ENCOUNTER
倒したトロルキングからタクティカルアックスがドロップした。見た目は悪くない
のだが、木を切るのはマリンの剣で十分だからドミニクに戻そう。
次のフロアーをちょっとだけ覗いて本部へ行こう。
扉を開けると雨が降っていた。村というか廃村という感じ、遠くにいかにもな城が
見える。はぁ・・、バンパイアかな?あとワーウルフと人造人間。
ホラーだ。なんにせよ雨具がないと風邪ひきそう。ぶるっとして本部へ転位。
受付で大量のパイを渡しドミニクの所へ。
「ドミニク、お久さ!」
「あら、カエデ。久しぶり。」
「トロルと半魚人のフロアーに行ってきたよ。」
「どうだった?」
「ドミニクらしい鬼畜フロアー。」
「フフ、そうでしょう。トロル達がわんさか出るようにプログラムしてるわ。」
「トロルキングに、一度吹っ飛ばされたよ。」
「カエデが?珍しいわね。」
「油断した。としか言いようがないのだけど、合体したら急に強くなった。」
「ボス部屋はトロルの雑兵がわんさか出てきて、時間内に倒さないと合体
しだすのよ。へたするとトロルキングが何体も出るわよ。」
「なんという鬼畜・・。広域系の大魔法が2発はいるよ。」
「カエデ達はどうしたの?」
「小梅がニブルヘイムを1発、生き残ったのがトロルキングに。
1体で済んで良かったよ。」
「1体で済んだのは、さすがと言えるわね。」
ドロップ品を渡し、ギャラを受け取る。
「長官はまだ戻らないの?」
「そうね、会議自体は終わってるんだけど、ついでに他のダンジョンを見てくる
というただの世界グルメツアーよ。」
「はは・・羨ましいな。」
「ところでカエデ、依頼があるのだけど。いい?」
「もちろんいいよ。借しがあるからね。」
「ありがとう。神居のダンジョンにアタックして欲しいの。」
「いいけど、なんでまた?」
「知っての通り神居という国はジャパンベース、それもあって西洋ベースとは
違う独自のダンジョンらしいの。ランキングも高いのよ。
参考にしたいからアタックしつつ撮影をしてきてほしいのよ。」
「成る程、いいよ。明日、神居に行くから次いでにアタックしてみるよ。」
「お願い。」
「トラップの方はどう?」
「だいぶ落ち着いたわね。作戦どおり噂が拡散したんじゃないかしら。」
「そうか、良かったよ。協力ありがとう。」
「動力は森から貰ってるわけだし、そのまま設置しておいていいんじゃない。」
「そうだね、そうしよう。じゃあ、神楽から戻ったら報告に来るよ。」
「ええ、お願い。」
自室へ転位。今日からギャラは3等分にしよう。それぞれの箱を作って
カモナの僕の部屋に置く。ちょっとした、へそくりみたいな感じだ。
一休みして食堂へ。ミランダさんが居たので食べながら話す。
「ミランダさん、最初はそんなに種類がなくてもいいと思うんだ。質の
良い物を提供したいよね。」
「同感です、これを。」
ミランダさんからメニューリストを見せられる。どれどれ、モンブラン、
苺ショート、フォンダンショコラ、チーズケーキ、アップルパイ、モカケーキ
カスタードパイ。だいたい同じ考えだな。
「ミランダさん、これでいいと思うけどテストでミートパイを作ってみてよ。
あのミートソース、パイにしても絶対に美味しいと思うんだ。ひとつ位
甘く無い物があってもおもしろいよ。」
「フフ、そうですね。試作してみます。」
さて、風呂に入るか。
「小梅、イチとニイはどこにいる?」
「BP。」
「風呂に行くと伝えて。」
「わかった。」
すぐにイチとニイは来た。腹出してプカプカ浮かびながら
「夕食は?」
「食べました~。」
「うむ。」
風呂あがり、4人でアイスを食べながら
「明日は神楽だからね。そうだ、カモナお酒ってある?」
「ございます。」
「じゃ、明日それをお土産にしたいんだけど、いいかな?」
「かしこまりました。」
「さあ、みんな明日は忙しいから、早めに寝よう。」
朝のルーティンを終わらせ、食堂へ。昼はそばで確定だから洋食にする。
カエデ課のみんなも居たので、そのままミーティング。
「今日、蕎麦屋担当のみんなは神楽に行くのでミーティング後、庭に集合。
ケーキ屋担当の皆さんは、昨日に引き続きでお願いします。
じゃ、そういう事でよろしく。」
庭へ行きイド君のスタンバイ。
「カモナ、イド君の転位をお願い。」
「かしこまりました。」
小梅達はすぐに乗り込む、僕はリリーさん達を待つ。
「すいません、お待たせしました。」
「大丈夫だよ、乗って。出発するから。」
ユキナさんとイルマさんは、初めて乗るイド君に驚いていたがリリーさんに
促され乗船。
「カモナ、イド君。神楽へ向け発進。」
「「かしこまりました。」」
リビングへ行くと、ユキナさんイルマさんは窓の外を見て再び驚いている。
「飛んでるわ・・。」
「落ちたりしないのかしら?」 反応が新鮮だ。
「神楽まで40分だから、お茶にしよう。」
「40分・・・。」
「まじすか?先輩。」
「まじよ。カエデ様と行動する時は、いろいろ驚く場面に遭遇するけど
慣れるしかないの。」 なんだと春日部。
