UNDERWATER
昨夜は温水プール風呂で水の中で呼吸できる魔導具を作る決意をした。
なんとなく理屈は浮かんでいる。
今日はカモナのレイピアを取りに行く。あと、小梅達のナイフ。キャロルに
魔導具職人を紹介してもらう。と、今日の予定を考えながらランニング。
素振りをして祠に参拝し、食堂へ。
カエデ課が朝食を食べていたので同じテーブルへ。挨拶を交わし、ゆっくり
食べて、コーヒーを飲む。
朝のミーティングだ。
「今日はダンジョンに行きます。」
「了解。気をつけてね。僕はガークさんの所へ行って、キャロルの所へ行って
さらに魔導具職人の所へ行ってくるよ。」
「・・・魔導具職人ですか?なにかとても不穏な響きなんですが・・・。」
「大丈夫だって、おもちゃみたいな物を作るだけだから。」
「本当ですね?まじ、お願いします。」
「了解、了解。それと、イチとニイのナイフも買っとくけど、
小梅と同じでいいかな?」
「はい~。」
「うむ。」
「イチもニイも、よろしくね。」
一休みして小梅とガークさんの所へ。
「ガークさん、ガークさん。」
「おう、カエデ。おもしろいレイピアができたぞ。」
「おお、それは楽しみ。ですが、パイを持ってきました。」
「野郎ども!お茶いれろ!休憩だ!」
「KAPとKKPです。」
「どっちもうまいな。リンゴの控えめな甘さがいい、カスタードの濃厚な
甘さもまたいい。」 どこの評論家だ。
「はいこれ、奥方の分。そんなに日持ちしないから早めに食べてね。」
「おう、ありがとよ。」
10時のおやつ終了。お弟子さん達も喜んでいた。
「これだ。」 と言ってレイピアを持って来てくれる。
「カモナ。」 カモナが受け取って長さとか重さをチェックしている。
「どう?」
「完璧でございます。」
「おう、ありがとよ。あと、魔力を流してみな。」
カモナが魔力を流す、すると・・消えた。わかっていたけど、こんなに見事に
消えるのね。レイピアを持っているようには見えない。
「すごい!」
「だろ。銘は『花鳥風月』。カエデの刻印を入れておいたぞ。」
「おお、カッコイイ。」
「ありがとうございます。」
「お代は?」
「残った素材を使っていいなら、いらん。ある注文に使いたくてな。」
「いいですよ、ガークさんが信用してる人なら。」
「ロイド様に剣を頼まれてな。」
「父さん?」
「なんでも、今使ってるのがボロボロでさすがに危ないからって事のようだ。」
「そう言えば父さんって、魔剣とかIAとか使わないもんね。」
「それで剣聖って、すげえけどな。」
「確かに。最高な消える剣を作ってあげて下さい。」
「おう、まかせておけ。」
「それとサバイバルナイフが欲しいんですけど。」
「丁度アダマンタイトが少し残ってたから、弟子に作らせたのがある。見るか?」
「是非!」
「おい、あれ持って来い!」
おそらく作ったお弟子さんなのだろう、走って取りに行った。
持って来たのは、おお・・これはM9バヨネットではないか・・。特尉時代に
愛用していた。銃剣にも使えるんだよね。こいつ、できる・・。
「成る程、やりますね・・。」
「恐縮です。」
「小梅、持ってみて。」
「うん。」
小梅が構える。和服とバヨネット・・・。なんか不思議とカッコイイ。
しかも何で構えてるの?魚を捌くのに使うっていう・・・。
「どう?」
「さいっこー。」
「恐縮です。」
僕も使ってみる。
「カエデ、おまえナイフも使えるか?」
「ええ、少々。」
「少々っていう動きじゃねえけどな・・・。」
「いいですね。何本あります?」
「はい。5本作る事ができました。」
「全部下さい!」
「えっ!いいんですか?」
「もちろんです。」
「カエデ。こいつは初めて人様に売れるものを作った。おまえが値段を
つけてやってくれ。」
「わかりました。では5本で金貨100枚でどうでしょう?」
「えっー!そんなに・・・。」
「ミロク、もらっておけ。ありがとよ、カエデ。」
ミロクさん、覚えておこう。将来、有望だ。即金で支払う。
彼の将来に投資しよう。おまけでナイフホルダーを付けてくれた、これがまた
カッコイイ。あと刻印も。
ほくほく顔でガークさんの所を後にする。いい買い物ができた。
次はキャロルの所だ。
「キャロル、キャロルー。」
「カエデ様、いらっしゃいませ。」
「ハンモック、大好評だよ!」
「ハンモックが、ですか?」
「そう、ハンモックが、だよ。」
「・・・ありがとうございます。今日は?」
「ごめん、買い物じゃないんだけど魔導具職人を紹介してほしくて。」
「あの、今日はレイさんとリリーさんはいらっしゃらないんですか?」
「2人はダンジョンだよ。どして?」
「いえ・・ストッパーがいない・・どうしましょ・・。」
キャロルがなんかつぶやいている。
「ちなみに何を作るか教えてもらえます?」
「たいしたもんじゃないよ。水中で呼吸できる魔導具を作ろうと。」
「ブッー!」 キャロルが吹いた。
「なんですか!その画期的なものは!」
「えっ、そう?」
「ガーネットは港を要する海洋領です。当然、漁師の方がたくさんいます。」
「そうだねえ。」
「その漁師のほとんどが、素潜り漁なんです。」
「えっ!そうなの?網とかでなくて?」
「はい。海の環境を維持する為だそうです。」
「そっかあ、獲りすぎるとモンスターに襲われたりするか・・。」
「それでも、もう少し深い所までいくと貴重な美味しい魚が獲れるそうです。」
「需要があると?」
「はい。規制は必要になると思いますが、漁師はのど手ですね。」
「遊ぶ為に考えてたんだけど・・・。」
「そうかもしれませんが、漁師の為に是非、開発して下さい。」
「わかったよ。やってみるから職人の紹介、お願い。」
「わかりました。」
地図をもらい訪ねる事にする。その前にランチだ。今日は新しい店にチャレンジ
しよう。ラーメン食べたい。というかラーメンなんてあるのか?
