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驚愕に見開かれた瞳。戦慄く唇が何かを紡ごうとするけれど、発言をも封じられた舌先では言葉を産むことも出来ず。ただ音にも為らなかった雫が、抉れた地面に沈んでいくばかり。
(………まぁ大方、言いたいことは『どうして』だろうなぁ)
どうして、レノンバルトの魔力が可視化されているのか。
どうして――――この魔法をレノンバルトが知り、且つ。
どうして、唱えることが出来ているのか。
どうして、どうして、どうして、と。
自分に置かれた状況も、これを切っ掛けに飲み込めてきたからこそ、再び混乱し始めたのだろう。
………いや、混乱はずっとしていたか。
(まぁどちらにせよ、今更か)
今更、混乱を自覚したところで、もう遅いことには変わりないのだから。
――――魔女の魔法。
かつては多く存在したという、魔女たちが遺したとされる本物の魔法。
「tse sutidnocsba roloC」
しかし、その殆どはそもそも文献に残されておらず。
仮令、記述が見つかったとしても、魔女の魔法は魔女にしか扱えれないのだ。
「tse snedualc muidO」
ただひとつの例外を除いて。
「tcennoc abreV」
トゥルバに伝わる、伝説の魔女。
始まりの魔女と呼ばれた彼女が眠りについたのを境に、多くの魔女たちはその姿を晦ました。
というのが、トゥルバで広く知られている伝承である。
それはまるで、初めから自分たちは存在していなかった。
と言わんばかりに、一つの痕跡も残さずにである。
「enif ni tis diuQ」
そう。たった数人の魔女たちを除いて。
『魔女の魔法……って、レノンバルトでもそれは難しいんじゃ……?』
『ん?―――あぁ、大丈夫だよ。クルト』
直前になって共有されたレノンバルトの計画。
そこへ当り前のように組み込まれていた魔法の存在。
優秀であることは知っているけれど、流石に厳しいものがあるのでは?と心配するクルトへ彼は余裕たっぷりの笑顔で一蹴したのだ。
『だって、僕は』
(『魔女の子孫だから』、かぁ)
トゥルバに残ることを決めた魔女たちは皆、家庭があったという。
その内の1人が、レノンバルトの一族にも居たのだ、と。
あまりにもあっさりと打ち明けられた事実に、思わず耳を疑ったのも記憶に新しい………ってそれもその筈か。
(……『覚醒者』でも無いのに優秀なのは何故だろうとは、思っていたけれど)
魔女の血筋ならば、全て辻褄が合う。
と、1人合点がいき、頷くクルトを他所に。
「oeconnI」
ただ、粛々と最後の一音を紡ぎ上げたレノンバルトが掲げた杖の先で―――。
光は、砕けた。