「大丈夫だよ、百合子さん。今回はそばを食べてダンジョンに潜るだけだから。」
「ほらね、ダンジョンは初耳よ。」
「しょうがないじゃん!昨日、DM代行に頼まれたんだから。これも仕事。
それに、リリーさんが居ないと僕7は入れないし。」
「はぁ・・わかりました。」
「ユキナさんは、神居出身?」
「いえ、生まれも育ちもガーネットです。」
「イルマさんも?」
「はい。」
「2人とも初神居か。なんかいろいろすっ飛ばして申し訳ないね。」
「いえ、正直、楽しみです。」
「私もです。」
「任せて、そばは美味しいから。小梅とイチとニイは実家に顔出しておいで。
お土産にワインを用意してあるからパパとママに持って行ってね。帰りは
迎えに行くから。」
「うん。」
「はい~。」
「うむ。」
「カモナ、ユキナさんとイルマさんの部屋を用意しておいて。」
「かしこまりました。」
「百合子さん、神居のダンジョンは何階層までいってるの?」
「はい、神居ダンジョンは階層型ではなく地下に広い空間が広がっていて
古い街があり、そこを進んでいく感じです。」
「えっ、そうなんだ。フロアボスって事ではないんだね。」
「そうです。街の中にお城があってそこを攻略すると次の街に転位します。」
戦国時代とか江戸時代とかそんな感じなのか・・。それにしてもDMは歴史好きの
日本人なのでは?イカルガ時代には行った事がなかったから、楽しみだな。
日本の古い街か・・・。
「てことは、モンスターは妖怪系?」
「そうです。ただ、甲冑を付けた人型、おかしな術を使う着物姿の人型も
でてきます。」
決まりだ、絶対DMは日本人だ。しかも、陰陽術まである。知り合いだったら
どうしよう。
「師匠と修行として、参の街まで行ってます。」
「そう数えるんだね。じゃあ、今日は参の街スタートでいけるの?」
「はい。壱の街、弐の街を通るのは半日では無理ですから。」
「そんなに広いんだ。」
「感覚がおかしくなるくらいには。」
「ますます、楽しみだねえ。」
「そろそろ到着します。ドムル君の所でいいですか?」
「うん、そうして。」
カモナとドムル君は話し合い、発着場を作ったとの事。確かに、あの美しい庭に
降りるのは無粋だな。ありがとう、カモナ、ドムル君。
ドムル君に到着して小梅達は家に戻った。百合子さんも含めドムル君は初めてだ。
「ここは、僕の別宅。最近かなりの頻度で神楽に来てるから、いちいち宗家に
泊まるのもどうかと思ってさ。」
「ほえ~、カエデ様って7歳ですよね・・・。」
「先輩の言ってた事が、わかります。」
「そうよ、気にしたら負け。」さすが、春日部。
「それにしても、見事なお庭ですねえ。」
「おっ、わかる?この縁側から庭と月を見るのが最高なんだよ。」
「7歳児ですよね・・。」 ユキナさん、突っ込み系だね。
「さて、そろそろ蕎麦屋に行こうか。そう言えば蕎麦屋の屋号ってなに?」
「たしか、松月庵ですよ。」
松月・・はて?どこかで聞いた事があるような・・まっいっか。
「よし!松月庵にレッツラゴー。」
「おっちゃん、おっちゃんー。」
「おう、坊主。今日は早いな、大人数だし。」
「そばを食べに来たんだけど、その前に話があってさ。」
「今ならいいぞ。なんだ?」
「自己紹介してなかったけど、僕はカエデ・ガーネット。ガーネットから来た
けど、タチバナ家の孫でもあるよ。」
「なっ!ツムギ様の孫なのか?」
「そうだよ。母さんはツバキ。」
「ツバキ様の子・・。」
「それで単刀直入に言うと、ガーネットで蕎麦屋をやりたいんだ。
相談に乗ってよ!」
「どストレート。」 だめか?春日部。
「ガーネットで蕎麦屋だと?」
「うん。ある事情で清水が湧いてるし、その清水で作るわさびもある。
港があるから海産物も豊富。これ食べてみて。」鴨肉の燻製を渡す。
「燻製か・・・。」 パクリと食べて目を見開く。
「なんだ、これは!」
「神楽の神木のチップで、シュリ叔父さんが作った燻製だよ。」
「なん、だと?シュリ様が・・。」
「なにより僕が、もっと頻繁にそばが食べたい!」
「クックッ・・グワッハッハッハ!カエデ様はおもしれーな。
おーい、諭吉!」
厨房から僕と同い年くらいの子がでてきた。
「なんだ?うるせーな!」
「おまえ、ちょっとガーネットに行って蕎麦屋をだせ!」
「はぁ?やだよ、めんどくせー。」 こいつ僕と同じ匂いがするぞ。
「宗家からの依頼だ。拒否はできん。」
えっ!いやあ~そんなおおげさな・・。僕が食べたいだけなんだけど・・・。
なんか、ごめん・・・。
「はっ!誰が宗家だって?まさか、そこのチビか?」
「んだとお!誰がチビだ!おまえの方が小いせえじゃねえか!」
「んだとお!どこに目をつけてやがる!おまえの方がはるかに小せえ!」
僕達は、おでこを突き合わせて睨みあう。これが、生涯の友となる諭吉との
最初の出会いだった。
「上等だ!表でろ!どっちがチビか決着つけてやる!」
「いいだろう、頭を削ってやる!」
2人で外に飛び出し、向かい合う。おまえごとき蜻蛉で十分だ。
諭吉の得物は、忍者刀だ。忍者刀?
