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怪異から論理の糸を縒る  作者: 板久咲絢芽
昔話1 ロビンの話
100/209

Good fellows' Robin 10

「ロビン、こいつの言うことなんざ、無理して理解しなくていいんだからね」


そう言い残して、シンシアは玄関に向かってしまった。


()()、すごいね。むずかしい」

「うん、まあ、そうね」


少なくとも、ロビンには確実に難しいだろう。

ただ、すごいと言えるかどうかは、個人的には大したことないと思っているのだが、どうやらそうでもないらしい。流石(さすが)に周囲の反応を見てればわかる。

()えて読まない選択ができるだけで、空気を読めないわけじゃないのだ、僕は。そう、きっと、たぶん。


「……あのね、おばあちゃん(Grandma)、なの」

「うん?」

「いままでで、いちばんこわかった(scariest)の」


こっそりと小さな声でロビンはそう教えてくれた。


「どうして?」

「こわいのや、かなしいのがたくさんいるの。それで、こわいなら、かなしいなら、さみしいなら、()()()()()()()()()()()()って、そういうの。おばあちゃん(Grandma)のだけじゃないけど、おばあちゃん(Grandma)のまわりにはたくさんいるの。それに、とても、とてもキレイなんだけど」


こわいの、ととても小さな声で言う。


「ロビンは、その手を取らないの?」

「……こわいから、やだ」

取り替え子(チェンジリング)と呼ばれて、その火傷(やけど)をさせられても?」

「……やっぱり、()()はなんだってわかるんだね」


ロビンがまた少し、表情を(やわ)らげた。


「だって、きっと、その手をとったら、ボクは死んじゃうか、きえちゃうでしょ? 見えてるの、よき(good)りんじんたち(fellows)だってわかるもの」

「……わかった。僕はキミの意思を尊重するよ」


そうしていると、シンシアが困り果てた顔で戻って来た。


「シンシア、どうした?」


そう問えば、ちょいちょいと手のひらを(英国)上向きにした()手招(てまね)きで呼ばれる。

立ち上がってそちらまで行くと、シンシアが声を(ひそ)めて口元を(おお)って言った。


「……それが、シーラが見当たらない、知らないかって、ロビンのおばあちゃんがやって来たのさ。そっちに関しては知らないから、追い払ったけど」

「昨日聞いた時点だと噂だったの、確定してたんだね、つい最近に」

「みたいだね。でも、ロビンには何にも触れやしない。頭にキたよ」


ぷんすかという擬音(ぎおん)が似合うシンシアは置いておいて、なんとなく胸騒(むなさわ)ぎがする。

いや、違う。これは、()()ざわついてる?


はっとしてロビンを見れば、ロビンの顔色は血の気が引いて青褪(あおざ)めていた。


ここまで来たら、例え毒でなくとも皿まで()らわねばならない。

もともと生半(なまなか)なつもりではなかったけれど。


「ロビン、()()()()()()()

「ちょっと、()()!」

「わからないはずがないんだ。だって、キミは僕にすら見えていないものが見えて、聞こえないものが聞こえている。なら、情報源は無限大だ。まして、シンシアが今追加を()()()()()


僕の説明を聞いて難しいと言いながら、ある程度は理解したロビンだ。

情報整理、論理的思考力。その両方は年相応とはいえ、それなりに(そな)えている。


「シンシアが聞いた事、キミの言うシンシアの(まわ)りの()()()()()()の反応でわかったんだろう? それなら、下手に僕らの間で隠す必要なんかない」

()()、あんたね!」

「シンシア、キミがロビンを守りたいのはわかるさ。でも、そもそもそのロビン自身が当事者で、きっと()()()()()()()。それなら、下手(へた)に隔離して遠ざけるのは、ロビンにとっても、キミが聞いた事態にとっても()()()()()()()()()()!」


言い切れば、シンシアはぐっと(くちびる)()みしめた。

一理あるとは思ってもらえたようだ。


お母さん(Mum)……」


気まずい沈黙を(やぶ)ったのはロビンのか細い揺らぐ声だった。


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