SHIPBUILDING
リビングまでドナドナされて行くと、皆とても疲れた顔をしていた。
それでも、メガネをキラリンと光らせてバート叔父さんが
「皆、お疲れだ。燻製の試食BBQは神々の参加という、とんでもない
イレギュラーがあったが概ね大成功だ。」 おや?怒られない?
「私、アテナ様をこの目で見たのね・・。未だに信じられないわ・・。」
あれ?マリア先生、感動してる?
「私もだ。私達の主神は確かにアテナ様だが、実在してるとは思ってなかった。」
「俺達もだ・・月詠様と話ができるなんて・・。」 うそ?シュリ叔父さんも?
「龍神様もよ。伝説が実在したなんて、しかも所作が綺麗で見惚れたわ。」
んっ?ボタン先生?
おかしい・・神気にあてられてる。さては月詠、交渉の為に・・全く・・
したたかというかなんというか・・。まてよ、このままの方が怒られないで済む
のでは?明日になれば、元に戻ってるだろうし・・。しかしなあ・・。
しょうがない。パンッ!と柏手を打って神気を散らす。
みんな、ハッとして我にかえった。
「大丈夫?神気にあてられていたよ。」
「そうなのか?そう言えばなにかフワフワした感じになってたような・・。」
「やばいな・・神気・・。」
僕はメイド長に、コーヒーを頼んだ。苦味は気つけになる。
みんなコーヒーを飲んで、少し落ち着いたようだ。
「まあ、何回か会えば慣れるって、リーファン様が言ってたから
今後は大丈夫じゃない。」
「カエデは平気なのか?」
「僕はそんなに接してなかったから。」
「起こった事を説明できるか?」
「できるよ。神々は自分の祠を庭に作った。アテナ様と月詠様の加護持ちは力が
増幅するよ。リーファン様の祠は水脈に作用して、水が超綺麗になる。」
「我々4人は、増幅するという事か?」
「そうなるね。」
「水が綺麗になるとは?」
「ガーネット領から湧く水が全部、清水だって。おいしい酒とかわさび作りなんて
いいみたいだね。あと景色が水のお陰で超綺麗になる。」
「いいな。」さすが、バート叔父さん。立ち直ってる。
「あと、神々と大精霊と従魔会が食堂に自由に出入りできる。」
「確かに許可した。従魔会は元々オーケーだしな。特に問題ない。」
「コウヤの報酬は食堂にアイテムボックスを作って、漬物と神居酒をキープ。」
「うむ、問題ない。」
「桜花が桜のチップを、継続して供給してくれる。」
「ならば、本格的に燻製工場を作らないとな。」
「桜花とマリンさんは、庭に木を植えてくれた。桜の木と寄り木だよ。
桜は年中、咲いてるやつ。寄り木は魔除けだけど、葉で完全回復薬を作れる。」
「・・・まじか?」
「まじ。教会とかにばれると、やばい木だね。」
「マリンさんは、なんの大精霊なんだ?」
「マリンさんは、ドライアドだよ。」
「ブッフー。」 ボタン先生がコーヒーを吹いた。
「まだ渡してないけど、ボタン先生の杖はマリンさんの身体の一部だよ。」
「まじで?」
「まじで。」
腕組みをして考えこんでた、バート叔父さんが
「一度にいろいろな事が起こりすぎて、私も混乱していたが、せっかくだ
多いに活用しよう。シュリは大食堂に来る方達に旨いもんを食わせてやって
くれ。それと、燻製工場とわさび作りも頼みたい。」
「了解だ。」
「マリアは、酒造りを頼む。種類は問わない。」
「わかったわ。」
「ボタンは寄り木の葉で、完全回復薬のテストをしてくれ。」
「了解。」
「私は造船の方と、様々な物の販売ルートを構築する。」
「カエデは自由だ。おまえは、どう動いても止まっても神やら、大精霊や大妖怪と
仲良くなってしまう。好きに動け、ただし報告だけはしてくれ。絶対だぞ!」
「わかりました。」
「あと、ここ最近起こった事と今日の出来事は当面、極秘にする。兄上や子供達に
知れたら、帝都や学園をほっぽりだして帰ってきてしまう。」
「あ~そうだよな・・。」
「絶対よ・・・。」
「正直、帝都より全然おもしろいものね、私達でさえワクワクよ。」
あれ?まだ神気に?
