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GENTLE LIFE  作者: 一聖
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TASTING

屋敷に戻り、厨房へ。食堂が新しくなったので、厨房も新設された。

シュリ叔父さんは・・・いた。


「シュリ叔父さん、これお土産。」


「おっ、万年筆か。珍しいな、しかも魔力タイプは、もっと珍しいぞ。」


「そうなの?」


「ああ、めったにお目にかかれないものだ、ありがとよ。」


「それと、桜のチップを大量にもらったんだ、使う?」


「燻製か、いいな。庭でやるか。どれくらいある?」


「わかんない、けっこうたくさん。」


「空樽があるから、それに入れよう。」


「了解。」 庭に空樽をひっぱりだし、チップを入れる。


「どんだけあるんだ?しかもこのチップ・・カエデ、もしかして

 これ神木の桜じゃないのか?」


「神木?神木かどうかわからないけど、神楽の手前のでっかい桜だよ。」


「やっぱ神木じゃねえか!どうやって手にいれた?」


「どうやってって・・」 しまった、桜花の事は、はしょったんだ。


「本人から?」


「本人?桜から直接?詳しく話せ。」


どのみちシュリ叔父さんは神楽で会うし、料理でつきあう事になるだろう。


「あの桜には、大精霊が居るんだ。名は『桜花』。木の下で野営した時、

 いっしょに夕食を食べて、友達になった。お礼に加護とチップを貰ったんだ。

 帰りにまた寄って、大量の燻製とプリンを作って渡してきたよ。」


「あの桜は、一年中ずっと咲いてるから神木と呼ばれるようになったんだが

 まさか大精霊の住まいなのか・・。」


「シュリ叔父さんは神楽で会うよ。タチバナの宴会の時は必ず居るから。」


「まじか、鬼達だけでなく大精霊もか・・・。」


「衝撃に追い打ちをかえけるようで悪いんだけど、シュリ叔父さんの料理を

 食べたがっていたから、呼べばここにも来るよ。」


「そうか・・お礼しないとな。神木だったから、あの桜のチップは誰も

 使えなかったんだ。その時は、どうやって作った?」


「大量に作りたかったから、小屋を建ててその中で燻したよ。」


「うまかったか?」


「持ってるよ、食べて。」


あの時、作ったパンチェッタの燻製を渡す。

欠片をカットして、口にほうりこむ。


「うまいな、こんなうまい燻製、初めてだ・・。」


「シュリ叔父さんでも?」


「ああ。すごいな。よし!厨房の奴ら全員、呼んで来よう。」


そこからは、大イベントになった。ついでだから、プリンも作る事に。

燻製班とプリン班に分かれて、それぞれ作業する。

ボタン先生もかりだされ、小屋を2軒作らされていた。ププ・・・。

僕は、プリン班に配属され厨房だ。手の空いてるメイドさん達にも手伝って

もらい大量のプリンを作る。みんなの明日のおやつになるしね。

僕も配り用に数十個をキープ。

今日の夕食は、全員庭で燻製メインのBBQになった、味見のためらしい。

楽しみだな。


「シュリ叔父さん、この際だから、いろいろ呼んでいい?」


「・・・いろいろって?」


「桜花だけじゃなく、他の大精霊とか権じいとか。」


「・・・まじか?」


「まじ。」


「おい!誰か、バートを呼んでこい!」


「痛い!痛いです!背が伸びなくなります。」


バート叔父さんが登場し、いきなり頭をグリグリされた。


「まだ、何も説明してないじゃないですか!」


「いや、もうどうせとんでもない事態だろうからな、話してみろ。」


そこに、マリア先生とボタン先生も呼ばれ、全員に説明した。


「・・・カエデちゃん、全て不可抗力なのはわかるけど、とんでもないわ・・。」


「そうね、もう驚く気力もないわ、全てがなんかいい感じにおさまってるのも、

 すごいわねえ・・・。」


「なんか俺、この世の最強の武器は料理じゃねえかって、思えてきた。」


僕もそう思うよ、シュリ叔父さん。


「・・・しかし、確かにその全てが破格のメリットでデメリットがひとつも

 ない。止めたり、叱る事ができないのも、なんともな・・。」


いや、バート叔父さん。もうグリグリしたから!


