THE DAY BEFORE
宗家からの脱出を成功させ、商店街で料理の材料を買い込んで桜花の所へ。
「桜花いるー。」
「いるわよ。」
「焚火させてもらっていい?昼においしいもん作るから。」
「いいわよ。」
麻ひもを解いて火種に、ファイヤースターターで火を着け枯れ枝を置いて
焚火を育てる。ふぅ、やっぱ落ち着くな。
式が終わってイド君で帰れば、明日中にガーネットに戻れるだろう。
戻ったらしばらくは、ゆっくりしよう。
ゆっくり、叔父さん達の銃作りをしよう。カモナで作れるようにしよう。
あれ?ゆっくりかな?まあ、銃は趣味だからノーカウント。あとは・・
ベストプレイスの整備もしよう、みんなの結界石も作らないとな。
「桜花、エルがガーネットの森にいるよ。」
「ええ、昨日行ったから会ったわよ。いたく、森を気にいってたわね。」
「そうなんだよ。世界樹の苗を植えるって。」
「ますます、あの森、聖域になるわね。」
「エルフと揉めなきゃいいけど・・。ハイエルフとか出てきそうだね。」
「絶対来るわよ、無意味にプライド高いから。」
「やだなー、ゆっくりしたいのに・・・。」
お昼は、ビーフストロガノフだ。
「カモナ、ライスの用意、お願い。」
「かしこまりました。」
「雪月花、返したというか取られたんだよね。」
「そうですね。」
「ガーネットに戻ったら、新しく作ろうよ。」
「そうですね、その方がいいですね。雪月花のデータはございますし。」
「じゃあ、工房を作っちゃおう。」
「かしこまりました。」
「カエデ、私も刀が欲しい。」
「えっ!桜花、刀を使えるの?」
「使える。桜花流。」
「まじか・・刀かあ・・。ガークさん刀を打てるかな?そういえば、
神楽って刀はどうしてるんだろう?」
「確か、有名な刀鍛冶がいるはず。」
「そうなんだ、僕も興味があるからこれから行ってみよう。」
という事で昼食の後、桜花と神楽へ戻る。
「どこにあるんだろう?神楽は小さい村だから、すぐわかると思うんだけど。」
八百屋のおばちゃんに、聞いてみよう。
「おばちゃん。」
「カエデちゃん、さっき買って行ったばかりじゃないかい。」
「ちょっと、聞きたい事があって。鍛冶屋ってどこにあるの?」
「ああ、忠正の所だね。村はずれに行くと忠と書いた暖簾があるから
すぐ、わかるよ。」
「ありがとう。また、買いにくるよ。」
「忠正は変わり者だから、気を付けるんだよ。」
「了解。行ってみるよ。」
変わり者か・・。まあ、あたってくだけろだ。
しばらく歩くと、暖簾に忠と書いてある店が見えてきた。ここだな。
では、突入。
「たのもー。」
「いらっしゃいませ。」
あれ?普通だよ、接客専門の店員さんかな?
「すいません、忠政さんいらっしゃいますか?」
「忠政は私ですが・・何か御用ですか?」
「そうなんですね。刀を見せてほしくて。」
「申し訳ありません、子供に刀はちょっと・・危ないので。」
まあ、普通はそうだよね。
「あっすいません、申し遅れました。僕はカエデ・ガーネットと申します。
タチバナ家の縁の者です。」
「まあ、タチバナの・・。それでも、子供に刀は危ないからだめです。」
そうか、頑固な人なんだな。逆にタチバナの名前を聞いても、態度が変わらない
のは好感がもてる。
「この子のではなく、私のだ。」
えっ!声の方を見ると大人の桜花がいた。いつの間に・・・。
「おや?いつから居ました?」
「最初から。」
忠政さんが不思議がってはいるが、態度は変わらない。肝が据わってるな。
「それでしたら、どうぞご自由にご覧下さい。」
「そうさせてもらう。」
2人で並んで刀を見る。う~む・・・。
桜花と顔を見合わせる。そうだよね・・・。
「すまんが、ここにあるのが全てか?」
「はい、そうです。」
「そうか邪魔したな、ありがとう。」
店を出て少し歩き、子供桜花に声を掛ける。
「どう思う?」
「どうもこうも、斬れない刀はいらないわ。」
「そうだよね・・。」
「なにか理由があるかもしれないけど、私は斬れる刀が欲しいだけ。」
「了解、じゃあ僕の屋敷へ行こう。蔵に刀が何本かあったはず。」
神楽にあったイカルガの持ち家のラスト。ここは一番小さい。庭から見る
月が美しかったのと、庭自体がとても美しいからとっておいた。
小型の日本家屋で割りと鈴鹿山にも近い。
ブレスをはずし門に近寄ると、IAのドムルが結界を解除。
「おかえりなさいませ、イカルガ様。」
「ただいまドムル、今はカエデだから訂正しておいて。」
「かしこまりました、カエデ様。」
神楽に単独で来る時は、ここをねぐらにしよう。庭はドムルが管理してくれてた
ので、変わらず美しい。早速、蔵に行ってみる。
なにか面白い物があったら、僕も持っていこう。
