ELF
とりあえず、エルフの件はバート叔父さんに任せ、僕は自分の予定の消化だ。
朝のルーティンを終え、久しぶりだったからちょっと疲れた。毎日の積み重ねは
大切だよね。朝食の後、カエデ課は全員集合。留守の間の事を聞く。
襲撃自体はなく、ほとんどエルフの侵入者をボコボコにして泥棒あつかいで
牢屋にぶちこむ日々だったそうだ。
新しい武具は絶好調で、エルフ相手に大活躍だったそうだ。ハイエルフも侵入して
きたが、メイド長がボコボコにして牢屋いき。怪我もなく、良かった。
「エルフとハイエルフのみで、獣人はいなかったの?」
「ええ、いませんでした。」
ふーん・・・。あいつ、何してんだろう?エルフを止めなかったのか?
やはり一度システィーナに行くべきだろうか?いや、面倒事に首を突っ込むのは
止めよう。自衛だけにしておこう。
「カエデ課は、バート叔父さんの指示が出るまで現状業務でオーケーですので、
ダンジョンもアタックして大丈夫です。僕は神楽で頼まれた事をするね。」
解散して、僕はいったん自室に戻り、ダンジョンへ。
受付嬢にお土産を渡し、ドミニクの所へ。
「ドミニク、久しぶりー。」
「あら、カエデ。おかえりなさい。」
「これ、お土産のお酒。いろいろあったけど、それなりに楽しめたよ。」
「良かったわね、私の方もトラップで楽しませてもらったわよ。」
「結構、かかったの?」
「そうね、中には手強いのもいたから、ケルベロスを投入したわ。」
「抜かれた?」
「さすがに、突破できるのはいなかったわね。」
「あとで見るね。今日、来たのは銃を作らせてもらおうと思ってさ。」
銃にまつわる話を、ドミニクに話した。
「ガンナーズギルドか・・銃がドロップするようにしたから丁度いいわね。」
「グレイス2丁、マテバ1丁。それと兄用にライトニングホークを作ろうと
思ってさ。」
「ライトニングホークって、デザートイーグルの変形版でゾンビうつやつ?」
「そうそれ。リボルバーじゃない方が、扱い易いと思ってね。」
「デザートイーグルは作ってたから、それをいじれば?マテバは私のをあげる。
私もデザートイーグルにしようと思って。マガジンの方が素人向け。」
「それは助かるよ。早速、作ろうかね。」
「ええ。」
それから、2人で銃作りにはげむ。デザートイーグルは、ほぼ完成していた。
10インチバレルだ、カックイイ。僕も欲しくなった。
2人とも錬金術を使えるので、作業自体は早い。まず、ドミニクと僕の
デザートイーグルを、ドミニクのはシルバーノーマル。僕はブラックで
レイルドバレルジャケットとアウターバレルを付け、ダットサイトも付けた。
お、重い・・・。
「カエデ、ずいぶんとごついわね?」
「やりすぎたよ・・。重い、でもカックイイからオーケー。身体強化すれば
使えるよ。」
マガジンは2個。フルメタルジャッケットとシルバーバレット。
弾丸数が多いので、リボルバーよりリードタイムが長いのは仕方ないだろう。
それでも、自動精製なのは助かる。魔力はけっこう持ってかれる・・。
次はクロ兄のライトニングホークだ。本体はドミニクに頼み、僕はレイルド
バレルジャケットとダットサイト、マズルブレーキを作る。
完成した。ライトニングホークは思っていた以上にカックイイ、クロ兄にぴったり
な気がする。2人で集中して作ったから、午前中に3丁できた。
「ドミニク、昼食にしよう。」
「了解。」
トラップの映像が見たかったので、カモナで食べる事にする。
「カモナ。」
「かしこまりました。ドミニク様、お久しぶりでございます。」
「あら、カモナさん。久しぶり、不具合はない?」
「はい、お陰様で。」
「僕はナポリタンのするよ。」 小梅は天丼。
「私はステーキと日本酒を。」 昼間から酒とは、やるなドミニク。
「雑魚はあとでゆっくり見るから、ケルベロスを投入したやつお願い。」
「かしこまりました。」
映像が始まる。エルフ数人とハイエルフの子供・・これが長老の孫かな?
