AFTER
大人達は2次会に突入だ。子供の僕は少々疲れたので、離れで休もう。
「カモナ、コーヒーお願い。」
「かしこまりました。」
見事な庭園をボーっと眺めながら考える。さすがに今日は帰れないだろう。
戻ったらまず、銃作りだ。クロ兄のはライトニングホークにしよう。リボルバーは
リロードが面倒だし。あと結界石を人数分、不治の呪いは防げないかもだけど
ないよりはましだろう。元々の石はなんだろう?コウヤに聞いておかないとな。
クラマの魔導銃もロバートさんに発注しないと。ダンジョンアタックも再開だ。
しばらくは蜻蛉も使おう、意識しないとつい楽な方に流れてしまうから・・・。
ふぅ・・スローライフって・・・。
今回の神楽もめちゃくちゃ忙しかったよね。バロン爺ちゃんの件はしょうがない
けど・・。密教の奴らは余計だったな。バックに誰がいるんだろう?
邪神教もそうだけど、シヴァとラーガがそんな事するとは思えないし・・・
う~ん・・・おっといかん。大人達に任せよう。
「カエデちゃん、ここにいたんだ。」 クロ兄達が来た。
「お子様に2次会はきついから。」
「そりゃそうだね、あのね3人で話し合ったよ。」
「ん?卒業後の事?」
「そう。僕達3人は、神楽に住む事にしたよ。」
「そうなんだ。」
「家も使わないともったいないしな、クラマ師匠の道場は二つ返事でオーケー
もらえたよ。茨木和尚が設計するって張り切ってた。それに、封印術も
ちゃんと学ばないとな。」
「私は、紅葉師匠に弟子入りしたの。」
「えっ!」
「師匠の舞に、心を奪われたわ。」
「・・・さいですか。クロ兄もなんか目的あるの?」
「ないよ。」
「えっ!」
「帝都にいると、雷帝や聖女が婿殿ってうるさいし、ガーネットは産業革命で
忙しそうでしょ。」
「確かに・・。」
「だから、神楽でのんびり密教の相手でもするよ。スローライフだね。」
密教相手にスロライとは・・さすクロ。器がビッグだ。
「父さん達には?」
「帝都に戻ったら話すよ。特に反対される理由もないから大丈夫でしょ。」
はっはっはっと笑いながら、3人はどっか行った。なんなんだ・・・。
まあ、考えてみれば親達は当分、現役ばかりなわけだしクロ兄がいれば
爺ちゃんも婆ちゃんも安心だろう。あれ?なんかいい感じにおさまる、不思議。
「カエデちゃん、ここにいたんだ。」 おお、デジャブー。
ベル姉達が来た。今度はなんだ?
「楽しかったわね。」
「・・・そうだね。アイス食べる?」
「「「食べる!」」」
「なに一人で黄昏てんの?」
「黄昏てないよ!休んでただけ。」
「なに考えてたの?」
「いかに、スローライフを送るか、かな。」
「お爺ちゃんみたいね。」
「ほっとけ!」
「ねえ、カエデちゃんは実力を隠して生きていくの?」
「実力はよくわかんないけど、目立たないようにひっそりと旅をしよう
とは、思っているよ。」
「世界を変えるような力なのに?」
「そんな力はないよ。ただ、もし僕に力があるなら、それはガーネットと
タチバナの事だけに使うよ。ぶっちゃけると、それ以外はどうでもいいんだ。」
「カエデちゃんの身内で良かったわ。」
「そういうベル姉達は、どうすんの?」
「私達は、まだ学園に通わないといけないから、その間にドラゴンスレーヤー
になるのが目標ね。」
「ベル姉達なら、すぐになれるよ。」
神の眷族、2人もいるし。ベル姉は12歳にしてタチバナ流の皆伝だし、皆伝は
ボタン先生と2人だけだよ。母さんとシュリ叔父さんは妖刀に走っちゃったから
皆伝じゃないんだよね。
「村雨、使ってる?」
「使ってないわね。あげようか?」
「いらないよ、刀なら持ってるし。あっ、コートありがとう。ダンジョンで
着てるよ。」
「着てみせて。」
「まじ?」
「まじ。ついでにダンジョンスタイル見せて。」
「わかったよ。」 ベル姉の頼みにすこぶる弱い。