「桜花、業物が何本かあるはずだから、気に入ったのあれば持ってって。」
「ありがとう。見てみる。」桜花は熱心に刀を見ている。
「カモナ、お茶をいれてもらえる。」
「かしこまりました。」
「ドムル君、これからちょくちょく帰るからよろしくね。」
「かしこまりました。」
桜花が一振りの刀を持って、出てきた。
「なんで、これがここにあるの?」
んっ?その刀は・・なんだっけ?覚えてない。
「ごめん、全然、覚えてない。」
「これは、私が昔使っていた刀よ。銘は桜美。」
「そうなんだ。まじで覚えが全くない。」
「じゃあ、もらってもかまわないわね?」
「もちろん。」
確かに、大人桜花に似合いそうな細みの刀だ。
おやつに、苺ショートを食べながら、桜花流の事を聞く。
昔は、弟子も何人かいたそうだ。
「明日はもちろん、参加するよね?」
「ええ、ツムギに生け花を頼まれてるから、早めに行くわ。」
婆ちゃん、花を生けるのに大精霊を使うなよ・・・。
「ドムル君、管理お願い。」
「かしこまりました。」
「送ってく?」
「平気よ。」と言って、その場から消えた。
さて僕も、そろそろ宗家に戻ろうか。
「ただいまー。」
「あら、お帰り。カエデちゃん。」
「アス姉、婆ちゃんの話は終わったの?」
「ええ、驚きの連続だったけど実際はタケルが大変って感じだから。それに、
シュリ兄の後の話だから、すごく先の話ね。」
「そうだね。」
「それにしても、カエデちゃんの方が驚いたわ。神楽の事の全てに
絡んでるんだもの。」
「たまたまだよ。それに全ては僕のスローライフ未来の為だよ。学園を卒業
したら、速攻で旅にでるから。」
「父さんから聞いたわ、少しうらやましいわね。」
「ガーネットで内政するの嫌なの?」
「嫌じゃないわよ学園を卒業したら、まあ、あと数か月だけど帰るわよ。でも、
父さんは当分、現役でやれるし母さんもいるしね。」
「確かにね。僕が言うのもなんだけど、若いうちに世界を見て回るのも
いいと思うけどね。」
「そうね、正直、本気で考えてるわ。クロやタケルはどうするか知らないけど・・。」
「3人で話してみれば、まだ数か月あるんでしょ?」
「そうねそうするわ。ありがとう、カエデちゃん。」
「どういたしまして、ところで他の人達の居場所教えて。」
「なあに、隠れるの?」
「夕食までの間、そうしようかと・・・。」
「じゃあ、離れのリビングはだめよ。父さん達がまだ打ち合わせをしてるから
巻き込まれるわよ。実際、カエデちゃんを探してたし。」
「おお、ありがとうアス姉。危険がデンジャラスだよ。」
「隠れるなら母屋の方がいいわよ。」
「そうだね、そうする。」
僕は念のため、光彩(改)で消えた。
「消えたわね、カエデちゃん。」
執務室の前で解除してノック。
「いるよ、どうぞ。おやカエデ、どうしたんだい?」
「爺ちゃん、かくまって。」
「ははは。シュリが探してたよ。」
「やはり、危険がデンジャラスだよ。」
「バロンの事ありがとね、僕からもお礼を。それにしても、よくエリクサーが
手に入ったね。」
「ガーネットの森がいろいろあって聖域化してるんだ。それで精霊王がエルフの
森より過ごしやすいって言って、遊びにきてたんだよ。」
「なんか現実感のない話だけど、実際エリクサーが手に入ったわけだしね。
ツムギとヘンリエッタが決闘を始めて大変だったよ。アスカちゃんがいて
助かったよ。」 と遠い目をした。
「はいこれ、若さの秘訣。いざという時に飲みものに入れて飲んで。」
「・・・はあ、誰にも言えない。特にツムギ。」
「そうだね、封印術を使う以上呪いは避けて通れないもんね。美容に使わない
方がいいよ。同じ物は後で、ガーネットの方にも渡しておくよ。」
「やれやれだよ。そろそろ食堂に行こうか。」
「うん。」
今日はビッフェスタイルだ。明日の予行練習も兼ねているとの事。
食堂に行くと、クロ兄達と夏月も含めた女性陣がいた。
「カ・エ・デちゅわ~ん!」 母さんに早速捕まった。
「夏月のところは、どうだった?」
「最っ高~よ!帝都とガーネットに支店を出してもらう事にしたわ!」
マリア先生とボタン先生を見ると、サムズアップしていた。
ヘンリエッタ婆ちゃんも満足気だ。
「夏月、支店はいいけど人はいるの?」
「ガーネットはコウヤが、帝都はユキが担当する事になった。」
「そうなんだ。」鵺と座敷童子のトレーナーって・・・。
「あれ?キヨはどうすんの?」
「私の所で、いろいろ学ぶ事になった。」大嶽丸の弟子の雪女って・・。
なんか全員つやつやしてるし・・丸く収まってなによりだ。
そこに、バロン爺ちゃん率いるベル姉チームも帰ってきた。
「カ・エ・デちゅわ~ん!」 今度はバロン爺ちゃんだ。
