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第11話 火炎弾

――学年別魔法トーナメント戦。


 俺は観客席から舞台を見つめていた。


「次はアリシアだな!」


 隣のレオンが身を乗り出す。


「うん」


 舞台中央。


 アリシア・グランベルが静かに立っている。


 対戦相手は、同じ一年の男子生徒。


「両者、準備はいいな?」


「はい」


「もちろん」


 審判が手を上げる。


「――開始!」


 瞬間。


 アリシアの足元から、炎が噴き上がった。


 ゴォォォッ!!


「うおっ!?」


 観客席から歓声が上がる。


 炎はアリシアの周囲を渦巻き、まるで巨大な翼のように広がった。


「いきなり全開かよ!」


 レオンが叫ぶ。


「……すごい」


 俺も思わず呟いた。


 見ていてとても、圧倒される。


「――《火炎弾(レッドバレット)》!」


 十数個の火球が一斉に飛ぶ。


「――《水壁(ウォーターウォール)》!」


 対戦相手が水属性の防御魔法を展開する。


 ドォン! ドォン! ドォン!


 火球が水壁にぶつかる。


 大量の水蒸気が舞台を覆った。


「防いだ!」


 観客が沸く。


 だが。


「――まだよ」


 アリシアが杖を振る。


「――《風刃(ウインドカッター)》」


 ヒュンッ!


 風の刃が水蒸気を一気に吹き飛ばした。


 視界が開ける。


 その瞬間。


「――《炎槍(フレイムランス)》!」


 炎が一本の槍へと収束する。


「なっ……!」


 ドンッ!!


 炎の槍が防御魔法を貫いた。


「うわああっ!」


 対戦相手が後ろへ吹き飛ぶ。


 だが、アリシアは追撃しない。


「まだ立てる?」


「……っ!」


 男子生徒は立ち上がろうとする。


 しかし――


 足元に、小さな炎。


「ひっ……!」


「動かないで」


 アリシアは杖を向ける。


「降参するなら、これ以上はしない」


「……参った」


 審判が手を上げた。


「勝者――アリシア・グランベル!」


 会場が大きく沸いた。


「すげえ!」


「圧倒的だ!」


「さすがアリシア様ね!」


「火力が異常だ!」


 アリシアは杖を下ろす。


 表情は涼しい。


 けれど。


 俺には分かった。


 彼女もかなり集中していた。


「……強いな」


 思わず口に出る。


「だろ?」


 レオンが笑う。


「うん」


 俺は舞台から目を離さなかった。


「本当に強い」





 控え室へ戻る途中。


 アリシアは一人で歩いていた。


「…………」


 勝った。


 もちろん嬉しい。


 でも――


 頭に浮かぶのは、トリックの戦いだった。


 煙。


 炎。


 風。


 水。


 そして、一瞬で変化する戦場。


「……」


 アリシアは足を止める。


「私の魔法だって、負けてない」


 自分に言い聞かせる。


 自分は火属性の適性が高い。


 それに風を組み合わせれば、速度も威力も上げられる。


 正面から戦えば、自分のほうが強い。


 ――そう思っていた。


 だけど。


「…………」


 トリックの魔法は、予想できない。


 何が起こるのか分からない。


 だからこそ――


「……面白い」


 アリシアの口元が少し上がる。


「あなたに勝ってみせるわ、トリック」





 その頃。


 俺は控え室に戻っていた。


「…………」


 椅子に座る。


 次の試合まで少し時間がある。


 俺は水を一口飲んだ。


「ふぅ……」


 正直。


 アリシアの戦いを見て、少し焦っていた。


 強い。


 本当に強い。


「……どうしよう」


 次に当たったら。


 今までの仕掛けだけでは通用しないかもしれない。


 俺は鞄の中を見る。


 そこには、昨夜完成させた道具がある。


 大会のための――


 最高傑作。


「…………」


 使うべきか。


 まだ早いか。


 俺は少し考える。


 でも。


「……勝つなら」


 使うしかない。


 母さんのために。


 俺は鞄を閉じた。


「トリック~!」


 レオンが控え室へ飛び込んできた。


「次の対戦相手、決まったぞ!」


 レオンが紙を見せる。


 そこには――


 トリック・ワイヤー

    VS

 グレン・ウォーター


 と書かれていた。


「相手は入試で水属性最高得点を叩き出した強者(つわもの)なんだって!」


「…………」


 俺は紙を見る。


 嫌な汗が出てきた。


「……勝てるかな」


「何言ってんだよ!」


 レオンが笑う。


「お前なら大丈夫だって!」


「そうかな……」


 その時。


 控え室の入口に人影が現れた。


「……トリック」


 アリシアだった。


「アリシア?」


「次、あのグレンなんですってね」


「うん」


「頑張って」


「ありがとう」


 アリシアは少しだけ笑う。


「――私も、勝ち上がるから」


「決勝で会いましょう」


 そう言って、彼女は去っていった。


「…………」


 俺はその背中を見る。


 不思議だった。


 怖いはずなのに。


 なぜか。


 少しだけ――


 楽しみになってきた。


「……決勝」


 俺は呟く。


「行ってみたいな」


 そして。


 会場に、試合の開始を告げる鐘が鳴り響いた。


 次の相手は――


 水属性のエリート。


 俺はゆっくり立ち上がる。


「……行こう」


 最高の手品を――


 魔法として。


 誰にも見破られないように。


 そして。


 絶対に勝ってみせる。

好評だったら更新早めます

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