誰のモノ?
ゆめをみた。
ながくて、みじかいゆめを。
『さあ、おいで。』
おだやかで、やさしくて
いろんなことをなんでもしっている、とうさまがいて。
『まっていたわよ。』
いつもあかるく、わらっていて
だきしめてくれるとおひさまのかおりがする、かあさまがいて。
『ねーたま!』
まだしたたらずな、それでもことばをはなすようになって
とってもおしゃべりになった、レノンバルトが『あい!』って、てをあげてる。
てーぶるのうえにはたくさんのおかしと、そしておおきなケーキ!
ちょっと、かたむいているところもあって、なんでだろ?ってくびをかしげたら
かあさまがおしえてくれたの
『ここはね、リュウとレノンがてつだってくれたのよ』って。
そしたら、おこったようなかおですわっていたにいさまがね。
『よけいなこというなよ!』って、ますますおこって、そっぽをむいてしまったんだ。
でもね、でも。そのおみみとほっぺたが、いちごみたいにあかくなってたから。
わたし、しってるんだよ。にいさま。
そういうのを、てれかくしっていうんだよね!
さいきんのにいさまは、いつもなにかにおこってたから。
わたし、さびしくて。さびしくて。
だからね。にいさまが、わたしのためになにかしてくれたってことがうれしくて、うれしくて!
にいさまのてをひいたの。
『ねぇ、にいさま!わたしねがんばってじゅんびしたの!……うけとってくれる?』
とくべつなひだから。
『あのね、あのね……にいさまのおくりものにね、わたしね……!』
わたしも、にいさまに。かぞくみんなに、おくりものがしたかったの。
じぶんのたんじょうびだろ。って、あきれたようにまゆねをあなたは、よせていたけど。
だからこそ、だからこそだったんだ。
『わかった、わかったから。そうひっぱるなよ』
またころぶぞ。
しかたないなって。にぎりかえしてくれた、あのひのてのぬくもりは、きっと。
ずっと、ずっと。わすれることはできない。
(……そう、ずっと。続いてほしかったの。)
幼い頃の、願い。
かぞくみんなで、なかよくしあわせにくらしたい。
そんな、純粋で無邪気だった想いは。
『やっと見つけた。僕の運命。僕だけの唯一』
昇る太陽が堕とす影に吞み込まれ、崩されてしまった。
『必ず幸せにすると誓います。どうか、あなた方の姫君を僕だけの女神にさせていただけませんか?』
そっと取られた手の甲に寄せられる顔が、今に変わる。
ハッと見渡せば、そこは何時ぞやかにみた舞踏会の会場。
己が纏うのは、見覚えのない純白のウェディングドレス。
細やかに施された金糸の刺繍で縫いつけられた大粒のルビーが、シャンデリアに反射して眩しかった。
『これで、君は僕のモノだ。』
満足げな笑みを浮かべた、あの男が手を伸ばす。
ぎゅっと、やさしく。けれど、もう決して離しはしないといわんばかりに、強く。
私に触れようとして。
私の手を取ろうとして。
私を抱き締めようとして。
(―――、あぁ)
これは、あったかもしれない未来だ。
運命を断ち切ることも出来ず、あの男から逃げ出すことも叶わなかった、私の可能性。
きっと、長年心の奥底に根付き、今も尚染み付いている『運命』への恐れが、この悪夢を見せているのだろう。
(でも、)
……だけども、もう。
こうなる未来は、潰えたのだ。
(だって、私が―――断ち切ったのだから。)
故に、この手は。
決してもう、私に届くことは無い。
その刹那。
その通りだと肯定するかの如く、差し込んだ光が男を拒んだ。




