WEDDING
朝、結局母さんの巨乳攻撃で目が覚める。まじ、死ぬから・・・。
庭で軽く運動をし、食堂へ。母さん以外は全員揃っていた。
「今日のスケジュールだけど、まず五重の塔で神前式を行い、あとは宗家の
会場で披露宴だ。」
日本の結婚式を簡略化した感じで、割りとあっさりしている。
全員和装で、女性は着物。母さん、間に合うのかな?ツムギ婆ちゃんが怒って
寝室に特攻したから、大丈夫だろう。
会場設営は五重の塔を茨木と紅葉が担当し、宗家の方はシュリ叔父さんが指揮を
して、最高の料理を用意してるとの事。桜花がポイントポイントに花を活けて
いる。これは結界でもある。
酒呑はともかく、紫丹さんには一生の思い出になるような式だといいな。
陰ながら協力しよう。どうせ無事には終わるまい。
大人数での移動になるので、馬車が何台もでて往復している。僕達も移動だ。
塔の中は意外に広く、結構な出席者だ。人化してるけど妖怪もたくさんいる。
なつかしい顔ぶれが多い。こっちの仕切りは茨木がやっている。
主役の2人が入ってきた。「おお・・・。」とか「綺麗・・。」とか感嘆の
声が聞こえる。たしかに、酒呑がかっこいい。誰だこいつ?である。もちろん
紫丹さんは美しい。さすがに角隠しはしてないが白無垢だ。
厳かに式は進行していく、クライマックスだ。
場の空気が変わり、正装した月詠が現れる。タチバナの主神だから当然なんだ
けど、天照やスサノオじゃなくてホッとしたよね。
ガーネット領の連中は初対面ではないので冷静だが、初めて月詠を見る連中は
もれなく金縛りにあっている。
月詠は2人に何かを語りかけ、加護を与え最後に柏手を打って、神気を散らして
消えていった。金縛り組が、いっせいに息を吐く。
これで神前式は終了だ。月詠が2人に何を言ったかは知らないが、とても幸せ
そうだ。いい式だった。
さて、僕は披露宴の前の露払いといこうか。女性陣は着物だし、クロ兄と
タケル兄に頼もう。クロ兄を見ると、頷いた。
さすが主人公。さす主。
「小梅、どうする?」
「行く。パパとママも行くって。」
「了解。クロ兄、タケル兄、行こうか。」
「うん。」
「ああ。」
父さんがシュッと来た。
「クロス、任せて大丈夫かい?」
「大丈夫だよ。タケルとカエデちゃんがいるから。」
「頼んだよ。」
と言って、またシュッと消えた。
僕達は急いで裏門をでて、これ以上は先に行かせない布陣を組む。
「桜花、結界お願い。」
「わかったわ。」
シュタッと、僕の隣に誰かが降り立った。
「カエデ、お久。」
「クラマ、久しぶり。」
「手伝う?」
「いや大丈夫だよ。人間の不祥事は人間が片付けないとね。相手が妖の時は
よろしくね。」
「わかった。じゃここでニューカエデを見てる事にするよ。」
「カエデちゃん、来たよ。」
あの姿と武器・・・。
「クロ兄、密教の連中だ。」
「成る程ねえ・・。」
「連中、人間と妖怪が仲良くされると困るか。」
「まあ、知ったこっちゃないね。小梅、氷牙、櫻。蹴散らして。
あっ、でも怪我しないでね。」
「まかせろ。」
「あれ?終わっちゃうかな。」
「いや、危ないの持ってるのが数人いるわ。」
「ああ、倶利伽羅のレプリカか・・・。」
「倶利伽羅は任せて!」とクロ兄が飛び出して行く。さす主。
「んじゃ、俺は愛染の弓の奴かな。」 タケル兄も飛び出して行く。さす主ツー。
「ニューカエデ、おいしいところ持ってかれちゃったね。」
「いいの、いいの。僕はモブを目指してるんだから。」
その他大勢の独鈷部隊に、両手銃のプレゼントフォーユー。
「ほぇ~、全弾命中してるよ。」
「デル君。」
「イエス、マスター。」
銀貨3枚をスロットへ。ドチュ~ンと音がしてLEDが光る。
「わお!なにそれ!」
雷と氷を使えば、氷牙ファミリーの所業に見えるだろう。「どいひ~。」
「雷弾。」ドウンと6人消えた。
「氷弾。」ドウンと5人が凍る、小梅が踏み潰す。
「RG弾。」パリパリ、ドウンと10人が吹っ飛ぶ。
「ねえ、どこがモブなのさ!」クラマ突っ込む。
「ふぅ・・・。」
「なにひと仕事終えた風になってんの!」
おや?法術が飛んでくる。桜花の剣で法術を消し、襲ってくる坊主どもを
ばったばったと・・とはいかず。
「あれ?剣は苦手?」
「そうなんだよっ、と。」 とはいえ遅れをとる訳ではない。
「う~ん、めんどいな。ラムさん。」
「はい、主人。」
「X5でいってみよう。」
「チャクラム・・武器のデパートやあ。」