「大丈夫だカエデ。これは神気によるものではなく、我々の本心だ。私も正直
ワクワクしてるよ。」と言って、メガネをキラリンとさせた。
昨夜は怒られずに済んだ、やっぱりまだ神気に・・まっいっか。
起きるといつも通り、枕の両脇に小梅とイチ、胸の上にニイが腹出して寝てた
みんなを起こして森でランニング、今日は小梅もがんばって参加した。
昨日、食べ過ぎたとこ事。途中でボックルと合流して食堂へ。
朝から結構、混んでいる。僕は和食にする。みんな人化してるから、自分で
好きな物をチョイス。いただきます、今日もおいしいよ。
レイさん達が合流した。
「昨日はすさまじかったですね。タヌ吉があんなに美しいとは、驚きました。」
「私はニイ達が人化した事ですね。子持ちになった気分です。」
「本当にね、驚きの連続だったよね。ところでレイさんは昨日、港へ行ってきて
くれたんだよね。」
「はい、船の相場を調べてきました。」
「どんな感じ?」
「やはり馬鹿高いですね。龍神丸になる前のガーネットの船で虹貨5枚。
水上、水中両方の仕様が価格をはね上げる要因だそうです。ちなみに
水上仕様のみだと、2枚まで落ちるそうです。」
「7歳児の語る金額じゃないね。」
「そうですね・・。ただサイズは結構影響するみたいで、小型にすると部屋数が
減る分、下がるようです。カエデ様の場合、カモナさんがいますから
必要最小限でよろしいかと。」
「その手があるか、リーファンの部屋もカモナに用意すれば、いいもんね。
とすると、甲板とブリッジぐらいがあればいいわけか・・。」
「そうです。ざっとですが虹貨3枚ってところです。」
「まあ、目標金額はその辺だね。僕は少し確認したい事があるから、午前中は
ボタン先生の所へ行ってくる。午後から港に行きたいからよろしく。」
「「わかりました。」」
小梅達はボックルといっしょに森へ行くとの事。安全だけど気をつけて。
僕は1人でシュリ叔父さんの屋敷へ。シュリ叔父さんが厨房にいるのは
確認している。
「ボタン先生いますか?」
「いるわよ。来ると思ってたわ。」 リビングへ通される。
「お土産を持ってきたよ、これ。」 杖を渡す。
「これがドライアドの・・・。装飾はないけど見事としか言いようがないわ。」
「その状態で起動するとサーキッドが3枚起動。デル君プレミアムの杖タイプ。
杖自体に魔力をチャージできるから、魔石はいらないよ。」
「すごいえわねえ・・・。」
「あと、それ仕込み杖になってるよ。」
「えっ!そうなの?継ぎ目がないじゃない。」
そう言って上部の方を引っ張る。するとシャリンと鳴って、アマダンタイトの
直刀が現れる。
「・・・。」
「その状態で魔力を流してみて。」
「あっ、軽くなった。サーキッドの鍔・・。成る程ねえ、軽量化に特化したのね。
カエデちゃんはやっぱり天才ね。」
「いや、天才はボタン先生だよ・・魔導も刀術も最上級のハイブリッドだ。」
「知ってたの?」
「いや、婆ちゃんが戦ってるの見て。魔導のまの字も使ってなかったから。その
婆ちゃんの直弟子であるボタン先生がタチバナ流を納めてない訳がないよ。」
「そうね、ツムギお婆様の弟子とは、そういう事よね。」
「察しはするけど、何故?とは聞かないよ。使うも使わないも本人次第だし、
ただそれをお土産にしたのは、将来、神楽を継ぐ時に必要になるって
思ったから。」
「ガーネットより強者が多いと・・。」
「そうだよ、相手は妖怪や妖刀使いだから。雷切を引き継ぐまでの繋ぎにして。」
「ありがとう、大切にするわ。」
これで、お土産は全部渡したかな。BBQのお陰でタスクはほとんど消化できた。
昼ごはんを食べて、造船所へ行こう。
食堂に行くと、従魔会のみんなもいた。コウヤを中心に楽しそうだ。
この光景もすぐに、日常になっていくんだろう。
「みんな。」
「おう、カエデ。早速、利用しておるぞ。」
コウヤは昨日の煌びやかな着物とは違い、落ち着いた柄の着物姿だ。それでも
妖艶さがダダ漏れしている。コウヤ、お洒落上級者。
フワトロオムライスをチョイスしてみんなのいる席へ。
小梅達はお子様ランチ。あるんだ・・お子様ランチ・・。
「しっかし、昨日はすごかったのう。わしも長い間生きとるが、あれは初めての
経験じゃ。しかも、ただの試食、笑いが止まらんかった。」
「あの後、叔父さん達が神気にあてられていて大変だったんだ。」
「いたしかたあるまいて、神が3柱もいたんだしのう。散らしたか?」
「うん。」
「ならば、問題あるまい。」
フワッフワでトロットロのオムライス、旨かった。
レイさんとリリーさんに声を掛けて、造船所へ。初めて行く所はワクワクするな。
