IMPROVEMENT
朝いつも通り目覚める。よし、頭は痛くない。
でも、大事をとって素振りだけにしよう。いや、蜻蛉の型の確認をしよう。
3人はまだ寝てる。ひとつ増えた祠に手を合わせてから、型を始める。
だいぶ筋力がついてきたな。槍先がぶれない。よし、次は・・。
「ラムさん。」
「はい、主。」
「X10の練習をしよう。」
「わかりました。」
とと・・う~ん、やっぱ一番むずいな。パスを操るのは壁みたいのがあって
それを突破できれば、自在に操れると思うんだけど・・。学園では桜花の剣と
ラムさんを使う予定だ。他のはちょっと強力すぎる。
「あのう主人、私ちょっと考えたんですけど。」
「なんだい、ラムさん?」
「主人は、パスにこだわらなくてもいいと思うんですよね。」
「どういう事だい?」
「ようは私を操るのは、細い糸状の物ならなんでもいいのでは?」
「他に糸状の物なんてあるかな?」
「主人は魔力が豊富だと思うんですよね。」
「!」そうか、ラムさんの言いたい事がわかった。
「魔力コントロールで、糸状に練り上げる。」
いけるかも、というよりパスを使うより感覚的にわかりやすい。
「ナイスだよ、ラムさん。明日の朝、やってみよう。」
朝食をたべないと大きくなれないからね。
「小梅、朝食いくよ。」
「うん。」 3人が庭にやってきた。
「行こう、何たべようかな?」
「和食。」
「私もですう。」
「俺もだ。」 3人とも神楽っ子だもんな。
「3人とも和装が多いもんね。」
後で聞いたら、別に好んで和装にしてるわけではなく、人化したら勝手に
なるらしい。しかも同じ柄にはならない。人化の七不思議だそうだ。
僕はホットドッグとオムレツ。みんなは予告通り和食。
もちろん、旨い。「ウマウマ。」
食堂は昨夜の喧騒がうそのように静かだ。と思っていたらレイさん達がきた。
みんな食べ終わったらミーティングだ。
関係ないけど、この食堂の窓から見える景観がすごい。苔むした森が見えるのだ。
落ち着くなー。
さあ、ミーティングを始めよう。
「昨日のどさくさに紛れて、全て許可を取りました。」ワーパチパチパチ。
「ですので、この後イルマさんとミロさんのロッドをバージョンアップします。
2人は今日、ロッドに慣れてね。」
「「わかりました。」」
「次に、アマネさんとユキナさんの件もマリア先生から許可をもらいました。
僕も用があるのでいっしょにガークさんの所へ行きます。」
「「わかりました。」」
早速、2人のロッドのバージョンアップだ。魔力量が不安なので、おっ、2人とも
封魔ブレスを着けてる。得意魔法と希望を聞いてサーキッドを2枚組む。
速射スピードを上げ、広範囲のヒールも使えるようにする。5分で完了。
正直、ロッドの素材があまり良くない。これは・・。
「イルマさん、ミロさん。バージョンアップはしたけど素体があまり良くないから
長くはもたないよ。そこで、予定を変更して2人もいっしょにガークさんの所へ
行こう。思い切って、新しいロッドを作ります。」
「それはありがたいんですけど、ガークさんの所は木工もやってるんですか?」
「やってないよ、2人のロッドはミスリルにします。木より重いから最初は
大変かもしれないけど、長い目でみるとお得だよ。」
「「わかりました。」」
「慣れるまでは、これと併用してね。馬車の用意をお願い。」
「ガークさん、ガークさん。」
「おお、カエデ。今日は大人数だな。小梅ちゃんのクナイ、できてるぞ。」
「ありがとう、フォンダンショコラ作ってきたよ。お茶にしよう。」
「野郎ども!茶いれろ!」
全員でフォンダンショコラ。カモナが温めておいてくれた。
「これはなんとも、溶けてるチョコがうまい。」
メイドチームも喜んでいる。
「これ、奥さんの分。食べる時は少し温めて。」
「ありがとよ、カミさん、カエデのお菓子のファンになっちまってな。さて、
用件はなんだ?」
「みんなの武器の相談と発注かな。」
「話てみろ、誰かメモをとってくれ。」
「今、ミスリルの在庫ある?」
「そうだな・・剣2本分ってとこだな。」
「じゃあ、それで剣1本とロッド2本いけるかな?」
「剣のサイズにもよるが、たぶんいける。」
「アカネさん、剣を。」
「はい。」
「現状これを使ってるんだけど、あと10CM程長くしてほしいんだ。
重くなるのは困るんで、ミスリルで作れば軽くなると思って。」
「逆にこれより軽くなっちまうが、いいのか?」
「あっ、はい、軽い方がいいです。」
「よし、わかった。刻印はどうする?」
