表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼんぼり執事かなめの受難――超一流執事、3歳児のお餅ボディ(物理)に完全敗北する――  作者: 以十可思(いとをかし)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/15

第7話:漢(おとこ)たちの凱旋と、無慈悲なる隔離(回収)

「「「…………(限界突破のフリーズ)」」」


 おでこのたんこぶから血を流し(※ただの衝突です)、下半身をオレンジ色に大決壊(※ただのジュースです) させたドレス幼女から放たれた、「血のちのひつじ」という不吉すぎる呪詛。

 あまりの恐怖と異様さに、駆けつけた大人たちや、怪我をした貴族の令息(6歳児)が声もなく魂を抜かれて硬直している。


(――ふっ、観衆全員が私の華麗なる神技に圧倒され、言葉を失っておられるようだ……)

(※全員の視点:なにこのドロドロの恰好で変な顔を決めてる3歳児、ヤバすぎる……)

(よろしい、傍観者の方々よ、わたくし筆頭執事カナメの勇姿、しっかとその眼に焼き付けておくとよかろう……!)


 この地獄の静寂(異様な空間)を切り裂いたのは、あの熱き友情で結ばれた4歳児のおとこたちであった。


「おい!! ちびーーーーっ!! 間に合ったぞ!!」

「連れてきたぞーーーっ! 先生(係員)を連れてきてやったから、もう安心しろ!!」


 部屋の外からドタバタと戻ってきた4歳児のエイリアンどもは、目の前の凄惨せいさんなビジュアルの意図を100%誤解したまま、勝利の雄叫びを上げてカナメの周りにわらわらと群がった。


(((いや何が!? 何一つとして間に合ってないわよ!? むしろ全てにおいて手遅れの向こう側に突入してるでしょうがァアアアーーーッ!!!)))


 その場にいた大人たちの脳内から、猛烈な無言のツッコミが放たれる。


 だが、そんな大人の絶望など知る由もない4歳児たちの目には、人生最大のピンチ(お漏らし)に直面しながらも、漢のプライドを守るために涙を堪え、壁におでこを打ちつけ、血を流してまで放出を耐え抜いた「奇跡の3歳児マブダチ」として映っていたのだ。


「良かったなちび! よく耐えた! お前はやっぱり、俺たちの認めたお団子(漢)だ!!」

「内緒にするって約束だもんな! ほら先生、こいつの後ろ(お尻)は見ちゃダメだぞ! 見ずに早く着替えさせてやってくれ!!」


(((いや見ちゃダメって言われたら、余計に見るでしょ!! 隠す気ゼロか? お前らはァアアアーーーッ!!!)))


 熱い男の絆で肩を「バシバシッ!」と叩かれ、カナメは脳内で(ふっ、遅かったですね、先輩方。名門貴族の令息の危機は、この執事カナメの迅速な救命措置、名付けて『超高速回転【団子車輪】&執事奥義ー燕返し』によって、すでに完全鎮圧されたあとですよ)と、おでこの血を拭ったハンカチを掲げて得意げにドヤ顔を決めていた。


 ――しかし。

 我に返った大人たちの回収作業は、無慈悲で迅速だった。


「いやあああーーっ! なに、この惨状! 何がどうなったらこんなことになるのよーーーっ!?」

「とにかく、これ以上大事おおごとにならないうちに誰か東雲様をお呼びして!! あと、救護班も早く!!」


 大混乱に陥った大人たちが、凄まじい勢いでカナメの両脇に手を差し込む。


 ヒョイッ。


(――なにっ!?)


 カナメは、大人たちによって「これは諸悪の根源、災いを引き起こす禍ツまがつもち」とでもいうように、一刻も早くこの場から遠ざけようと抱え上げられ、地面から強制的に浮き上がらされた。


 空中に吊られお尻を浮かせたカナメのお餅ボディは、巨大頭部を支えていた垂直抗力を失い、頭部に盛り付けられた『ぼんぼり盛り4連装仕様(3話)』の重量が、重力に従ってぐらんぐらんと不規則に動きだす。


「シノ(カナメ)ちゃん、ダメよ暴れちゃ! すぐに綺麗にするからね!!」

「は、離ち、離ちて!! ちの、ひつじ……うぐっ(※脳内:離しなさい! 私は東雲家の執事カナメだ!うぐっ、こ、このままでは首がちぎれる…… まだ首の物理演算が――――)」


 大人たちにしてみれば「お漏らし(※ジュース)と流血のショックで完全にパニックになり、巨大な頭のぼんぼりをヘリコプターのように振り回しながら、謎の『ちのひつじ』という狂乱のワードを叫びジタバタ暴れている危険な3歳児」でしかない。


 格式高い祝宴のお披露目会の裏側で発生した、この最大の不祥事(団子大惨事)を隔離するため、カナメは大人たちの手によって、子供部屋の最深部へと大急ぎで撤収されていくのであった。


 そんな連行されていくカナメの背中に向かって、4歳児の漢たちは拳を突き出して激励していた。


「ちびーーーっ!! 頑張れよーーーっ!!」

「綺麗にしてもらって、カッコいい漢になって戻ってこいよぉおおお!!」


(ちちがうのです! 先輩方! 私ははじめからパンツを汚してなどいません! これはドレスにジュースを引っ掛けただけなのです!!)


 遠ざかる男の友情のありがた迷惑な掛け声に、脳内で激しく反論しながらも、カナメは東雲家の危機が本当に去ったのかいぶかっていた。


(くっ、なんだ……この胸騒ぎは!? 首や目の揺れとも違う揺らぎ!!まだだ、まだこの場を去ってはいけないと執事カナメの直感が告げている……! ……ぐぬぬ、待ってくれ! 私の功績を! 私の華麗なる【鎮圧劇】を誰かーーっ!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