ゼツ君がでるとエルフが後づさる。それにハイエルフがなにか言って止める。
本物ではないと気がついたようだ。ハイエルフがニブルヘイムを使う、小梅が
ピクッとする。さすがはハイエルフといったところだ、成る程、全てを凍らせる
味方も凍ってるけどね・・。
「魔力の制御がまったくできてない・・・。」
これでは森そのものが死ぬぞ、なにやってんだ!ゼン君もゼツ君も仮想空間とは
いえ、森に影響がでない戦い方をしてるんだぞ!
「癇癪を起した子供ね、これは。で、これはマズイと思ってレッドケルベロスを
投入したの。」
「レッドケルベロス?」
「そそ、ニブルヘイムにはインフェルノよ。」
おお、炎のケルベロスが出てきた。いくら魔力量の多いハイエルフでも制御が
できなければ早々に魔力切れだ。それに・・炎に暖められたゼン君が動きだす。
勝負ありだな。ハイエルフは串刺しにされ、ポリゴン化。
仮想空間の外でしばらく気絶していたが、目を覚ましエルフ達に怒鳴ってる。
ああ・・だめなやつだ・・。バート叔父さん、こんなの相手に大丈夫かな?
まっ、半神が2人いるし問題ないか・・・。
馬鹿なハイエルフは大人に任せ、僕は銃作りだ。午後からはグレイス2丁を作る。
元々、型はあるので午前の作業より早い。
マリア先生はデザートイーグルでもいいかなと思ったけど、リボルバーでも使い
こなせるだろう。シュリ叔父さんはロマン系黒刀ゴーレムだから、プププ・・。
2丁完成。午前中に作ったやつと合わせてテスト。全て問題なし。
ただ、デザートイーグルとライトニングホークは連射すると反動で照準がぶれる。
身体強化と練習は必須。ドミニクに扱い方を教える。反動で後ろに吹っ飛ばされ
てたのは笑った。
「これはすごいわ、リプリーの方が反動が全然少ない。実弾銃が普及しないのも
うなずけるわね。」
「そうだね、まあ、それ以前に外の世界はこれから製造が始まるから、普及云々は
ずっと先だよ。」
「弾丸の問題もあるしね。」
「ありがとう、ドミニク。頼まれていたのは用意できたよ。ダンジョンには
しばらく来れないけど、大丈夫かな?」
「ええ、大丈夫よ。冒険者達は密林のアニマルモンスターで足止めね。塔に着く
のは、だいぶ先になりそうよ。それに、トラップのデータも反映させたいし。」
「了解。また来るよ、ご飯ちゃんと食べてね。」
「イエス、マム!」 誰が母ちゃんだ!
転位して自室に戻る。
「今日は、働いたね。」
「うん。」
小梅は寝てただけ。しかし、寝るのも仕事なのだろう。可愛いからオーケー。
自室でくつろいでいると、外が少々騒がしい。
「見てくる。」 小梅が窓から飛び出して行った。
僕も見にいくか、なにが起きてるかは予想できる。光彩(改)を発動して
屋根の上へ。
「シノさん。スコープを。」
「イエス、マイロード。」
どれどれ・・。ああ、やっぱりエルフ達か・・・。
長老の孫との話し合いは、どうしたんだろう?叔父さん達はいないな。
メイド隊で大丈夫って事かな?
んっ!ミルさんとルフさんも参加してる・・、スノさんが狙われてる?
