第五話
「朱璃、おはよ」
「麻子。おはよ」
志陽を部活に送り出してから家から電車で30分ほどの私の通う学校に向かう。電車に乗っている途中で仲の良い友達の日野麻子に出会った。麻子は高校から友達になった子だけれど、なんだか妙に馬が合う。今までの人生で一番仲の良い友達、親友と言ってもいいのではないかと思っている。
麻子はサバサバとした性格とは裏腹にとても可愛らしい外見をしている。ただ彼女はその外見のせいでいろいろと大変な目にあってきたらしい。確かに、そっちの人が好きそうな外見ではある。合法ロリというかなんというか。髪を肩の少し上で切りそろえた今ですらストーカーに狙われたりすることがあるらしい。
そんな麻子は自分の身を守るために数々と格闘技をマスターしているという強者だ。
「今日午前だけでしょ。どっか行かない?」
「今日……。あ、ごめん。幼馴染の入学祝いパーティーするんだ」
「高校?」
「ううん、中学。二人目の妹みたいに可愛がってるんだ」
「ほう。それは仕方ないね」
「ごめんね」
「気にすんな」
今日は中学の入学式だ。千陽ちゃんは桜ヶ崎中に入学した。なんだかんだ言って私以外のみんなは桜ヶ崎に進学している。志陽はもちろん、樹里も瀬里も桜ヶ崎だし。桜ヶ崎、うちから近いしね。それに私立なのにそんなに学費が高くない。
今日はうちの高校は午前で終わりだ。入学式が午後に行われるから私たち在校生は登校して自分の新しいクラスの確認、それからSHRで終わり。
麻子と二人でクラスの掲示を見に行く。掲示の前はすごい人だった。喜んでいる人、友達と離れたのか落ち込んでいる人。まるで受験の合格発表の場のようにいろいろな人がいる。
私は左から、麻子は右からと分担して見ていく。私の名前も麻子の名前も見つからない。ちょうど全クラスの真ん中まできたところで麻子と出くわした。
「あれ、なかった?」
「うん。ということはつまり」
「七組みたいだね」
麻子が言って指さしたほうを見れば私と麻子の名前があった。今年もまた同じクラスのようだ。
「今年もよろしくね、麻子」
「こちらこそ!」