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(―――現状、)
非常に残念で、歯痒い話であるが。
自国に於ける法律ではあの男―――ベネディクト・スカーピオを断ずる術は一つとして存在していない。
『運命の番』同士は結ばれて当然。それが『覚醒者』ならば、必ず。
という、思想が深く根付いてしまっているあの国では、『正しく』結ばれたいと望む者たちへの法律は事細やかに定められているけれど、その真逆。エリザベスのように運命を『拒みたい』と願う人への手段は何一つと用意されていないのである。
そもそも、あの男がこれまでエリザベスにしてきた行為の数々はどれも、自らの運命を得るために必死な、且つ、情熱的なアプローチだとトゥルバの社交界では認識されているのだ。
(……そう言えば、市井にも噂をばら撒いていたから、今はあの国全体でそう思われてるんだっけ?)
本当に、全くもって。
忌々しく、小賢しい男である。
と、込み上がる悪態を苛立ちのままに吐き捨てたくなる、けれど。
姉の前でそのような醜い姿を見せる訳にいかない。と、間一髪なところで踏み止まったレノンバルトは、戦慄く唇を結び直して、代わりに強く。
一歩を踏み出した。
(でも、それも今日までの話。)
どんなにあの男が足掻こうと、藻掻こうと、歪んだ指で地を這ったところで―――
その目が己の運命を捉えることは、もう2度と無いのだから。
(縁は姉様が断ち切った。あとは、消し去るだけ。)
そう、跡形もなく。何一つ、この男に姉へと通ずるモノは残してやらない。
それが、心の奥に根付く記憶であったとしても。
――――すべて。
「終わらせよう。完璧にね。」