「小梅、スノさんを助けてあげて。」
「わかった。」
メイド長はどこだ・・いた。ハイエルフに囲まれて動けないか・・。
「シノさん、麻酔弾。」
「イエス、マイロード。ATアクティベート。」
「消音もよろしく。」
バシュ、バシュ、バシュと、まず3発。囲んでいたハイエルフを3人眠らせる。
対マンならメイド長は余裕だろう、あとは森に侵入しようとしてるアホ共を・・。
あれ?桜花、なにしてるの?ばったばったとエルフ達を斬っている。
峰打ちだけど・・。桜花ってば、滅茶苦茶強いじゃん!
バシュ、バシュと2発、森に侵入しようとしてた奴らを眠らせる。
念話で桜花に話しかける。
「桜花って、強かったんだねえ。」
「カエデ!どこにいるの?」
「屋根の上。」
「さぼってないで、働いて!」
「了解。行こうか、夕霧、デル君。」
「はい、主。」
「イエス、マスター。」
光彩(改)を発動したまま、エルフ達をブッ飛ばす。指揮者は?
いた!あいつ・・。さっきの映像でボコられていたつじゃん。あれが孫?
アホか!こんな人の密集してる所でニブルヘイムを使おうとしてる!
僕は問答無用で両腕を斬り落とした。
「ギャー、腕があー。」 うるさい、デル君で眠らせ腕は氷漬けに。
指揮官の両腕がなくなり、動揺するエルフ達。さて全員、眠ってもらおうか。
そこに、バート叔父さんがやってきた。
「全員、そこまでだ!」 と言っても立ってるエルフは数人だがな。
バート叔父さんの隣には・・あれ?腕を斬り落とした奴と同じ顔のやつが
青ざめている。双子か?まあ、この場はバート叔父さんに任せ、僕はエルの
ところへ走る。
「エル、いるかい?」
「いるよ。外が騒がしかったみたいだけど?」
「エルフのアホ共が、襲撃してきたよ。」
「懲りない連中だね。神々の加護の中でここの人達にかなうわけないのに。」
「それはもう済んだんだ。聞きたい事があって。」
「フェンリルの子供の事かい?」
「うん。やつらスノさんを狙ってたんだ。」
「フェンリルが彼らにとって神という事は?」
「知ってる。」
「では、双子の場合どちらかが処分されるというのは?」
「・・・知らない。」
「ここにいるフェンリルが処分されそうになった。僕はそんなアホな風習には
断固反対でね。それで、ボックルに頼んでこの森に連れてきてもらった。
幸い、いい主に恵まれたようだし安心してたんだ。」
「ああベル姉は、優しいからね・・つまり生きていられると困る奴がいるって
事なの?」
「おおかた、世界樹が枯れてきているのをその子のせいにでもして、
丸くおさめようとしてるんじゃない?」
「ここにスノさんが居たのは偶然だよ、普段はベル姉に付いて帝都で暮らして
るからね。それにもう一つ、なぜエルフばかりで獣人がいない?牙王はなに
してる?なぜ、あいつはアホなエルフを止めないんだ?」
「カエデとイカルガの記憶のずれってどれくらい?」
「7年くらいかな。」
「成る程、じゃあ知らないのも無理はないか・・牙王は死んだよ。」
「なっ!うそだろ!あいつは死ぬようなタマじゃないでしょ!」
「残念ながら本当なんだ。獣人の寿命は人のそれより、さらに短い。」
「暗殺とかでなく、寿命で死んだって事?」
「そうだよ。次の代の牙王は無能でね、愛想を尽かした住人が出て行った。
もう、領の体裁もないよ。」
「そうだったんだね・・。」 静かに牙王に黙祷。
「エルフはそもそも、なんでこんな馬鹿な真似をしてるんだ?へたすりゃ戦争だ。
今は父さんの所で止めてるから『雷帝』の耳には入ってないと思うけど。」
「代表を名乗ってるのって、ハイエルフの双子じゃないかい?」
「ああ、同じ顔の馬鹿が2人いて、驚いたばかりだよ。」
「はは・・1人は優秀なほうだけど、もう1人はコンプレックスの塊でね。」
