4ー 君の残り香
彼女が居なくなって、三日。
最後に見たのは、河川敷で地面に倒れ伏せた姿である。
可哀そうに。馬から振り落とされてしまったのだろう。彼女が着ていた青いドレスは、泥だらけになっていた。
急ぎ助け起こそうと駆け寄ったが、遅く。彼女の頭上で構築されていた見慣れぬ魔法陣が発動してしまったのだ。
放たれた閃光に包み込まれ消えていく彼女を、為す術無く見送ることしか出来なかった自分に初めて無力感を抱いたものである。
(……早く、見つけてあげないと)
きっと怪我をしているだろうから。自分の知らないところで、痛みに耐えているだろう彼女のことを思えば思うほど、胸が苦しくなってしまう。こんな思いは二度としたくないから、次からはきちんと保護魔法を掛けておかないと―――今回のことで、他人の魔法では不足だと反省したのだ。
(やっぱり、大事なものは自分で守ってこそ、だよね。怖い思いをさせてしまったな。)
再会したら、まずは謝らないと。それから、傷の手当てをして――今度こそは完璧に守るから、傍に居てほしいとお願いするんだ。
―――そう決意を新たに抱いたベネディクト。凡その辺りを付けて向かおうとした矢先、一つの気配を感じ取れたのは、正しく覚醒者として本能が働いた結果であった。
それは、
あたたかくやさしくて、
やわらかくつつみこんでくれる、
まどろみのようなあまさをはらんだ
この果てしない渇きを満ち、満たしてくれる唯一無二の。
「……エリザベス!」
あの日、初めて出会ったあの時から、一度たりとも忘れたことのない彼女の気配が、彼女のために用意した屋敷のある方角から、漂ってきていたのだ。
一瞬で高鳴り出す鼓動。高揚感に逸る気を抑えきれず、気付けば窓から飛び出していた。
と、同時に呼び出した鳥の背に跨り、過去最高速で向かい、到着した彼女の家。
しかし、中で待っていたのはエリザベスでは無く、代わりに居たのは四人の人間だった。
その内の1人が彼女の弟であったことから、近しい気配に見誤ってしまったのかと思ったがどうも違う。
それよりも濃い彼女の気配がここにはある、と巡らせた視線。その先で、見つけたのは1人の男。
銀髪に青い目をした長身の、男だった。




