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(……ざまぁないね。)
魔力を使い果たし、起き上ることもままならないのだろう。
それでも運命を求め足掻く男の指先を、容赦なく踵で踏みつけて姉の下に駆けて行った親友を見れば、今まさに。
自らの姉が無事であったことに喜び、固く抱擁を交わし合っているところだった。
その、深い姉弟愛を具現化したような光景は、非常に感動的で素晴らしく美しい―――と、素直に思う一方で。
(眩しい、な。)
きょうだいどころか、家族関係も稀薄な中で育ったその少年にとっては、余りにも。
(羨ましいとは思わないけれど……でも、)
それでも、少しだけ、いいな。
と、思ってしまいそうになる心から目を逸らすように。
少年は視線を二人から、地面へ堕ちたまま動けずに居る男へと移した。
(それにしても、ほんと……諦めが悪いよね。)
乱れ崩れた前髪の隙間から覗く、朱色の瞳。
かつては自信に爛々と歪んでいたその眼差しは昏んだ淀みだけを残し、ただ一点を見つめ続けていた。
その先に誰を見ているのかなど、確かめずとも明白だった。
(でもさ……)
薄く開いた唇から漏れ出る呼吸の音に混じって繰り返される、「どうして」へのこたえが返ってこないのと同じ様に。
(彼女が、貴方を振り返ることなんて、絶対に無いんだよ。)
ただ、そう教えたところで、貴方は納得することも無いのだろうけど。
(本当に、どうしてこうなってしまったんだろうね。)
――――、兄上
と、喉まで出掛かった音を溜息に逃して、少年は。
「クルト」
そう自分を呼ぶ親友の声に、顔を上げた。