10枚のラムさんが坊主共を斬り裂いていく。ガッキーン、んっ!弾かれた。
「クロ兄、タケル兄。機甲武装の奴がいる!」
「「まじ?」」
「まじ。小梅、マリンのクナイ解禁。僕も使う。機甲武装の奴らを片付けて。」
「わかった。」
僕もマリンの剣に替える。高周波ブレードがブーンと音を立てる、ふりずらい・・
あっ!封魔ブレス外すの忘れてた。いかんいかん、おっ!刀感覚でいける。
「あれ?カエデ、昔に戻った?」
桜花の剣で苦戦してたのは、このせいか・・。マリンの剣の音が変わった。
ブーンからズイーンだ。よっし、機甲武装なんぞたたっ斬る。
「ああ~、小梅。1人残してえ~。」
「遅い!」 梅ツンったら・・。
「斑鳩流、一閃」 真っ二つだ。
雑魚は片付いたな。クロ兄は・・もう終わるな。早速、ラプラスの盾を使い
こなして法術をリフレクトしてる。さすが天才。
タケル兄は・・げっ!シュリの黒刀が草薙になっとる。
「ねえ、カエデ。あれって・・・。」
「草薙的な、なにかだね。」
「やっぱり・・じゃあ彼は・・。」
「本人も知らない秘密って事だね。」
「了解。みんな強いね。」
「あの2人は主人公だからね。そうだ、クラマは2刀流も教えれるよね?」
「うん。クラマ流だけど。」
「従妹に、陰陽の太刀を渡したんだ。いつか尋ねるから、教えてあげて。」
「いいけど・・じゃあ報酬にカエデと同じタイプの魔導銃ちょうだい。」
「了解。近々、鞍馬山に届けるよ。」
「商談成立だね。」
終わったようだ。アースコントロールで穴を掘り坊主だったものを
アンデット化しないように燃やす。
「デル君。」 銀貨投入。
「炎弾。」
青い炎の弾丸3発。ドウン、ドウン、ドウン。骨も残さないよ。
「クラマ、ひと扇ぎしてもらっていい?」
「いいよ、サービスだ。」
青い火柱が昇った。さすが火伏の神。
「クロ兄、タケル兄。お疲れえ。紹介するよ、大天狗のクラマさんです。」
「「えっ!!」」
更地に戻して、宗家の披露宴会場に向かう。
「氷牙、強くなったねえ。」
「そうだろ。夏月にアドバイスをもらって修行したからな。」
「半分以上は、氷牙一家が片付けたからな。」
「カエデちゃんの銃もすごかったねえ。」
「実弾銃は趣味なんだ。バート叔父さん達の分、作るの頼まれてるから
クロ兄も作っておく?」
「使えるかな?」
「練習はいるけど、クロ兄だったらすぐ使える様になるよ。」
「じゃあ、お願いしようかな。」
「了解。ガンナーズギルドができるから登録だけでいいからお願い。」
「いいよ。」
クロ兄と銃の話をしている時、タケル兄はクラマに土下座していた。
「弟子にして下さい。」
「どうしたんだい、急に?」
「クラマ様の伝説はタチバナ家の書物に書かれており、正直、本当に存在している
とは思っておりませんでした。」
「まあ、無駄に長生きしてるけど・・。君は跡取りじゃないの?」
「はい、そうです。でも宗家を継ぐのはずっと先です。これからの神楽の在り方を
考えると、先程のような事も増えていくと思いました。」
「充分、強かったけどねえ・・。」
「クロスとカエデ、猫又達がいてくれたので被害を出さずに収める事ができました
が、俺1人だったらと思うと・・力不足を痛感しました。」
「成る程ねえ、カエデはどう思う?」
「う~ん、気持ちはわかるけど・・。あんまり1人で背負い過ぎるのは
どうかと思うよ。そうだなあ・・クラマさあ、神楽に道場作ってよ。」
「ああ、その手があるか。」
「7歳児の僕が言うのもどうかと思うけど、タケル兄はまだまだ若いんだから
いろんな事を吸収する時期だと思うんだよね、その中にクラマ流があるなら
道場を開いてもらえば、タチバナ流、封印術も同時に学ぶ事ができるよ。」
「カエデちゃんが大人すぎて、兄ちゃんちょっと悲しい。」
「クラマ師匠、道場を開いてくれるんですか?」
「いいけど、清春君とツムギ君にはちゃんと君から話すんだよ。」
「わかりました!」
爺ちゃんも婆ちゃんも孫には激甘だから、速攻作るだろう。
会場到着。お腹空いた。
もう宴は始まっており、丁度、紅葉達の舞が始まるところだ。ナイスタイミング。
和楽器の美しい音色の中、お弟子さん達の舞がはじまる。おお・・たくさん
練習したんだろうなあ。舞が終わり拍手喝采。いよいよ紅葉の舞だ。
静かな笛の音が鳴る中、ゆっくり妖艶に舞い出す。だんだん、音楽が激しさを
増す、それに合わせて紅葉の舞も激しさを増していく。
あ、あれ?炎が見えるんですけどお!
