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「全ては、手筈通りに。」
エリザベスが発動させた魔法の痕跡。
それを上書きするように、緻密な計算の下、描き足していくレノンバルトの魔法陣は思わず息を飲んでしまうほどに美しくて。
こんな状況でなければずっと見ていたかった!
と、嘆きたくなる気持ちを押し殺して、クルトは今もナメクジのように諦め悪く藻掻いている男へ拘束魔法を厳重に施していく。
……本来の予定よりも、三重程強く固くしてしまったけれど、他意は無い。うん、このくらいなら、これからすることへの支障もないだろうし、厳重であればあるほど良いだろうしね。この兄には。
(魔法陣の完成まで見届けれなかったからって、不満では無いんだよ。そう、不満なんか……抱いて……)
頭を振りながら次に取り出したのは、指定魔力封印道具なるもの。
端的に言えば、魔封じと呼ばれる魔法使い専用の枷である。
ただこれは―――従来の魔封じに改良を重ねて、登録された人間の魔力だけを封じる。だけでなく、封印時に『鍵』として登録された魔力の持ち主であれば、封じられた対象者の魔力を扱うことが出来る機能も備え付けられているのだ。
(ただ、『鍵』には2種類の魔力……つまりは、最低でも二人の魔法使いが必要ってところだけが難点なんだけど……)
魔力を扱うにも、枷に付けられた魔塵石※と同じもの―――つまりは、一つの塵石を綺麗に真っ二つ、もしくは人数分割った上で加工する必要がある―――を用意しないとと駄目だし……
ちなみに今回は綺麗に真っ二つ割れたので、持てるのは『鍵』の内1人だけ。
レノンバルトと話し合った結果、ブローチに埋め込んでクルトが管理することになった。
(……まぁ、逆に言えば、開錠しようにも『鍵』となった魔力が全て霄わないと駄目ってわけだし……装着時の面倒さと今後のことを比べたら、これもある意味の対策が一つになるのかなぁ……なんて。)
パチリ。カチリ。
一つづつ、丁寧に。
間違えないように、慎重に。
首に輪を回し、ベルトを締めていく。見た目よりも機能面を重要視してあるため、塵石を埋め込むための台座は首の後ろ。項より少し上のあたりに来るよう固定すれば、クルトがするべき下準備は完了だ。
あとは、レノンバルトの準備が終わるのを待つのみである。
(……にしても、)
本当に哀れな人だ。と、未だ彼女の名前を呼び続けているベネディクトには、ある意味感服してしまう。もう、運命の番と言う繋がりが断たれてしまったと理解しているはずなのに、それでも絶えず求め続けるその心根は、執念かそれとも―――本当に、彼女をあいしていたからなのか。
(だとしても、あなたのそれは余りにも一方通行過ぎたから……せめて、)
せめて……と思っては見たものの、その先が何一つ浮かばない。
そもそも、出会いからして間違っていたんだから。
と、軽く肩を竦めたクルトは、「やっぱり、救いようないね」と誰にも届かないぼやきをため息に込めて、一つ空気に溶かした。
※魔力が無くなった魔石のこと