「昨日の今日だよ!あんまり無理しないでね。」
「大丈夫よ、カエデちゃん。私達が止め役だったんだから・・。」
アリ姉が遠い目をして言う、他の2人も頷いていた。
「うっかり、ダンジョンを制覇するところだったわ・・・。」
「新しいの試せたの?」
「やばいわね、学園で使ったら大惨事よ。」
「バロン爺ちゃんから、封印命令がでたわ。」
「カエデちゅわん、ありゃやばいぞ。12歳の子供が持つもんじゃないわい。」
「まあ、そうだよね。ドラゴンとやりあう時にでも使ってよ。」
「そうする・・・。」
そして遂に父さん達が来た。
「カエデちゅわ~ん。」 父さんに捕まった。
「バートとシュリからいろいろ聞いたよ。ありがとね。」と小声で言われた。
バート叔父さんとシュリ叔父さんを見ると、サムズアップしていた。
こちらもいろいろ、丸く収まったようだ。助かった・・・。
心おきなく夕食を堪能しようではないか。
それにしても、ガーネットとタチバナが集うこの光景は濃いな、濃厚だ。
「カエデ、胸焼けしてそうな顔してますよ。」
「ツムギ婆ちゃん、だって濃くない?普通の人がひとりもいないよ。」
「私からすれば、あなたがそのトップですよ。」
「まじで・・。」僕は膝から崩れ落ちた。
「バロンとヘンリエッタの件、ありがとうございました。」
「大事にならなくて良かったよ。せっかくの式が暗くなる所だった。」
「そうですね。ところでエリクサーは全部使ったのですか?」
女性陣が一斉にこちらを向く。・・・しまった。怖いよ・・・。
男性陣はみな、目を逸らした。薄情者たちめ・・・。
「そうだよ、呪いが強力だったからね・・・。」
女性陣が疑いの目に変わった・・だから、怖えーって。
「ほ、本当だからね・・みんな、夏月の所でがんばって・・・。」
「そうですね・・・。」
ふぅ、あぶねー。清春爺ちゃん、挙動不審にならないで、ばれるから・・。
「婆ちゃんもありがとね、紅葉も茨木も生き生きしてたよ。」
「こちらにもメリットがたくさんありますから、お気になさらず。」
なんか、ツムギ婆ちゃんがラスボスに見えてきたよ。まっ、みんなハッピーなら
それでいいか。さて、お子様は風呂に入って寝よ。
そっと、離れのフラットハウスに戻る。途中で父さんに再び捕まった。
だが、丁度いい。
「父さん、これエリクサーの残り。何かあったら使って。」
「やっぱり、持ってたんだねえ。受け取るのが怖いよ。清春様、挙動不審
になってたし。」
「ばればれだよね・・・。」
「カエデちゃん、父上と母上の件は助かったよ。賢者なんて称号があっても
だめなものはだめだと思い知ったよ。」
「いやあれは、賢者とかでも無理だよ。正直、僕だって無理。清春爺ちゃんが
呪いってわかったのと、ガーネットの森に精霊王がいたっていうものすごい
確率の偶然だよ。」
「その偶然を引き寄せたのは、カエデちゃんだと思うけどね。デル君、封魔ブレス
だけでも膨大な利益をガーネットにもたらしてるんだよ。それに加えて、酒、
燻製、完全回復薬、龍神丸。きわめつけはドルトエンジン。」
「信じてもらえないかもだけど、たまたまなんだよ。父さん、バート叔父さんから
聞いたと思うけど、僕は学園を卒業したら旅したいんだ。全てはその為。」
「うん。バートから聞いたよ。本当は僕の後を継いで宰相になって欲しかったけど
たった半年の間に起った事だけでも、カエデちゃんは宰相の器を完全に越えてる
しね。止めはしないよ、母さんには折を見て話しておくよ。」
「ありがとう、父さん。僕はただスローライフを送りたいだけなんだ。」
「わかったよ。最後にひとつだけ・・・君は何者なんだい?」
「バート叔父さん達が、なにか言ってなかった?」
「カエデちゃんはイカルガ様の転生体ではないのか?って。」
「父さん、その通りだよ。僕の前世はイカルガだ。だけど、父さん母さんの子の
カエデだ。イカルガの能力や知識を引き継いでるけど、便利だから使おうか位
で、イカルガはイカルガだし僕は僕だよ。」
「ははは・・。バートの言っていた通りだ。」
「とりあえず学園では中の中を目指して、やっかい事には関わらないように
するから。」
「了解。でも帝都にきたら剣術はちゃんと学んでね、剣が苦手だとマリアが言って
たから。あと、刀術も母さんに合わせてね。」
「そうなんだよね。なまじイカルガの知識があると刀に寄っちゃうんだよね。」
「カエデちゃんが帝都に来るのが、本当に楽しみだよ。」
「はあ・・僕は憂鬱なんだけどね・・・。おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
父さんは食堂に戻り、僕は風呂はいって寝た。
やっと、やっと結婚式がはじまる・・・。