バサッとコート、ゴーグル、グローブ、ブーツにハートガードをつけ、
サービスで夕霧とデル君を装備する。
「「「キャー、カッコイイ!」」」3人にもみくちゃにされる。
「やっぱり私達も黒にかえましょうよ!」
「そうね、そうしましょう。」
「交渉よ!」
嵐のように去って行った。ダンジョンスタイルのまま、唖然として眺める。
「お疲れ様でした。」
「なんだったんだろうね?」
再びバサッと、普段着に戻る。ふぅ、まだ誰かきそうだな・・・。
「カモナ、夕飯にするよ。」
「かしこまりました。」
「カ・エ・デちゅわ~ん。さがしたわ!」
「どぁっ!母さん!」
「カエデ成分がエンプティなのよ、クンカクンカ。」
「やめてよ母さん、くすぐったいよ!」
「なにしてるの?カエデちゃん。」
「夕飯、食べようかなって所。」
「わたしも食べる!」
「了解。カモナ、母さんを承認して。」
「かしこまりました。」 母さんを連れて中に入る。
「うわーなにここ!家じゃない!」
「ガーネットの爺ちゃん婆ちゃんに貰った、テントだよ。」
「最近のテントはすごいわねー。」
「何食べる?モニターに出てるのなら何でも作れるよ。」
「ほえー、すごいわねえ。」
「僕は熟成肉のステーキにするよ。」
「私も。」 考えるのが面倒になったな。カモナがお茶を出してくれた。
「カエデちゃん、いろいろありがとね。」
「なにが?」
「いろいろよ。父さん達からとシュリ達から、あとクロスとベルから聞いたわ。」
「全部たまたまだよ、たまたま。」
「そうんな事ないわよ、カエデちゃんが絡むとなんかいい感じに収まる不思議。」
ステーキができた。
「食べよう、母さん。シュリ叔父さん渾身の熟成肉だよ。」
「おいひー、なにこれ?相変わらずシュリはすごいわね。」
「うん。神の料理人って呼ばれてるよ。」
たわいのない会話をしながらの、おいしいステーキ。たまに親子水いらずも
いいもんだな。父さん、いないけど・・。ちなみに九十九さんは帝都の屋敷
の守護で残ったそうだ。食べ終わりコーヒーを淹れてもらう。母さんには
アイスクリームも。
「おいしかったわ、カモナさん。」
「どういたしまして。」
「カエデちゃんって、イカルガ様なの?」
「ブー、ゲホゲホ、なんだよ突然!」
「ロイドが言ってたから・・・。」
「ああ、確かに僕の前世はイカルガだよ。」
「やっぱり、そうなのね・・。」
「でも、父さんにも言ったけど、イカルガはイカルガ。僕は僕だよ。」
「カエデちゃんはカエデちゃん、私がお腹を痛めて産んだ子よ。」
「そうだよ、母さん。」
「じゃあ、勝負しましょう!」
「なんで、そうなるの!」
「えっ!だって、幻の斑鳩流を使えるんでしょ?」
「使えるけど、7歳児だよ!死んじゃうよ!」
「それもそうね。母さんから、鈴音さんのすさまじさを聞いてたから、
楽しみにしてたのに・・・。」
「今は、魔力が足りなくてスリープ中。」
「スリープ中という事は、いずれ起きるのね?」
「まあ、先にはなると思うけど、そのつもりだよ。」
「起きたら勝負させてね!」
「わかったよ・・・。」
「絶対よ!」
そう言い残し、母さんは宴会場に戻って行った。まったく、でも母さんらしいや。
さっ、風呂入って寝よ。
「小梅、カモナの風呂入るけど来る?」
「行く。」
「イチとニイも誘ってあげて。」
「わかった。」
腹を出して浮かんでいると、みんな来た。みんなで腹を出して浮かんでると
氷牙も来た。
「なにしてるんだ?新しい修行か?」
「違うよ、気持ちいいからやってみなよ。」
「おう、わかった。」
氷牙はうまい事、尻尾を使って泳いでいた。
「やるな、氷牙。」
「フフン、当然だ。小梅ちゃん乗ってもいいんだよ。」
「乗る。みんなで。」
「えっ!ちょ、ちょっとまって。」
3人で乗ると氷牙はブクブク沈んでいった。なにをしておるのだ。