「まとめると、カエデというか俺達もなんだが・・世話になった大精霊とか

 大妖怪とか、神をこの燻製の試食BBQに呼ぶという事だな。」


「まとめると、そういう事なんだけど、なんかとんでもだね、テヘ。」


「テヘ、じゃねえ!」


「痛い!痛いです!ぬらいひょんになります!」 アイアンクローだ。


「よかろう、俺達も礼がしたいし丁度いいと割り切ろう。しかし、カエデよ

 この手の事は、今後小出しにしくれ、いろいろもたん・・・。」


「ガーネット自体を、神楽みたいに隠れ里にしないと、まずい事に

 なる気が・・。」


隠れ領なんてないから、シュリ童子。ププ・・・。


「いだだだ・・・。」


「それにしても、この森に大精霊が住んでたなんて、驚きだわ。」


「精霊達は、人間と違う理の中で生きてるから、向こうに姿を見せる意志が

 ないと見れないし、感じれないんだ。と言ってたよ。」


ああ、説明口調。ごめんよ、ニイ・・。


「カエデちゃんは、精霊が視える?」


「視えるよ。ガーネットは、精霊で溢れかえっているよ。」


屋敷の全員総がかりで準備は終わり、いよいよ試食BBQのスタートだ。

正直、あとはどうにでもなれだ。


「小梅、桜花をよんで。」

「うん。」


僕はマリンの剣に、話しかける。


「マリンさん、マリンさん。」


「カエデか?なんだい?」


「BBQなんだけど、来ない?」


「クレープはあるかい?」


「今はないけど、作るよ。」


「ならば伺おう、すぐに。」


「リュウちゃん。」

「話は聞いておった、あいかわらず難儀なやつだのう。もう連絡済みじゃ。」

「ありがとう、リュウちゃん。」


「権じい。」


「おう、カエデ。お帰り。」


「見てたよね、人化できる?」


「できるが、魔力がのう・・歳には勝てん。」


「大丈夫だよ、リーファンが来るから。」


「なんと!リーファン殿が!では、おしゃれして行こうかの。」


「待ってるよ。」


「ボックル。」


「なあに。」


「BBQだよ。おいでよ、桜花とマリンも来るよ。」


「う~ん・・恥ずかしいな・・。」


そう、ボックルが姿を見せないのは、ただ単にシャイなだけなのだ。


「大丈夫だって、みんないい人だから。」


「それは知ってるよお、リーファン様と権もいるんだよね?」


「いるよ。」


「じゃあ、行く。」 これで全員かな・・・。


「何故、私達を呼んでくれないんです?」


「だって、僕の頭がもたないじゃないか?」


「大丈夫ですよ、メイドに化けていきますから。」


「わかったよ。本来、月詠には一番にお礼をしなきゃいけないからね。」


「楽しみにしてて下さい。私達のメイド姿を。」


「ちょ、ちょっとまってー!1人じゃないの?」


「ウフフ・・。お楽しみに♡」


まずいぞ、リーファンだけでなく他の神も参加する試食会ってなんだ!

伝えるべきか・・いや、試食の前にお腹一杯になる。とくにマリア先生。

ここはもう、月詠達のメイドっぷりに懸けるしか・・。


そして、後年まで語り継がれる怒涛の試食BBQが始まる・・・。

僕、どうなるんだろう・・・。


「今日は、カエデが持ち帰った桜のチップで燻製を作り、その試食の為

 集まってもらった。ついでに、普段の慰労も兼ねてのBBQだ。存分に

 飲んで食べてくれ。乾杯!」


バート叔父さんの挨拶で始まったBBQ。

テーブルや椅子が足りなくて、僕とボタン先生が急遽、魔法で作った。

その中で、ひときわ異彩を放つテーブルがある。言うまでもなく、僕のいる

テーブルだ。

桜花が目をキラキラさせて、燻製以外の物を食べている。燻製もたべてね?