「刻印ですか?では、カエデ様の刻印を。」
「えっ、僕?普段はガーネットかタチバナだけど、せっかくだから個人の刻印を
作っちゃおうか。」僕はメモに描いて、ガークさんに渡した。
「どれどれ、これは鳥か?」
「鳩だよ。」これ以降、僕がらみのものには、この刻印が入るようになる。
「了解。次は?」
「イルマさん、ミロさん。木製のロッドを。」
「ふつうだな。」
「ふつうですね。僕がサーキッドを組むと、この辺にサーキッド2枚が浮きます。
ですから、この辺にそれを囲う輪があればカッコイイかなって。」
「おお、カッコイイな。刻印はこれでいいか?」
「「はい!」」
「ユキナさんは、スローイングナイフを20本。」
「20本は多くないか?10本あれば十分だと思うぞ。」
「そうなの?」
「はい、10本で大丈夫です。」
「形は親父といっしょでいいか?」
「できれば、ひとまわり小さくしていただけますか。」
「わかった。素材もいっしょでいいな?」
「はい。あと、刻印もお願いします。」
「ナイフ用のホルダーある?」
「あるぞ。」
「じゃ、それも。」 これでいいかな・・。
「1週間後に取りに来てくれ。」
小梅のクナイを受け取り、屋敷に戻り解散。
僕達は自室に戻りカモナへ。
「カモナ、昼なんかある?」
「大食堂と同じものは用意できます。」
「そうなの?すごいね。」モニターに食堂のメニューが映る。
「僕はカルボナーラとコーヒーを。小梅は?」
「生姜焼き定食と緑茶。」 しぶいぜ!
「できたら呼んで。」
「かしこまりました。」
小梅を連れて訓練場へ、クナイとマリンさんの種を合体させる。
10本あるけど、どうなるんだろう?
1本に種を近づけると、種はクナイの中に。蔦の模様が入りだす。
おっ!10本全部にはいった、ユニットとして認識されたようだ。
早速、使い心地を試す。ブーンといいながらクナイが飛び交う。
結果はやばすぎるものだった。
「小梅、これ使うの1本かせいぜい2本にしておいて、しかもフィニッシュ用
にして。10本はやばすぎる。」
「・・・うん。」 小梅自身もびっくりしてたもんな。
「昼食の用意ができました。」
リビングへ戻り、カモナが作った料理を食べる。
「うまい!」
「ウマウマ。」
執事カモナがニコニコ見ている。
カモナ万能説、爆誕。ここに「神の食堂」がもうひとつ誕生した。
「小梅、イチとニイに連絡して。」
「うん。」
門の所でレイさん達と合流、ドルトさんのところへ。
「みなの武具の件、ありがとうございます。」
「私達もカエデ様の刻印を入れようって、話してたんです。」
「刻印?鳩の?」
「「それです。」」あれ?なんか怒ってるような・・・。
「もちろんだよ、もちろんだとも・・・。」
「「・・・。」」 なんか、気まずい・・。
「いやだって、2人とも龍と桜の刻印入ってるじゃん。」
「確かに・・入れる場所が・・。」
「でしょ、新しいのを作る時に入れればいいよ。」
「ドルトさん、ドルトさん。」
ガタンと音がして、そちらを見ると・・・ゾンビだ。
「レイさん、リリーさん!」2人が僕の前に飛び出す。
「デル君。」
「イエス、マスター。」
「浄化弾!」パンッと音がして、ゾンビが・・成仏しないだと・・。
「か・・か・・・。」
か?動かなくなった。近づいて確認していたレイさんが驚いている。
「ドルト様です!」
「えっ!安らかに眠れ、ドルト君。君の意志は僕が引き継ぐ。合掌。」
春日部と僕は静かに手を合わせた。
「生きてますって!」
「なに!このボロボロで少々臭うドルト君が生きてるだと!」
よし、燃やそう。燃やせば今度こそ成仏するだろう。
「デル君、炎弾!」
「止めて下さい!本当に死んじゃいますよ!」むう、しょうがない。
「カモナ、ドルトさんを洗濯して、全自動で。あと、栄養のある食べ物を。」
「かしこまりました。全て全自動で除菌もします。」
ドルトさんを承認しカモナに連れ込む。この汚い物体を女性に運ばせるのは
心が痛む、僕が運ぶか・・・。
レイさんとリリーさんが、普通に担いで運んでいる、強い。
お風呂に叩き込むと、中からドウンドウンと回転する音が聞こえる。
ドラム式か・・カモナまじ万能。リビングに戻ると着替えた2人がいた。
着替えたのね・・・。
乾燥まで終えた綺麗なドルトさんが、風呂場から出てきた。
「ひどいですよお~、ゾンビと間違えるなんて!」
「そうは言いますけどね、あっ!カツ丼食べてください。」
「おお・・3日ぶりの食事です。いただきます。」モグモグモグ・・。
「う、う・・。」う?泣いてるのか?
