クロとバスタイム
そろそろ、朝晩は随分と冷え込むようになってきて、夏の新感触であるひんやり毛皮ではなく、安定のぬくぬく毛皮を味わうのに忙しい毎日だ。
そして前回のシャワーを案外と気に入ったらしいクロと、たまにお風呂に入っている。
お風呂に入っていると言っても、子牛サイズのクロは浴槽に入りようがない。
シャンプーは楽しかったが、頻繁にするのは大変だ。
なので、しばらくぬるめのシャワーで流しながらクロの全身を揉み倒し、その後、私は湯船に浸かってのんびりと、クロは洗い場でごろんとするというのが私達の入浴スタイルだった。
「先出てていいよ~」
声をかけると、クロがむくりと起き上がり、全身をすーっと淡いものへ変えた。黒一色の濡れた毛の先が白く淡く揺らぎ、毛にたっぷり含んでいた水を置き捨てにして、ドアから出て行く。
いや、閉まったままのドアを、通り抜けた。
その後ろ姿を見ながら、あの大変だったドライヤーでの手動乾燥を思い出す。
しかし、この瞬間乾燥の際、シャンプーやコンディショナーの効果を水と一緒に置き捨てているようで、ふわふわ感が微妙に物足りない。
なので、あの苦労にも意味はあったのだと思う。
それと同時に、クロにとって、物理的な障害……壁や扉という物は、何の意味もないのだと分からされる。
もしもクロがここからいなくなる事を選んだ時、私にできる事など、何一つないのだ。
お風呂を出てドライヤーをしていると、待っていたクロが後ろから私にまとわりついてきた。
クロは大きくて安定感があるので、背後にいる時に力を抜くと、しっかりと背中を預ける事ができる。
この斬新な発想の癒やし系家具さんめ!
体だけでなく、心もほかほかするバスタイムだった。