隣に座るクラマが「カグツチ様・・」とつぶやいている。
知らなかったよ。紅葉って鬼じゃなくて神だったんだ・・迦具土命・・。
死んだ事になってるから紅葉として生きているのか。
だとすると、あれは本物のヒノカミ神楽・・・。
この神楽という地で、2人の結婚式にもっともふさわしい舞だ。
舞が終わり静かに礼をする紅葉。会場が静まりかえっている。そりゃあ神気
だだもれだし・・。クラマが立ち上がり拍手をする、これで神気は散る。
その拍手を合図に会場に拍手喝采がこだまする。
僕もスタンディングオベーションだ。すごいな紅葉は・・茨木のデザインも。
夏月だってそうだ。酒呑はあれだけど・・ただのリア充だけど・・。
密教や教会が存在するのは、人間の嫉妬や妬みや、より優れた者に対する
恐怖なんだろうな、それを物量で支配か・・くだらんな。
まっ、そういうのは大人達や主人公達にまかせて、僕は料理を堪能しよう。
酒呑と紫丹さんは、ニコニコと幸せそうだ。
紅葉は、母さん達に捕まっている。合掌。
茨木は、父さん達に捕まっている。合掌。
クラマは兄姉と従妹達に捕まっている。合掌。
コウヤと夏月もニコニコしながら酒を飲んでいる。
バロン爺ちゃんは、一つ目入道と腕相撲してる。なにしてんだ!呪いあがりが!
小梅達も両親に甘えられて幸せそうだ。
あれ?これは最終回級の大円団では?
「何、大円団という顔をしてるんですか?」どんな顔だ!
「だって見てよ、婆ちゃん。みんな、楽しそうだよ。」
「この光景の全ての起点は、あなたですよ。」
「そうよカエデ。私とバロンは最後と思ってここに来たの。それがどう?
カエデのお陰でまだ何回も神楽に来れる位、元気になったのよ。」
「ヘンリエッタ婆ちゃん、本当に良かったよ。ツムギ婆ちゃん、これから
大変だろうけどがんばって、手伝える事があれば手伝うから。」
「そうですね・・鬼とか妖怪と呼ばれる者達との共存。むずかしいですね。」
「密教の連中はまた来るだろうし、ここが繁栄する程、将軍家もほっとけなく
なるだろうし・・・。」
「当分は隠れ里として、なるべく目立たないようにするしかないでしょうね。」
それしかないよなあ、別に国を起こすわけじゃないし。父さん達の時代、クロ兄達
の時代でゆっくり変化していけばいいよ。そろそろ締めだ。
清春爺ちゃんの挨拶だ。
「お集まりの皆様、今日は酒呑童子と紫丹の為にお越し頂いて
ありがとうございました。種族を越えた婚姻ですので、様々な困難が起こる
でしょう。しかし、我々はもちろんお越し頂いている皆様の協力があれば
必ずその困難を乗り越える事ができる。私はそう信じております。
2人とも、おめでとう。末永く幸せに。」
拍手が沸き起こる。余計な事を言わない爺ちゃんらしい挨拶だ。
でもきっと、ここにいる鬼にも妖怪にも人間にも今後の神楽の在り方は
伝わっただろう。