マリンさんは、クレープがメインだ。燻製、食べんの?

ボックルは子供の姿で、リーファンに抱っこされて食べさせてもらってる。

ウホッ、ウホッって聞こえるよ・・。リーファンはいつも通り、妖艶だ。

そしてなにより、これはびっくり仰天だったのだけど、権じいは金色の着物を

着た、艶やかな女性だった。


「じじいじゃねえ!」 と突っ込んだのも無理からぬ。


「いや、わしは呼ばれ方など、どうでもええ。」


「そうは言うけど、さすがに権じいとは誰も呼べないよ!ってか権之助って何!」


「それはそれで不便かのお、よし、わしの事は『コウヤ』とでも呼ぶがいい。」


「それ鵺の音読みだから・・・。まっ、いっか。」


コウヤのまわりには、子供達がいる。小梅とイチとニイだ。現在、

リーファンに狙われていてビクビクしている。さらに、ラウさんとメグさん。

2人とも筋肉がすごい。アザミとキキョウもいる、双子だったのね。

みんな人化している。これはBBQが始まる直前に、メイドに化けた月詠が

(全然、化けれてないんだけど・・。)祠を作ると言い出し、いっしょに来ていた

アテナも、なら私もと。2人が作るなら我もとリーファンが、三角形になるよう

あっという間に祠を建てた。この祠のおかげで、簡単に人化できるようになった。

これは、説明しない訳にはいかず、叔父さん達夫妻を呼んで紹介した。

もちろん全員、白目をむいてぶっ倒れそうになっていたものの、膝を突いて

きっちり挨拶をしていた。


「後で、話がある。」と言われ、僕も白目をむいた。ですよねー。


ガーネット家の主神はアテナだし、タチバナは月詠が主神だ。月詠達も、

「楽しそうだから遊びにきただけなので、内密にと。」念を押していた。

リーファンの祠は、この辺り一帯の水脈を浄化するもので、湧き出る水がすべて

清水になる。近い将来、水の都とか酒造りとか、色々増えて行くだろう。


本来の目的である燻製は、僕が作ったものより複雑で奥深く、絶品以外の言葉が

浮かばなかった。酒のつまみなど生易しい物ではなく、メイン料理だ。

桜花は、僕が作ったものも両方好きと言ってくれた。ええ娘やなー。

桜のチップを定期的に供給してくれる事になり、燻製は今後ガーネットの

特産品になっていくだろう。


神々も他の大精霊達も舌鼓をうち、しゅり叔父さんは「神の料理人」として

後世に名を残す事となる。

リーファンは誰にも見えないスピードで、とっかえひっかえ子供達を抱え餌付けを

して超ご満悦だ。

バート夫妻とシュリ夫妻は、神や大精霊にお礼、コウヤの報酬の話やらで大忙し。

使用人やメイドさん達は、最初何事かと固唾を呑んでいたが、別に神気や霊力を

たれ流している訳ではないので、おいしい燻製とお酒でいつもの皆に戻った。

それでいい。

僕はおいしい燻製を食べながら、神や大精霊や神獣や人が入り乱れて楽しそうに

してる光景をながめ、たまにはこういうのも、いいもんだなあっと「箱庭」の

みんなを思い出していた。


「箱庭の事を?」


「そうだね、この光景を見てるとついね・・。」


「雰囲気が、よく似てますもんね。」


「月詠は、楽しめてるかい?」


「ええとっても。バート様とシュリ様と交渉して大食堂でいつでもご飯を

 食べれる権を取得しましたよ、みんなの分も。」


「えっ!まじ?みんなって?」


「私達、神と大精霊、あと大妖怪も。まあ、もともと玉藻は身内ですけど。」


「やっぱり、九十九さんって玉藻だったんだ・・。」


「いろんな事情で、向こうに置いておけなくて。」


「そっかあ、まあ察するよ。」


「ありがとうございます。さて、そろそろ私達は帰りますね。」


「ああ、今日は来てくれてありがとう。メイド服、似合ってるよ。」


