7:赤眼
現れたのは二人組の男。うち1人は、レノンバルトと顔立ちのよく似た男だった。
しかし、似ているのは見た目だけで、纏う雰囲気は真逆である。
レノンバルトが穏やかな性質であるならば、目の前の男はその怒りを隠さないタイプと見た。
今まさに、レノンバルトへ詰め寄ろうとする男から守るように少年の前へ立ったアレクサンダーは思う。
(……レノンバルト殿から話は聞いていたが……なるほどな。)
この男が、キールエラ家現当主であるリューンハルト。レノンバルト曰く、彼の一応の兄だったか。
(ならば、もう一人は……誰だ?)
日も落ち、灯りも無い屋敷の中。
リューンハルトの後から入ってきたその男は、意識せずとも視線を寄せてしまいたくなるような華やかさを持っていた。
精巧で煌びやかな衣装を着こなし、柔和な微笑みを浮かべるその姿は、さながら理想の王子様そのものである。
だからこそ、太陽と同じ色をした深紅の瞳が暗く淀んでいるのは―――余りにも異質で、不気味に感じたのだ。
『……本当に、どうしようもない人だよ。にい様は』
折角、見逃してあげようと思ったのに。
現れた2人へ、説明するべきか否か。どう対処するべきか、を考えて居たアレクサンダーの耳に届いたのは、怒りとは反転した酷く悲しそうな少年の呟き。
そして。
『―――――“tropeleT”』
短く、囁くように。
けれど、その声はこの場に響き渡った。
見えない何かに包み込まれていく感覚を覚えながら、閉ざされていく視界の中で。
最後にアレクサンダーが目にしたのは。
『……エリザベス。』
こちらを見つめる、赤い目をした男の恍惚とした眼差しだった。




