5ー 君の下へ
(……剣に甲冑。鍛えられた肉体。と見るに、この国の人間ではないな)
だとすれば、何故。
男から、彼女の魔力が感じられるのだろうか。
確かめねば。と、問いかけようとした、けれど。
全ては、突然巻き起こった突風に掻き消されてしまった。
彼女の気配を上書きして行くように、充満する彼女の弟の魔力。
そして、彼等はベネディクトを1人残し、姿を消してしまったのだ。
余りにも分かりやすい拒絶の意思に、思わず笑いが込み上がり、乾いた息が漏れ出る。
「……なるほど。私とエリーの邪魔をしていたのは、君だったんだね。」
レノンバルト・キールエラ。エリザベスの、たった一人の弟。
母親が亡くなり、落ち込んでいた父親のことを、彼女と二人で支え合ってきた、良い子だと思っていたのに。
「ここまでされては、流石の僕でも些か気分が悪くなってしまうよ」
エリザベスが大切にしている家族だから、自分も歩み寄らなければと。
そうも思っていたのに。
「――――残念だな。本当に」
指を鳴らし、再び呼び寄せた一羽の鳥。ベネディクトの背丈は裕に越す巨鳥の正体は、彼が直々に捕獲し、支配下に置いた魔鳥の一種である。
(でも、お陰で探すべき方角は分かった)
優秀ではあるのだろうが、まだまだ未熟であるという証拠。不自然に残された痕跡が、不自然過ぎるのだ。
その背に跨り、雲の上よりも舞い上がった、ベネディクトの視線が定めるは遥か北の方角。
――キールエラの領地もある辺境の、さらにその先。『不可侵の森』へ。
「今、迎えに行くよ。エリザベス」