飲食店街をうろうろする。迷子と思われる前に早々に決めたい。
おっ!あの模様はどんぶりによく描いてあるやつでは?行って見よう。
あった!中華料理店だ。
「らっしゃい!子供2人かい?」
「うん。ラーメンが食べたくて。」
「そうかい。じゃこっち座んな!」
カウンター席に案内されメニューを渡される。すごいな、一通りの種類はある。
「小梅、どうする?」
「塩チャーシュー。」
「僕は味噌とギョーザを。」
「了解。少しまちな!」
厨房を見ると、女の人が中華鍋を振っていた。逆じゃない?
「へい!お待ち!」
「ウマウマ。」
「美味しいねー。ギョーザもお食べ。」
「うん。」
2人でジュルジュル、パクパクと完食。ここは当たりだ。今度はレイさん達も
連れて来よう。他にも食べたいメニューがたくさんある。
「坊主達、いい食いっぷりだ。サービスだ、食え。」
そう言ってゴマ団子を出してくれた。おお、これも旨い。
「ウマウマ。」
「ふぅ、旨かった~。また来るね~。」これだけ満腹で銀貨1枚は安いのでは?
「おう、また来い。」
場所を覚えておこう。さあ、腹も膨れた事だし職人さんの所へ行こう。
ここからだと20分くらいかな、ゆっくり行こう。
「ここかな?たのもー!ニダさんいますかー。」
「ひっひぃ、ど、どちらさまですか?」
「あっ、すいません、大きい声だして。キャロルの紹介で来ました、
カエデ・ガーネットと申します。」
おどおどした、分厚いメガネをかけた小さい女の人がいた。
「ひっ、ガーネットの・・・。な、なにか?」
「そんなに、怯えないで下さい。」
「お、おびえてなんかないんだから・・。」 いじめてる感があるな。
「あの、いっしょに魔導具作りませんか?」
「へっ?」
「作ってほしい魔導具があるんです。」
「魔導具ですか・・いいでしょう。話を聞いて受けるか否か決めます。」
あっ、急に態度が変わった。
「今回、お願いしたいのは水中で呼吸ができる魔導具です。」
「ほう・・。水中で呼吸・・。普通は無理でしょう。なにか考えがおありで?」
「はい。まず私達は陸上で呼吸をしています。」
「現在進行形でそうですね。」
「では呼吸とは、そもそも何でしょう?」
「目に見えない何かを吸って、吐く。そして、それが陸上で生活する生物に
とって必要なもの。というくらいですかね。」
「そうです。ポイントはその見えない何かです。」
「カエデ君にそれがわかるんですか?研究中のものだったと記憶してます・・。」
「ええ、わかります。私達の周りにある透明なものを空気と呼びます。そして
空気の中にいろんなものが含まれますが、一番多いのは酸素と呼ばれる
物質です。陸上生物はもれなく、この酸素が必要なのです。」
「酸素・・。初めて聞きます。」
「これがないと、我々は死にます。酸欠という現象です。詳細は省きますが
水の中にも、この物質は溶け込んでいます。魚や人魚も結局この物質が
ないと死にます。」
「水の中で呼吸をしている、という事ですか?」
「そうです。ただ陸上生物は肺という器官を使いますが、魚や人魚はエラという
器官を使います。」
「つまりエラを作れと?」
「それができればいいのですが、残念ながら身体構造が違いすぎて無理です。」
「では、どうすると?」
「ようは水中の酸素を大量に取り込んで、陸上の酸素量と同じにしてしまえば
いいのでは?と考えたわけです。」
「そんな事が可能なんですか?」
「こんなイメージなんですが・・・。」
事前に用意しておいたスケッチを見せながら説明する。
ふむ、ふむと聞いてるうちにニダさんの目の色が変わってくる。
「結界で身体を包む・・。この棒状の物を口に咥える・・。」
そう結界でウェットスーツを作って、酸素ボンベがないSFとかにでてくる
あれである。
「作れますか?」
「作る事は可能です。しかしこれで、本当にそんな機能が・・・。」
「それはテストしてみないと。これは製作資金です。」金貨100枚を渡す。
「こんなに・・。カエデ君は何者ですか?」
「普通の7歳児です。」
「なわけないでしょう!」
「キャロルが言うには、漁師の人達に需要があるそうなので元はとれるでしょ。
急いでいるわけでもないので、焦らずやって下さい。」
帰りはいつもの、言い訳カフェでお茶。小梅はケーキセット。
「明日、コウヤ達を迎えに神楽に行くよ。」
「うん。」 尻尾が揺れる。
「戻ってきたらダンジョンかな。しばらく行ってないからね。」
「お土産。」
「あっ、そうだね。イチとニイの分も買っていこう。何にする?」
「ワイン。」
「了解。」
帰りに酒屋に寄ってワインを大量購入。小梅が全て立て替えていた。
干物すげー。