「世界樹のある森を汚染させるなんて、馬鹿意外言い様がないよ。どの辺が
優秀かわからないけど。さっき青ざめてたよ。」
「確かにそうだね・・。」
「長老と直接話したほうが、いいと思うんだよね。」
「寝てるよ・・・。」
「たたき起こすさ。スノさんは、もう僕の身内なんだ。さっき、奴らを
殺らなかった事を後悔してるよ・・・。」
「エルフ達の中にも世界樹を守ろうとしている庭師もいるから、できれば
穏便にお願いしたいなあ・・・。」
「わかってるさ。ところでエルは実際、どっちに住みたいの?」
「断然こっちだよ!向こうは次の精霊王に任せようと思ってるけど、
汚染が止まるまでは難しいかな。娘に申し訳ないしね。」
「了解。なんとかするよ。」
「悪いね。」
「気にしないで、エルにはいろいろ負担をかけてるから。まあ、恩返し。」
「小梅、終わった?」
「終わった。バートが捜してる。」
「すぐ戻るって、伝えて。」
「わかった。」
急いで戻り、バート叔父さんの所へ。
「捜してるって、小梅から聞いたよ。」
「ああ、そうだ。ラン君の腕の治療をお願いできるか?」
「お断りします!」
「なんでだ?」
「こいつの両腕を落としたのは僕だよ。あの密集地帯でニブルヘイムを使おう
としたからね。そんな、おバカは腕がないほうがシスティーナの為だよ。
そうだよな、双子の片割れ。」
「・・・申し訳ありません。」
「まあまあ、カエデちゃん。話はちゃんとつけるから、治してあげて。」
「マリア先生、こいつらはスノさんも狙ってたんだよ。僕はね、こいつらを
殺さずに眠らせた事をとても後悔してるんだ。」
「どういう事?」
「エルから聞いたんだけど、フェンリルに双子が生まれると片方を処分する
そうだよ、こいつらは。エルがそれを阻止してここに連れてきたそうだよ。
マリア先生、スノさんになんかあったら本気のベル姉が、システィーナを
滅ぼしちゃうからね。」
「本当なの、グドちゃん?」
「・・・はい。」
「グド君、ここまでの事をしておいて、それでもなを隠し事をされると
そもそも話し合いにならないのだが・・・。」
「申し訳ありません・・・。」
「バート叔父さん、この娘との話し会いは無駄だよ。叔父さん達との会談も
時間稼ぎだよ。長老にきてもらうしかないよ。」
「そ、それだけは・・おばあ様は今、眠りについておられます。」
「起こすのが、まずい理由でもあるの?」
「そ、それは・・・。」
「例えば、長老の封印したドラゴンゾンビを、そこのアホが復活させた。」
双子の片割れが、崩れ落ちた。ビンゴだ。
「説明できるか、カエデ?」
「そもそも、エルが居ないから世界樹が枯れるなんて事はないんだよ。
ハイエルフはそれを、精霊王がガーネットの森にきてるから、そして
たまたま里帰りしているスノさんを見て双子のフェンリルが生きて
いたからだと無理やり理由を付け、エルを連れ帰り、双子のフェンリル
を討伐したという事で、システィーナの民を納得させようとしたんだ。」
「ドラゴンゾンビは?」
「さっきも言ったけど、枯れるはずのない世界樹を枯らす程の瘴気なんて
限られるんだよ、ボタン先生。」
「それでドラゴンゾンビか・・。」
「なあ、片割れ。事態はもう長老を起こすしかない所まで来てるんだ。
早くしないとお前達だけでなく、国そのものが滅ぶぞ。」
僕は転がっている双子の片割れを見下ろしつつ
「デル君。」
「イエス、マスター。」
「エクストラヒール弾。」
ドウンと腕のない、ハイエルフを撃つ。凍らしておいた両腕がくっついて
元どおりに。
「バート叔父さん、僕ちょっと帝都にスノさん達を送ってくる。ここに居ると
危ないから。長老の件、お願いします。明日の朝には戻るから。」
「ああ、わかった。」




