用の結界石を作って戻る。
「はいこれ、魔力を流して。」
「え、ええ・・・。」
あれ?ヤタガラスがでないな・・・。これは・・ダンジョンじゃない。
「ベル姉、ダンジョンじゃない。」
「そう、わかったわ。みんな、行くわよ!ダンジョンじゃないならあの娘よ。」
「ああ、成る程ね。」 朝顔さんも含め、どっか行った。
「穏便にな!」 入れ替わりにクロ兄達が帰ってきた。
「カエデちゅわ~ん!」クロ兄が抱き着く前に、何かがぶつかってきた。
「どわっ!」 なんだ?顔をペロペロされてる!
「こら!マルテア。カエデちゃんがびっくりしてるでしょ。」
マルテア・・、そうだった。卵をクロ兄に頼んだんだった。
「そうか、君がマルテアか。僕はカエデ、クロ兄の弟だよ、よろしく。」
「クルル♡」
「ドラゴンの子供・・。」 諭吉がびっくりしている。
マルテアは僕の頭に、乗っている。
重い!