小梅達はイチのジェットで離脱。氷牙はイチのジェットに巻き込まれ、水中で
くるくる回っていた。突然、湯船から飛び出し
「ブハッ!本当に死ぬかと思ったぞ。」
アホだこいつ。しかしそんなアホの氷牙を僕はけっこう気に入っている。
競争したり、色々騒いでちょっとのぼせ気味で風呂から上がり
みんなでコーヒー牛乳。
「氷牙、これからちょくちょく戻ってくるから。」
「ほんとか?小梅ちゃんにしょっちゅう会えるのか?」
「会えるよ。櫻ママにも言っておいて。」
「わかった。櫻も喜ぶぞ。」
みんなが帰って、1人寂しく離れの寝室へ。ぐっすり寝れそうだ。
朝、目が覚めると、というか苦しくて目が覚めた。母さんに抱き枕にされていた。
死ぬかと思ったけど、イカルガの転生体とわかっても態度が変わらないのは
嬉しいな。なんとか脱出して庭へ。素振りをしよう、いや短槍の型の確認にする。
蜻蛉を出して振っていると、華姉がきた。
「見事ねえ、カエデちゃんって短槍使えるのね。」
「おはよう、華姉。剣よりこっちの方が得意だよ。」
「そうなのね。普段から使ってるの?」
「それが、つい銃を使ってしまって・・相手が魔法を撃ってきたらマリア先生から
もらった剣を使うし、硬い時はソードブレイカー使うしで、実戦で使った事
ないんだよねえ・・・。」
「ダンジョンでも?」
「うん。ダンジョンはIA達のストレス発散の為にアタックしてるだけ。」
「アス姉が言ってたけど、チャクラムも使えるんだよね。」
「バート叔父さんの希望で、一応は・・。」
「武器マスターにでもなるつもり?」
「やめて!真顔で聞かないで!それはマリア先生!鉄扇も使うんだから。」
あれ?あの鉄扇・・紅葉のだよな・・という事は神器じゃん!
「私、魔導より刀の方が得意なのよねえ・・・。」
「2刀流だもんね。そうか、華姉のパーティだとベル姉がどっかんどっかん、
アリ姉が脳筋で突っ込んでいく。」
「そうなの、必然的に私が後衛ね。料理人が怪我したらご飯食べられないし。」
「そうだなあ・・ポジション的には不満はないの?」
「ないわよ。2刀流はクラマ師匠の道場で教えてもらうし。」
「魔導の強化をしたいって事ね、ロッドは使ってる?」
「母さんから渡されたの、使ってるわね。」
「見せて。」
いいロッドだ。けど華姉の魔力量に対応できてない、クォーターだしな。
う~ん・・。グヘヘ・・いい事思いついた!
「カエデちゃん・・とても悪い顔よ・・。」
「あれ、そんな顔してた?ま、まあとりあえずサーキッド組みなおすよ。」
ぱぱっとサーキッドをダブルにする。トリプルはロッドがもたない。
「少しの間は、これでもつよ。でも華姉の魔力量にロッドが耐えられないんだ。」
「新しくするしかないのね・・。」
「その手もあるけど、新しい魔導銃を考えていて華姉にぴったりだと思うよ。
無属性、使えたよね?」
「ええ、大量の食糧を持ち歩くから使えるわ。」
「じゃあ、大丈夫だ。できたら持ってくから楽しみにしてて。」
「・・封印されるんじゃないでしょうね?」
「学園は、今のままでも問題ないんでしょ?」
「ないわよ、ダンジョンの深い所だと無理だけど。」
「んじゃ、深い所で使ってモニターして。」
「わかったわ。それと陰陽の太刀ありがとう。あれ、魔力で形が変わるのね。」
へっ?そんな機能はないぞ。まさか・・・。
「ちょっと見せてくれる?」
「ええ、いいわよ。」太刀を2刀にして構える。
ウソォ~ン・・アウトォー!草薙だ!しかも2刀。ちょっとボタン先生!
どうすんのこれー。
「華姉、まじでいざっていう時以外、絶対に使わないでね。お願いだから。」
「なんか知ってるの?」
「調べるから、少し時間ちょーだい。」
やばい、ボタン先生案件だ。ま、まあ後で話そう。
朝食、食べよう。華姉と連れ立って食堂へ。
全員そろっていた。




