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クルト。と、レノンバルトが呼んだ少年の名には、エリザベスも聞き覚えがあった。
(彼が……クルト?)
クルト。クルト……スカーピオ。
スカーピオ公爵家が末子であり四番目の息子にして、あの男―――ベネディクト・スカーピオから見て三番目の弟であることを指す、その名前を今の自国で知らぬ者は居ないだろう。その一方で、彼の姿を見た人も少ないことでも有名だった。
社交界のみならず、学園へ通学することも拒絶するほどの人嫌いである。という噂は、エリザベスも耳にしたことがあった、けれど。
(でも、それ以上に……この見た目が、人前に出ない理由の一端を強く担ってそう、ね。)
瓜二つと言っても過言ではないほどにあの男と似ている容姿は、本人の意思など関係なく、人々の思考を狂わせてしまうだろうから。
現にエリザベスも、目が合っただけで、思わず身構えてしまったのだから。
(……申し訳ないことしちゃったな)
似ているからと言う理由だけで過剰な反応をしてしまったな、と。
謝罪の意味も込めて、悲しそうにほんの少しだけ眉根を下げた少年へ向き直ろうとしたエリザベス―――だった、けれど。
「姉様はここで待っていてね。」
場違いなほどに朗らかな口振りでエリザベスの前を行き、遮ったのはレノンバルトだった。