「フフフ・・。アテナ、帰りますよ。」


「えーもう・・。カエデ、ガーネットを頼むわ!」


「やめろよ、アテナ!フラグたてるの!それと、プリンもってって。」


「フフ・・。久しぶりに会えて楽しかったわ。また来るわね。今度は食堂で。」


「ああ、また。」


フワッと持ち上げられ、膝の上に乗せられた。


「やっぱり最後は、弱っちいカエデでないとな。ウホッ。」


リーファンが、頬ずりしてくる。


「リーファン、ありがとな。祠を建ててくれて。」


「なに、あれがあると我も来やすいのじゃ。WINWINという奴じゃ。」


「WINWINって・・。まあ、いつでも来てよ。」


「あい、わかった。」 と言って消えた。


「私達も帰る。今日は楽しかった。」


「食堂にいつでも来れる権、もらったんだって?」


「月詠様がバートとシュリと交渉してた。」


「そうらしいね。美味しい物をいっぱい食べにきてよ。」


「うん。」


「あっ、そうそうカエデ、あれを。」


マリンさんが指さした方を見ると、木が2本植わっていた。


「1本は桜ってわかるけど、もう1本はマリンさんだよね?」


「そうね、あれは宿り木ね。」


「宿り木~!」


「まあ、深く考えないであれがあると私も桜花も来やすいよ。」


「わかった。けどバルドルが復活するとか、言わないよね?」


「・・・。詳しいわね・・・。」


「やめて!僕まだスローライフしてない!」


「それは大丈夫よ。まだまだずうっと先だし・・・。」


「嫌~!あとマリンさんもプリンもってって。」


不吉な言葉を残して、帰っていった。

最後はボックルと従魔会だ。


「カエデ、楽しかった。美味しかった。リーファン様にびびった。

 でも、お礼してない。どうしよう?」


ボックルの頭を撫でながら


「ボックルが居てくれるから、あの森はあんなに豊かなんだよ。

 今日は僕らからの、お礼だよ。」


「うん。」


「ラウさん、メグさん。人化するとカッコイイね。」


「ありがとうカエデ。楽しかったわ、こんな事もあるのねえ。」


「ああ全くだ。龍神に神々、すげえメンツだ。」


「コウヤ、婆ちゃんから漬物たっぷり。あと、僕から神居酒たっぷり。」


「おお、ありがたい。まあ今後、従魔会は食堂で執り行なうだろうて。」


「そうだね。じゃ、食堂にコウヤ用のアイテムボックス用意するよ。」


「そうしておくれ、今日は久しぶりに楽しかったわい。」


「僕もだよ。それと爺ちゃんが結界石のお礼したいから、たまに帰れと。」


「わし、船酔いするんじゃ。」


「わかった、船酔いしない船を造るから、一緒に神楽に行こう。」


「しょうがないのう。」


「みんな、おやすみ。」


子供達が来た、みんな超可愛い。リーファンが夢中になるのもわかる。


「カエデ様、イチです。」

「しゃべれるようになったんだね。」

「祠のお陰ですう。」

「カエデ、リーファンやばいぞ、消えるんだ。気付いたら膝の上だ。

 ガクブルだ。」

「アハハ、僕でも見えなかったよ。あれが本気の動きだね。」

「楽しかったかい?」

「「うん!」」


2人の頭をなでてると、レイさんとリリーさんが迎えにきた。


「じゃ、また明日。」

「さて、小梅。僕らも帰ろうか。」

「ムリ。」 えっ?なんで?


その瞬間、僕は頭を掴まれ、持ち上げられていた。


「いだだだ!痛いです!頭がもげます!」


「さて、帰ろう、じゃねえからな!」


僕はシュリ叔父さんにブラブラ、屋敷のリビングにドナドナされた。


ですよねー。



 

 











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