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ブラックドッグのいる日常  作者: 水木あおい


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クロと稲荷寿司

「これはダメだったら」

 昼食時、妙にクロが興味を示しているのは、スーパーで昼食にと買ってきた稲荷寿司だ。

「……そんな食べたいの?」

 食べさせてもいいものだろーか。

 一応前のたまねぎのような危ないものは入ってないはずだが、人間の食べ物は犬の体には悪いと聞く。

 ……濃い塩分や糖分は人間の体にも悪い可能性が高いが。

「……一個だけね」

 こちらをじーっと見てくる瞳の強さに負けた。

 小皿にのせて目の前に置いてやる。

 すると、ひょいぱくっ、と一口で飲み込んだ。

 なんという早技。スローモーションで見たいぐらいだ。

 さらに、ぺろりとお皿を舐めたので、気に入ってくれたのだろうか。

 尻尾がぶんぶんと振られている。

 うん、気に入ってくれたらしい。

 しかし、この子もしかして、犬の形をしていても、犬ではないのかもしれない。

 稲荷寿司が好きとか、実は狐じゃなかろーか。

 もしかして、化かされてる?

 いやまあ、多分狐もたまねぎダメだと思うんだけど。

 残りの稲荷寿司も物欲しそうに見てくるが、ここは心を鬼にして耐えた。

 自分のご飯を美味しそうに見てくる犬に見られながらご飯を食べるという、ささやかな夢が叶った日だった。

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