「うまいぞおー!」
「まぎらわしいんだよ!」
「ふぅ~、生き返りました。」
「ほら、やっぱり死んでたんだ。ゾンビだ!」
「ちがーう!」 久しぶりの梅ツン。
「ところで、ここは?」
「ああ、僕のテントの中ですよ。」
「へっ?これがテント?立派なお宅じゃないですか!」
そうなんだよなあ・・執事もいるし・・。拡張型のテントってみんなこう
なるのかな?今度、バロン爺ちゃんに聞いてみよう。
「ところで、なんであんな状態だったんですか?」
「実験をしてて、思う結果が得れなくてずっと続けてしまって、面目ない。」
「集中するのは悪い事ではないけど、さすがにゾンビになるのはどうかと。」
似たような奴を知っている、ドミニクとかドミニクとか。
「何の実験を?」
「推進器の出力の実験です。気流にせよ水流にせよ噴き出して推進力を得るには
かなり巨大なものなってしまうんです。」やっぱりそこにぶち当たるよね。
「4分の1サイズの船体に対して、そのほとんどを推進器にしてもやっと前に
進む状態なんです。それだと、魔導エンジンにしたほうがいい。
なにかが足りないんです、それがわかりません・・。」
「実験を見れますか?」
「はい。まだ、模型でやってる状態ですから。」
僕達は、造船場内にある大きなプールに来た。僕が考えた船の模型だ。
おお・・カッコイイ。これ欲しいな、カモナに飾りたい。あとで聞いてみよう。
「では、行きます。」と、なにかのスイッチを押した。するとシューっと
後ろから水流が出てるのがわかる。ゆっくり、進みだす。
「おっそ!」ポンポン船の方がまだ速い。
「う~ん、確かに出力が圧倒的に足りませんね。」
実はこの構造でも、僕の船は十分なのだ。リーファンの玉があるから、
出力不足にはならない。そもそも、それありきの設計だしな。
しかし、それではドルトさんが納得すまい。
「ドルトさん、実は昨日思いついた事がありまして。ようは、出力を
上げればいいわけですから・・・。」
僕は、その辺にあったクズ鉄で簡単な推進器を作った。風呂で頭を代償にして
思いついた機構だ。
「この金属の多重構造体が肝です。噴射口の手前にこれを付けます。」
「噴射口に行く前に、ここを通るんですね。」
「そうです。ここを通ると・・。」
噴射口から先程とは比べものにならない水流が吹き出し、模型がものすごい
スピードで進んでいく。
「なんですか!これは!どうして・・・。」
「共鳴現象です。多重構造体を通る事で低周波が発生します。そして、噴射口と
同じ素材で作ってますから、固有振動が一致してます。結果、お互いに影響
しあいエネルギーが増幅します。」
「そんな現象が・・・。」
「魔法にも集団魔法ってのがあって、それも共鳴現象を利用してるんですよ。」
「すごい・・すごいです。」
「噴射口を増やせば、出力はやばいです。」
「やばい?」
「船がひっくり返ります。ですので船体デザインは空気抵抗と潜水の場合の
水圧も考えたデザインにして下さい。」
「カエデ様、カエデ様。アウトです。」わかってるさ、春日部。
「ドルトさん、この機構は自分で言うのもなんですが画期的です。低コストで
今までにない出力を得れます。ですが、とても危険なものでもあります。」
「軍事利用ですね・・・。」
「そうです。この機構の肝である多重構造体をブラックボックス化して
ガーネットの許可が下りたものだけ製造して下さい。」
「わかりました。」
「軍事系でなければ、どんどん作って下さい。」
「えっ!」
「バート叔父さんなら、どんどん注文とると思います。」
「バート先輩・・・。」おや?ここにも犠牲者が。
「ドルトさん、このパワーに耐えられる船体デザインをお願いします。あと、
僕の船はあの模型通りで、お願いします。スピードでると危ないので。」
「確かに、危ないですね。わかりました。」
「あと、ミスリルが手に入りましたので、これで船体をお願いします。
余ったら自由に使っていただいて結構ですから。」
倉庫にいって、大量にミスリルを出す。
「こんなに・・。もらいすぎです・・。」
「じゃあ、僕の船の模型を下さい。飾りたいんです。」
「模型は差し上げます、ぜんぜん見合わないですけど・・。」
「バート叔父さんには、僕から説明しておきます。」 超憂鬱だけど・・。
「ごはんもちゃんと食べて下さいね。」
「面目ないです・・・。」