「あっー!」 思い出した。その時、ゴインと頭に衝撃が。
「イタッ!」
「何をやっているのですか!あなたは!」
「げっ!婆ちゃん!」
諭吉もおっちゃんに拳骨を喰らい蹲っていた。
「佐助のそばを食べようと思って来てみれば、何の騒ぎですか!」
「いやだって、諭吉の方が全然小さいから!」
「んだとう!」
2人は、またおでこを突き合わせて睨みあう。ゴイン!ゴイン!
また、拳骨された。イタタタ・・。
「とにかく、話は中で聞きます。」
「それでは、カエデがガーネットでもそばが食べたいからお店を出すという
事ですね。」
「なんか、そういう事になっちゃって、それでおっちゃんにいろいろ聞こうと
思って来たんだ。」
全員、好きなそばを頼んでいる。僕は鴨ざるにした。
「それでどうして、諭吉と喧嘩になるんですか?」
「僕をチビ呼ばわりしたから。」
「実際、小さいでしょう。ぶっちゃけカエデと諭吉は同じ位ですよ、不毛な
争いとはこの事です。まったく・・。」
「だってさ、諭吉。」
「うっせえ、話しかけんな気が散る!」
「んだとお!ごらあ!」 ゴイン!イタタタ・・。
「全くあなたは・・。佐助、諭吉はお店の出せる程の腕になってますか?」
「はい。親の私が言うのもなんですが、どこに出しても恥かしくない程には。」
「わかりました。では正式にタチバナ宗家から松月家に依頼します。
諭吉をガーネットに派遣して下さい。」
「はっ、承りました。」
諭吉が作ったそばがでてきた。クソっ!チビのくせに超うめー。
百合子さん達も絶賛だ。
「カエデ、諭吉の住む所など責任を持って用意するのですよ。」
「わかったよ。」
「聞いてたな、諭吉。しっかりやってこい。どのみち帝都の学園には
行くんだし、途中じゃねえか。ガッハッハッハッ。」
「なげえ道のりだな、おい!」
「婆ちゃん、松月家って忍者の家系?」
「そうですよ。シュリから聞いてませんか?」
「たぶん聞いてた。さっき、忍者刀見て思い出したよ。」
「諭吉は、あの歳ですでに松月家を担う、天才と呼ばれている忍者です。
意外とカエデとは馬が合うと思うのだけど・・・。」
「「えっー!」」 いつの間にか、諭吉もいた。さす忍。
「ツムギ様。カエデ様はタチバナ流の使い手ですか?」
「カエデでいい。諭吉に様をつけられるとキモイ。」
「クッ、わーたよ。カエデ、これでいいか?」
「フフ。カエデはタチバナ流を使いませんよ。でも、そうですねえ・・。
カエデ、今まで本気を出した事は?」
「ないよ。」僕の本気は全て「箱庭」にある。
「ですよね。諭吉、時間がある時にカエデと行動をともにしてみなさい。」
「こいつとですか・・・。」
「あぁん!何か文句あるのか!」
「ねえよ!今さら!」
「よし!婆ちゃん、ありがとう。今度、改めてお礼に来るよ。」
「待ってるわ。それと神楽に来るのなら、まず宗家に顔を出しなさい。
わかりましたね。」
「了解。行くよ、みんな。」
「はいっ!」
「何してる?諭吉も行くぞ!」
「へっ?どこへ?」
「おっちゃん、諭吉を連れて行く。オーケー?」
「ああ。しっかりやれ、諭吉。」
「ちょ、ちょっと、荷物とかは?」
「全てこちらで用意する。」
「えっ?どこへ行く気だ!」
「決まってるだろう。ダンジョンだ!」
「なんでー!」