「たのもー。」
「んっ、もしかしてカエデ様ですか?」
「そうです。あれ?なんで僕の事を?」
「バート先輩がきっと近々、来るだろうから話を聞いてやってくれと、代金は
今回の新造船といっしょに請求してくれと。」
バート叔父さん・・感動だよ!腹黒インテリメガネって思ってごめんね。
「初めまして、私、造船技師のドルトと申します。」
「ガーネットの船を造った?」
「そうですね。」 僕は握手を求めた。
「お見事です。」
「お若いのに、あれの良さがわかるなんて、さすがですカエデ様。」
「僕といっしょに、新しい理論の船を開発しませんか?」
「新しい?考えがおありで?」
「はい、ジェット推進器です。」
「響きだけでも興奮しますね、ゲヘへへへ・・・。」
「そうでしょう、グヘへへ・・・。」
ここに、新しい船を造るチームドルトが立ち上がった。
「カエデ様、カエデ様。のりのりの所、申し訳ないですが、それ報告しないで
大丈夫ですか?」
「お金の匂いがプンプンですよ。」 その通りだ、春日部。
「むっ・・確かに。しかし、僕の理論が可能か否かわからないしね、ドルトさんに
話して脈がありそうなら話すよ。」
ドルトさんに、ジェット推進器の概要を説明しサイズは現行船の4分の1でいい事
を伝え、用意したデザインを見せる。流線型のSFにでてきそうなデザインだ。
「すっ、すばらしい!よくぞこのような理論を。船舶業界に革命がおこります。
現在の魔導エンジンより、はるかにコストを抑えられます。」
「たしかに推進器部分だけだとそうなんですが、その分、船体の重量や潜水した
時の水圧、魔導エンジンとの比較。船体その物のデザイン等、問題はたくさん
ありますよ。」
「もちろんです。しかしその問題、必ずや私がクリアーしてみせます。」
「カエデ様、カエデ様。これだめなやつです。ドルトさん絶対クリアーしますよ。
デル君の二の舞になりますよ。」
「大きな港のあるガーネットで、造船が基幹産業になるのはいい事ではないか!
はっはっはっは・・・。」
「警告はしましたよ。」 冷たいな、春日部。
「だって、昨日の今日だよ!言える訳ないじゃん!」
しかし、自分の船は妥協したくない。リーファンの玉、使うんだよ!空を飛べるん
だよ!空島行けるんだよ!いかん、ここは冷静になろう。
「ドルトさん、試作船の費用は僕個人が出資します。思いっきりやりましょう。
とりあえず、金貨300枚置いていきます。それと、来週来る時にミスリルを
大量に持ってきますから、船体は総ミスリルにしましょう、費用も追加で
持ってきますので。」
「わかりました。私は様々な実験や船体の図面を起こします。燃えてきたー。」
レイさんとリリーさんが、ため息をついた。
帰りにカフェで作戦会議という名の口止めだ。
「カエデ様、別に告げ口するつもりはありませんが、現実問題どうするんです?
ガーネットの船といっしょに造ると100パーばれますよ。師匠に連絡して
資金調達しますか?」
「フフフ・・。レイさん、心配無用だよ。」
2人に封魔のブレスの事を話した。口座はボタン先生が隠し口座を作ってくれた。
あの仕込み杖は、そのお礼も兼ねている、お主も悪よのう・・というやつ。
隠し口座にある金額を教えると、2人は頭を抱えた。僕も完全に麻痺してる。
だって、デル君は基本銅貨だよ。リリーさんが、手の平をこちらに差し出した。
クッ、口止め料は現ナマか・・・。
「違います。私とレイを船の乗組員にして下さい。帝都にも行きたいですけど、
伝説の空島にも行ってみたいです。」
「よかろう、みんなで冒険だ!」
「「おっ~!」」
「ミスリルは、ちょっとアテがあるから聞いてみるよ。」
「DMですか?小型とは言え、船一隻分ですよ。」
「そう。どのみち雪原フロアにアタック予定だから。」
「カエデ様は1人でアタックしてるんですか?」
「そうだよ。攻略が目的じゃないけどね、IAのストレス発散と
モニタリングのアルバイトだよ。」
「私達は、参加しなくても?」
「まだ浅い階層だから大丈夫だけど、先に進むときびいしかもね。レイさん達は
何階層まで行ってるの?」
「訓練でしか行ってませんから、10階層までですね。」
「今、僕は33階層をクリアーしたから・・追い付いてみる?」
「望むところです。リリーもいいわね?」
「もちろん。」
「あっ、1人だと危ないからチームでね。」
「「わかりました。」」
「じゃあ、今日はここで解散して、それぞれのスケジュールの調整をして。
明日、朝礼で発表という感じで。」
「了解しました。」
「僕はキャロルの所で防寒具を買って帰るから。」




