6
やがて全ての準備は整い、地に描き直された魔法陣へと杖を翳すレノンバルトの、深く吸い込む呼吸音が耳を掠めた。
「――――eairomem mapir eporp ,etra nI」
淡々と。
しかして、朗々と。
「rutidivid cnun mutaF」
紡ぎあげられていくのは、魔語の羅列。
けれど、その発音は広く知られているものとは異なる。
「tiiba ainmO」
独特な韻を踏み。
唱えるというよりは、謳うように。
「mutisoporp te xap auT」
吐き出されていく息と共に、流し込まれていく魔力の波動。
その余波にふわりと風が舞い、レノンバルトのローブをはためかす。
――――だけに留まらず。
「egnarf ogrE」
淡い輝きを以て、杖の先から零れ落ちる光。
それは可視化された、レノンバルトの魔力だった。
「taicafeuqil ogrE」
余りにも幻想的なその光景。
見惚れるなと言うのが、クルトには無理な話だった。
「ereruxe ogrE」
それは、この男も同じのようで。
此処に至るまで全くと言ってもいいほど、拘束にも制御にも抵抗していなかったベネディクトがびくりと僅かに体を震わせたかと思えば、初めて――――初めて、その目がレノンバルトを捉えたのである。
(………やっぱり、兄上は知っているんだ。)
レノンバルトが唱える、この魔法の正体を。
「enoitcurtsnoC」
この―――魔女の魔法を。




